アメリカから见た日本法
本書は、宪法、行政法、租税法、刑事法、民事法、会社法、労働法、経済法の分野の著名な判決 (合計24) を各分野を専門とする日本の研究者が選択し、それらについて日本语で日本法の観点からコメントを付すとともに、ハーバードロースクールで日本法を教授しているJ?マーク?ラムザイヤー教授が、それらの判決についての事案の要旨と同教授の分析を英語で執筆したものである。同教授による解説については、日本の研究者との打合せは行われておらず、同教授個人の考え方が示されている。それだけに、読者は、同一の判決について、多面的な見方がありうることに驚き、複眼的思考の重要性を認識することができると思われる。
具体例を挙げると、強制接種または社会通念上、事実上の強制と認識されていた勧奨接種が、集団免疫 (herd immunity) を獲得するための社会防衛論に基づいて集団的に行われた結果、「悪魔の籤」を引いて重篤な副作用被害を受けた者やその遺族が提起した集団予防接種禍訴訟において、東京高等裁判所平成4年12月18日判決(判例時報1445号3頁)は、生命?健康の収用は、日本国宪法の下で認められないという理由で損失補償の法理による救済を否定する一方、国の予防接種行政についての組織的過失を認めて、国家賠償請求を認容した。この判決について、日本の学界では、原告らが接種を受けた当時、接種により重篤な副作用被害が発生することを政府は認識していながら、接種率の向上を重視して、その情報を公表せず、杜撰な予診体制の下で、禁忌者に接種しないような注意がなされていなかった以上、当時の厚生省の組織的過失を認めるべきであるとして、肯定的評価が一般的であると思われる。
これに対して、同教授は、判決の出された平成4年の時点では、感染症は減少し、ワクチン接種の必要性も減少したが、原告らが接種を受けた当時は、なお感染症の危険は低くなかったことを指摘する。そして、ワクチン接種がもたらす外部経済を考慮すると、原告らの接種当時に、過失があったと認定することは疑問であるとする。アメリカの連邦不法行為請求権法 (Federal Tort Claims Act) では、政府の損害賠償責任について、裁量免責 (discretionary immunity) が認められているため、連邦政府主導で行われた強制接種であっても、合衆国の損害賠償責任が認められることは原則としてなく、副作用被害を受けた被害者は、ワクチンの製造物責任を追及して製薬会社に対して損害賠償請求を行うのが一般的であるから。国家賠償請求のあり方についての日米の大きな相違が、同教授のコメントの背景にあるのかもしれない。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 名誉教授 宇賀 克也 / 2021)
本の目次
1 砂川事件
2 三菱樹脂事件
3 衆議院議員定数配分規定違憲訴訟
4 ノンフィクション「逆転」事件
5 非嫡出子法定相続分違憲訴訟
Part 2 行政法
6 武蔵野市長給水拒否事件
7 強制予防接種事件
Part 3 租税法
8サラリーマン税金訴訟 (大島訴訟)
9 興銀税務訴訟
Part 4 刑事法
10 光母子殺害事件第二次上告審判決
11 狭山事件
Part 5 民事法
12 サブリース事件
13 学納金返還請求事件
14 更新料返還請求事件
15 懲罰賠償
16 松下電器カラーテレビ事件
Part 6 会社法
17 ブルドッグソース事件
18 UFJ銀行事件
19 アパマンショップ事件
Part 7 労働法
20 高知放送事件
21 秋北バス事件
22 電通事件
Part 8 経済法
23 三井住友銀行事件
24 石油カルテル事件
関连情报
自著を語る: J. マーク?ラムザイヤー「裁判官という人間」 (『書斎の窓』No.669 2020年5月)
书籍绍介:
Book Information: 編集担当者から (『法学教室』No.470 2019年11月)