人手不足なのになぜ赁金が上がらないのか
日本には、さまざまな経済问题、そして労働问题があります。なかでもその根干に位置する重要な问いとして「人手不足なのに、なぜ赁金は上がらないのか」があります。
経済学の教科书をのぞいてみると、人手不足、すなわち労働市场の需给が逼迫すると、価格调整机能にしたがって実质赁金が上昇し、新たな均衡が実现すると、かならず书かれています。しかし、深刻な人手不足にかかわらず、市场メカニズムが想定するような、赁金の着実かつ大幅な増加が见られない状况がこれまでずっと続いてきました。いつか赁金は大きく上がり始めるだろうだと思われながら、结局、ほとんど上がらないままできたのです。
21世纪初头の日本の労働市场に起きているのは、いわば好况期における「赁金の上方硬直性」とでもいうべき新现象です。そこでは、経済理论のうち、市场の需给调整机能を重视する新古典派はもちろん、不况期における赁金の下方硬直性を主张したケインズ派さえも想定してこなかった状况が、日本で生じているかもようにも思えます。
だとすれば、人手不足が长く続いているにもかかわらず、赁金がいっこうに上昇轨道に乗らない理由とは何なのでしょう。それは、国内において高い関心があるのみならず、今后は世界的な関心を集める可能性を有した新たな问いかけです。
そこで本书では、それぞれの分野の第一线で活跃する研究者や実务家の方々に、次の2つの问いについて、ご検讨いただきました。
1. 人手不足が続いているにもかかわらず、なぜ賃金が上がらないのか。
2. 賃金を上げることが今後可能だとすれば、いかにして実現できるのか。
その结果、16组の方々から执笔のご快诺をいただきました。人手不足なのに赁金が上がらない理由の解明という野心的なテーマの追及にとって、これ以上ない执笔阵にご寄稿いただいたと、编者として自负しています。
本书を企画し、执笔者のみなさんにご寄稿の依頼をする际、事前に内容の明确な调整や栖み分けはあえて行いませんでした。本书全体を読んでいただくと、多くの论考のなかに、はからずも共通した内容が少なからず発见されると思います。一方で、それぞれの章には、他の论考には含まれない独自の见解も多岐に渡って示されています。それだけ赁金停滞の背景は复雑であって、一様でないこともご理解いただけるでしょう。
本书の総括では、各章の内容を次の7つのポイントから整理しました。
【需给】労働市场の需给変动からの考察
【行动】行动経済学等の観点からの考察
【制度】赁金制度などの诸制度の影响
【规制】赁金に対する规制などの影响
【正规】正规?非正规问题への注目
【能开】能力开発?人材育成への注目
【年齢】高齢问题や世代问题への注目
人手不足にもかかわらず赁金が上がらないのは、解明不可能なパズルなのか。それとも、その理由について纳得のゆく见解を示すことができるのか。その评価と判断は、本书を手に取っていただいた読者のご判断におまかせしたいと思います。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 玄田 有史 / 2017)
本の目次
第2章 賃上げについての経営側の考えとその背景 小倉一哉
第3章 規制を緩和しても賃金は上がらない――バス運転手の事例から 阿部正浩
第4章 今も続いている就職氷河期の影響 黒田啓太
第5章 給与の下方硬直性がもたらす上方硬直性 山本 勲?黒田祥子
第6章 人材育成力の低下による「分厚い中間層」の崩壊 梅崎 修
第7章 人手不足と賃金停滞の並存は経済理論で説明できる 川口大司?原ひろみ
第8章 サーチ=マッチング?モデルと行動経済学から考える賃金停滞 佐々木勝
第9章 家計調査等から探る賃金低迷の理由――企業負担の増大 大島敬士?佐藤朋彦
第10章 国際競争がサービス業の賃金を抑えたのか 塩路悦朗
第11章 賃金が上がらないのは複合的な要因による 太田聰一
第12章 マクロ経済からみる労働需給と賃金の関係 中井雅之
第13章 賃金表の変化から考える賃金が上がりにくい理由 西村 純
第14章 非正規増加と賃金下方硬直の影響についての理論的考察 加藤 涼
第15章 社会学から考える非正規雇用の低賃金とその変容 有田 伸
第16章 賃金は本当に上がっていないのか――疑似パネルによる検証 上野有子?神林龍
結び 総括――人手不足期に賃金が上がらなかった理由
関连情报
「これだけ深刻な人手不足なのに、いつまでも赁金が上がらない理由」现代ビジネス、2017年5月17日
「人手不足なのに赁金が上がらない本当の理由とは」苍颈辫辫辞苍.肠辞尘、2017年8月2日
「人手不足と赁金停滞」狈贬碍『视点?论点』2017年8月30日
书评:
日本経済新闻朝刊 2017年6月10日
朝日新闻朝刊 2017年7月2日
週刊エコノミスト 2017年7月3日号
週刊东洋経済 2017年7月3日号
経済セミナー 2017年8?9月号
キャリアデザイン研究 痴辞濒.13(2017年)