セーフティネットと集団 新たなつながりを求めて
本書は、2020年度から2022年度にかけて、連合総合生活開発研究所 (通称?連合総研) が実施した「with/after コロナの雇用?生活のセーフティネットに関する調査研究委員会」 (主査?玄田有史) を取りまとめた編著である。そこでは、新型コロナウィルスによるパンデミックの経験を踏まえた雇用や生活のためのセーフティネットの再検証、および社会の基盤としての人と人のつながりの持つ新たな可能性や必要性などを探索した。
そのために、労働経済、労働法、人事管理、社会保障、労働组合など、専门的な観点からの検讨を行った。并行して、コロナ祸に影响を受けた个人や団体、セーフティネットの构筑に関与してきた人々、新たな集団化を実践する人々などを対象に、详细なヒアリングも実施、事実の把握を试みた成果が、本书である。
本书は、2部と6つの章によって构成される。
第一章から第叁章の第1部では、2000年代以降のセーフティネットの改善に向けた取组を踏まえつつ、今回のコロナ祸においてセーフティネットの果たした役割や机能を検証した。あわせて今后の向けた整备に向けた提案がなされた。
第1部では、多様化するセーフティネットに対して一定の评価がなされる一方、制度の切れ目や谷间の解消など、制度间の関係性の実质的な改善などについて、まだまだやれることが少なくないといった共通の指摘がなされた。さらにセーフティネットは、今や一部の贫困层だけが想定される问题ではなく、中间层を含んだ谁もが必要になる可能性があるという前提で整备されるべきという指摘も共通した。これらはいずれも今回のコロナ祸とそこでの対応からの忘れてはならない教训となっている。
続く第四章から第六章の第2部では、社会的な孤立や孤独の広がりを食い止め、新たな集団やつながりを実现?促进していくための方策が考察された。各章で绍介された事実や事例は、新たなつながりを模索し、活动している方々になにがしかのヒントを提供する内容となっている。
第2部の章が共通するのは、働き方や働き手の多様化が进むことは、新たな集団やつながりを阻むものではなく、むしろ连帯の必要性を强めるものであるという指摘である。多様化するからこそ、思いや目的を同じくする仲间との连帯が求められている。さらに新しい集団やつながりを実现する上では、経験やノウハウが蓄积され、権利も与えられている労働组合の役割や自己変革の重要性も指摘された。
本书のタイトルでもあるセーフティネットと集団は、これからも相互补完的に考察や検証を不断に重ねることで、具体的な姿が明らかにされていくことになるだろう。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 玄田 有史 / 2024)
本の目次
玄田有史(东京大学社会科学研究所教授)
第1章 雇用のセーフティネットを編む─中間層に届かない支援
酒井 正(法政大学経済学部教授)
第2章 生活のセーフティネットを編む─誰もが利用できる安全網へ
田中聡一郎(驹泽大学経済学部准教授)
第3章 セーフティネットの基盤を考える─必要な人に制度を届けるために
平川则夫(连合総研事务局长)
第4章 職場の新たな「つながり」と発言─多様性のジレンマを乗り越える
松浦民恵(法政大学キャリアデザイン学部教授)
第5章 セーフティネットとしての集団─法と自治の視点から
神吉知郁子(东京大学大学院法学政治学研究科教授)
第6章 ドイツの事例に学ぶ─「限界ギリギリのデリバリー運動」とは
後藤 究(長崎県立大学地域創造学部講師)
终章 これからのセーフティネットと集団のあり方
玄田有史
あとがき
関连情报
神林龍 (武蔵大学教授?労働経済学) 評 「人と人の関係こそ「社会の核」に」 (『朝?新聞』 2023年07月22日)
BOOK REVIEW 人事パーソンへオススメの新刊 (WEB労政時報 2023年7月14日)
関连记事:
Hints from the combination of labor economics, Social Sciences of Hope and Social Sciences of Crisis Thinking: Toward ways of working able to respond to abnormality and change (Discuss Japan No.59 2020年6月20日)
シンポジウム:
シンポジウム「セーフティネットと集団-新たなつながりを求めて」 (连合総研 2023年8月7日)