広がる民法5 学説解読编 公论の空间を発见する
法学部?法科大学院に入学すると、何册かに分けられた民法の教科书を用いて、民法学习をすることになります。私もそのような教科书として、かつて『』(初版、2001-2004) を書きました。また、教科書では論じきれない問題を取り上げた副読本もいろいろあります。私のものとしては、『』(2005-2007) がこのジャンルに属するものでした。その後、2010年代後半の相次ぐ民法改正に対応するために、また、民法に対する私の考えが多少進んだこともあって、教科書の方はリニューアルして、『』(初版、2014-2017) を刊行しました。これにあわせて、新たな副読本シリーズとして「広がる民法」シリーズを企画しました。
本書『広がる民法5 学説解読編』(2020)は6冊シリーズの2冊目として、『』(2017) に続いて刊行したものです。入門編が大学1年生向けの法学入門の枠を用いて行った授業をベースにして書かれたのに対して、学説解読編は法学部?法科大学院で私が行った民法講義のうち、全体の時間の約3分の1を費やした「テーマ編」をまとめたものです (残り3分の1は「概説編」)。
司法制度改革によって新司法試験制度が導入されて以降、民法の学習は従来よりも実定法 (民法典?特別法と判例) に重点を置いたものにシフトしましたが、実定法をより深く理解するためには、学説による制度理解の変遷を知っておくことが有益です。また、それ以上に、実定法 (すなわち、それによって構成されている私たちの社会) をよりよいものに変えていくには、法をめぐる議論のあり方を変えていくことが必要です。
20世紀を通じて民法学説の変遷を振り返ると、「社会問題」の存在感の大きさが感じられます (ここでの「社会問題」の多くは階級問題にかかわるものでした)。では、21世紀において私たちはどのような問題に取り組む必要があるのか。この点を考える上でのヒントも20世紀の学説の中には含まれています。
また、法と社会を変えるために必要なことは、判例の法解釈や政府の改正法案に影響を与えることだけではありません。裁判や立法の場に限らず、よりよい法と社会の仕方を論ずる場は他にもあります。(広い意味での) 学説が意見を戦わせる「公論の空間」は、予想以上のポテンシャルを持っています。読者の皆さんも、こうした意味での「学説」の議論に関心を寄せ、自ら (法と社会を学ぶ)「学者」としての意見を持っていただければと思います。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 名誉教授 大村 敦志 / 2023)
本の目次
序章 どのように法を学ぶか?
1 民法と民法学──民法を学ぶのか,民法学を学ぶのか
2 ロースクール教育と法学部教育──何を目指すべきか
第1章 基本概念─行為と阻止区
3 法律行為と法秩序──何が规范を创りだすか
4 时効の存在理由──时効制度をいかに説明するか
5 法人とは何か──民法に规定は不要か
第2章 人と家族─主体と支援
6 嫡出推定──何のための制度か
7 内縁──婚姻はどうなるのか
8 成年后见?扶养──家族の限界はどこにあるのか
第3章 物権?不法行為─支配と救済
9 物権変动の法的构成──何が问题なのか
10 过失と违法──何のための议论か
11 损害──もうひとつの不法行為法へ
第4章 债権?契约─交换と実现
12 债务の构造──债権法学説は何を目指したのか
13 瑕疵担保──契约法学説は何を目指すか
14 不动产赁借権──时代の変迁とともに
15 债権譲渡──债権の财产化
16 债権者代位権?诈害行為取消権──変迁する制度趣旨
第5章 担保?相続─安定と継続
17 抵当権と利用権──近代的抵当権论をめぐって
18 遗言による相続──なぜ遗言は増えているのか
补 章 法学の方法─参与と観察
19 法解釈の意义と方法──法律家は何をしているのか
20 法律学の対象と方法──法学者は何をしているのか