建筑家、走る
平均、僕は月に3回海外に出张する。东京以外に、パリと北京と上海とに事务所があるので、パリ事务所、ヨーロッパ方向に一回、中国に一回、そしてあと一回はその他のアメリカかオーストラリア、东南アジアのどこかというのが、平均的な行き先である。それ以外にも国内出张がたくさん入る。この出张ばかりの日常を记述した本书である。
なぜこんなに出张ばかりしているのか、すなわち走ってばかりいるのか。ひとつは现场に行くのが大好きだからである。现场で実物をチェックしながら、ここをこう直そうとか、ああ直そうという话をしている时が一番楽しい。それなら、大きな模型を作って、事务所に运び込んできてチェックすれば、手间が省けるのではないかという人もいるが、その现场で见るのと、それ以外の场所で见るのとでは、まるで印象が违う。现场の光や空気の温度、湿度が、それぞれの现场ごとに违うし、さらに现场のまわりの环境、すなわち里山の高さが违ったり、隣りの建物の大きな质感、构成する粒子の大きさとかがすべて违い、それとのバランスで、こちらの建物のディテールとか质感とか色とかを决定しているというわけなのである。
そう言うと、何やら难解なことを言っているように感じられるかもしれないが、简単に言えば、建筑とは、ライブ演奏みたいなもので、その演奏する场所、空间によって演奏は大きく规定されるということなのである。そこのステージに立ってみなければ、どう声を出し、どうリズムをとっていいか、わからないのと同じことなのである。
もうひとつ、出张が大事な理由は、出张という生活、仕事のリズムが好きなことである。出张前の紧张感のあるギリギリの时间の中では、ドンドン物を决めることができる。期限はありません、决めるのはいつでもいいです、ゆっくり决めてください、などと言われると、决めることができなくなってしまう。建筑というのは、ひとつの正解がある仕事ではなくて、无限の数の解答があるので、悩み出したらキリがない。だから、「23时に飞行机が出ますから、それまでにどうしても全部决めてください」と言われた方が楽なのである。そして飞行机の中で完全に脱力して、リラックスできる。
海外の现场に着くと、これまたそこを出て飞行机に行く时间が迫っているので、高扬状态の中ですべてをドンドン决めることができる。この决定と脱力を繰り返すリズムが、好きなのである。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 隈 研吾 / 2020)
本の目次
世界一周チケットで
建筑家は竞走马
20世纪型建筑家出世すごろく
建筑は戦闘能力を持っている
新たなクライアントの台头
中国四千年の利益诱导
中国こそ「文化」と「环境」の国家?
やってらんないよ!
利用される「隈研吾」ブランド
中国の「オーナー文化」、日本の「サラリーマン文化」
礼を尽くした「恋爱」
やっぱりフランスは手だれ
ユダヤ人は、メディアと建筑の支配者
ロシア人の本领は妄想にあり
海贼版が出て、オメデトウ
ぼくって、田舎の人间なんだ
第2章 歌舞伎座という挑戦
栄誉よりも重い困难
新しい建物は褒められない法则
艶っぽい歌舞伎座
モダニズムと数寄屋の融合
唐破风をめぐる攻防
东京にバロックを
すったもんだのおかげ
世界でも希有な歌舞伎ワールド
梦でうなされる
第3章 20世纪の建筑
住宅ローンという&濒诲辩耻辞;世纪の発明&谤诲辩耻辞;
真っ白なお家と真っ黒な石油
オイルショックで最初の挫折
サラリーマンをやってみた
ニューヨークの地下で日本の悪口
ディベート重视のワナ
别の场所で胜负してやる
コルビュジエとコンクリート
安藤忠雄建筑とコンクリート
理屈でなく腕力が必要だ
人间心理に付け込むコンクリート
マンションを所有する「病」
コンクリート革命を超えるには
あきらめを知ったら、人生が面白くなった
淋しい母亲
もっと淋しいサラリーマン
役人は海岸にも手すりを付けたい
现场のない人たち
「ともだおれ」を见直す
第4章 反?20世纪
バブルで浴びた大ブーイング
右手がダメになった
地方とはヒダのこと
见えない建筑(「亀老山展望台」)
见えない建筑の进化(「水/ガラス」)
予算がない=アイディアが出る(「森舞台/登米町伝统芸能伝承馆」)
石を使い尽くす(「石の美术馆」)
やがてライトの建筑につながる(「那珂川町马头広重美术馆」)
成金手法の流行
オレはいったい何をやっていたのか
苦労、覚悟、挑発、开き直り(「竹の家」)
行け、现场へ
自分の基準を乗り越えていく
中央嫌いのひねくれもの
不况に感谢
原点にあるボロい実家
なぜ日本が建筑家を辈出するか
第5章 灾害と建筑
建筑家の临死体験
人类史を変えたリスボン大地震
死を忘れたい都市
死の近くにいる建筑家
小さなものから出発する
壊れ方だって一つじゃない
第6章 弱い建筑
虚无を超えて
「建筑ぎらい」
激しい移动が建筑家を锻える
「直接会う」が必要な理由
秒速で判断する
使える人材を见抜くオリジナル面接
组织运営も手腕のうち
けなされたくないんです
自分を疑えて幸せだった
反ハコの集大成「アオーレ长冈」
下から目线で「绊」ができる
ディスコミュニケーションだって、コミュニケーションだ
「楽しさ」を真剣に楽しむ
あとがき 清野由美
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だから走りたくなってしまう(文库版あとがき) 隈研吾
関连情报
隈研吾氏著書『建筑家、走る』 (LIFE DESIGN JOURNAL 2016年7月28日)
「竞走马」として飞び回る (『朝日新闻』 2013年3月17日)