世界の対中认识 各国の世论调査から読み解く
中国の台頭が世界中で広く関心を持たれるようになって、かれこれ15年近くたちます。出版物のデータ検索サービスであるGoogle Books Ngram Viewerでrise of China (中国の台頭) を検索にかけてみると、2008年から2009年にかけて英語文献が急増したことがわかります。これはリーマン?ショックによってアメリカ経済が打撃を受け、北京オリンピックの成功によって中国が世界的プレゼンスを増長させたタイミングと一致します。
もっとも、同じ中国の台頭でも、国や地域によって異なる評価がなされています。日本や韓国では中国の軍事的発展は警戒されていても、その経済発展は歓迎する傾向が見られます。ところがベトナムでは、中国の経済発展にも警戒の目が向けられ、インドネシアでは、中国の軍事的発展をめぐる評価は分かれています。こうした比較ができるのも、21世紀になって世界各地で大規模世論調査が実施されるようになり、経年調査のデータが蓄積されるようになってきたからです。実際、世界各地で対中認識に関する世論調査が広く行われるようになり、本書は、こうした時代の変化を背景に、アメリカや日本、台湾?香港、フィリピンといった国?地域を中心に、その対中認識がどのようにして作られ、そこにどのような特徴が見られるかを、世論調査の分析を行うことで明らかにすることを目的に刊行されました。共編者の謝宇?プリンストン大学教授とは、台湾?香港の分析を行った陳志柔?中央研究院社会学研究所所長の紹介で知り合い、コロナ禍で2年近くかかった編集作業は、すべてオンライン (メールやZoom会議) で行いました。
収録された論文が取り上げている知見はたくさんありますが、中でも (1) 比較的発展した民主主義国家で対中認識が悪くなる傾向が強い、(2) 中国からの投資額が大きな国で対中認識がよくなる傾向があるといった知見には、いろいろ考えさせられます。同じ中国を眺めていても、見る側の政治的?社会的価値によって違って見えること、また中国から利益を供与された国は中国を好意的に見る傾向があることなど、常識的に考えて「そうだろうな」と思われることが、大量サンプルを対象にした統計分析によって実証されているからです。それ以外にも、対中認識に及ぼすメディアの影響が複数の論文で触れられており、興味深い議論が展開されています。
世界规模で増えている世论调査のデータを正しく用い、そこから得られる知见から私たちが学べることは少なくありません。本书は対中认识に限定して议论を展开しましたが、违うテーマで成果をまとめることもできるでしょう。この文章を読む若い方々から、世界の対外认识といった奥深い研究テーマを选んでくださる方が出てくれば、编者としてはそれに胜る喜びはありません。
(紹介文執筆者: 东洋文化研究所 教授 園田 茂人 / 2023)
本の目次
第1章 世界の対中认识
――その傾向と関連要因|謝 宇、靳 永愛
第2章 アメリカの対中认识
――深まる貿易摩擦の背後にあるもの|靳 永愛、ショーン?ドウリス、謝 宇
第3章 対中世论とメディアのフレーム
――ニューヨーク?タイムズの事例|黄 俊銘、ギャビン?クック、謝宇、靳 永愛
第4章 日中相互认识の非対称性?
――日本で対中认识が改善しないのはなぜか|园田茂人
第5章 1つの中国?2つの意识
――台湾と香港における対中認識悪化の要因を探る|陳 志柔、鄭 宏泰
第6章 若年層に拡がる中国 (人) 嫌悪
――フィリピンの事例分析|アレソン?滨滨?デセナ?ヴィロタ、园田茂人
第7章 新型コロナウイルス感染症は世界の対中 / 対米認識をいかに変えたか
ジェイコブ?トーマス、梁 楽萌、園田茂人、謝 宇
終 章|園田茂人
関连情报
國分良成 評「好感度低下 データで実証」 (読売新聞オンライン 2022年3月18日)
泉宣道 評「中国の自画像と乖離」 (Nippon.com 2022年2月4日)
书籍绍介:
白鸟翔子 (『中国研究月报』2023年5月号)
江藤奈保子 (『アジア経済』第63巻第4号 p. 101 2022年12月)
園田茂人?飯田一史「近くて遠い隣国?中国——あなたの対中認識を決める枠組みはいったい何か」 (集英社オンライン 2022年4月4日)