新基本民法4 债権编 契约债権の法
『新基本民法』シリーズは、2001年から2004年にかけて初版が公刊された『基本民法』シリーズを引き継ぐものである。本シリーズの目的は、法学部 (ないし法科大学院1年次) における「法学習者の共通教養としての民法」の学習を促すことにある。ここでいう「共通教養」とは具体的には何であろうか。私は、「実定民法の体系的理解」であると考えている。それは、民法の規範の全体像を一定の精度で把握し、それが内包する考え方に共感するということである。別の言い方をするならば、学習者が民法の規範を「構造化」し「内面化」するのを援助することが、本シリーズの任務である。以上は旧シリーズと同様である。
旧シリーズの刊行终了から新シリーズの刊行开始までの10年间には、いろいろなことがあったが、とりわけ、法科大学院の発足と民法の全面改正への着手が大きな出来事であった。当初は活気を见せていた法科大学院にも、司法试験合格率の见かけ上の低下に伴って受験指向の强い学生が増えてきたと言われる。それでも、基本を理解することの必要性は依然として変わらない。民法の改正がこの先どのように进んで行くのかどうかはわからない。とはいえ、変化していく民法の姿をその骨格において把握することはますます重要になるだろう。
もっとも、旧シリーズが民法典の前3編 (総則?物権?債権) を対象とする3巻本であったのに対して、新シリーズにおいては、東京大学法学部?法科大学院以外での使用の便宜も考えて既刊の3巻を6冊に分けるとともに、親族?相続を対象とする2冊を新たに加えた。家族編?相続編以外は、旧シリーズを再編したものであるが、「債権法改正」と呼ばれる財産法部分の大改正 (改正法は2017年6月に公布され、3年以内に施行の予定) への対応を図っている。
本書 (債権編) は、民法典の編成に即して言えば、「第3編債権」のうちの「第1章総則」を対象としているが、本書は、この部分を「契約債権 (の実現) の法」として把握している。従来、債権総則は債権一般に関する規定を集めたものととらえられてきたが、本書は、その多くの規定は契約による債権を想定したものであり、かつ、いったん成立した債権の実現に関するものであるという認識に立つ。
本書 (債権編) においては、債権の「任意の実現」である「弁済」(第1章) とその他の方法による「実現」(第2章~第4章) という対比を中心に据え、履行強制?損害賠償 (第2章) のほか、債権者代位権?詐害行為取消権 (第3章) や債権譲渡?債務引受 (第4章) も、「債権の実現」と関係づけて説明している。民法典の編成とは異なる編成であるが、六法を片手に本書を読み進めることによって、より立体的な学習ができるはずである。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 大村 敦志 / 2017)
本の目次
序 章 債権内容の確定
第1章 任意の実現:弁済
第2章 強制による実現
第3章 優先的な実現
第4章 当事者の交替
補 論 歴史と法