摆格差の连锁と若者3闭 ライフデザインと希望
『ライフデザインと希望』は、「格差の連鎖と若者」シリーズ3巻本のうちの第3巻である。バブル経済崩壊後の雇用環境の悪化は、とくに若者の職業キャリアに大きな影響を与えた。こうした問題意識から、東京大学社会科学研究所では、2003年度の高校卒業者を対象としたパネル調査 (同一対象を継続的に追跡する社会調査) を開始した。その後、2007年から全国の若年?壮年を対象とする調査が始められ、一連の東大社研パネル調査プロジェクトが構築されていった。そのなかで、2003年度に開始された調査は高卒パネル調査として位置づけられ、2017年度までに14回の調査を実施してきている。『ライフデザインと希望』では、この高卒パネル調査の第9波までのデータを中心とした分析がおこなわれている。
本书の执笔にあたって重要なテーマとしたのは、就职=自立という図式が成立しなくなっている现在、「现代社会において若者の自立とは何か」という问いであった。この问いはさらに、个人化?复雑化する自立プロセスそのものにさまざまな社会的格差があるのではないか、またその自立プロセスの违いによって格差が生じたり、拡大したりしているのではないか、という问いにもつながっていった。
『ライフデザインと希望』は2部构成となっている。第滨部では「家族とのつながり」との関连で、第滨滨部では「社会とのつながり」のなかで「若者の自立」を分析している。第9波までのデータでは、対象者は20歳代后半で多くは独身である。これらの若者がどのように自立し、あるいは自立できないでいるのだろうか。重要なのは、この世代では経済的自立がきわめて困难なことである。若者にとっては奨学金返済の负担も大きい。経済的自立を达成するためには仕事が最大の资源となるが、仕事に就き、仕事を続けていくことも容易ではない。とくに女性にとっては职场环境が厳しいことも少なくない。ワーク?ライフ?バランスの环境整备が遅れるなかで、女性たちの职业アスピレーションは年ごとに大幅な低下がみられ、それとは逆に家庭志向が高まっている。また男女を问わず、「仕事での成功」を望むことが少なくなっている。そのなかで、正规雇用と非正规雇用の间の経済的格差は拡大し、それが自立の格差や希望の格差に连锁していっている。さらに重要なことは、社会的に不利な立场にある若者ほど选挙で投票に行かず、自分たちの立场を主张する场を放弃する倾向にある点である。
世间的には、「希望をもてば実现できる」という言説が流布しているが、正社员になれなかった若者にとって、正社员になる希望を実现することは难しい。「希望がない」のは若者なのか、それとも社会なのだろうか。若者たちの格差の连锁を防ぐためには、就业を支援するだけでなく、雇用环境や性别役割分业を见直すなど、私たちの社会の在りかたそのものを変革していく必要があるだろう。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 佐藤 香 / 2018)
本の目次
序章 パネル調査がみてきた若者たちの自立への歩み (佐藤 香)
第滨部 家族とのつながりのなかで考える
第1章 幸せ感からみた若者の多様性―ジェンダーと女性観の違いに着目して (鈴木 富美子)
第2章 何を重視し、どう行動するか―日米の若者の価値観?進路?家族 (深堀 聰子)
第3章 親元にとどまる若者―のしかかる「重層的な支出」(伊藤 秀樹)
第滨滨部 社会とのつながりのなかで考える
第1章 若者の描く将来像―キャリアデザインの変容 (元治 恵子)
第2章 文化するフリーター像―共感されない非正規雇用の若者たち (山口 泰史?伊藤 秀樹)
第3章 投票に行く若者は誰か―雇用形態?不公平感と投票行動 (長尾 由希子)
第4章 希望は失われているのか?―格差と希望喪失の共犯関係 (田辺 俊介)
終章 就労支援から自立支援へ (佐藤 香)