Japan’s Triple Disaster Pursuing Justice after the Great East Japan Earthquake, Tsunami, and Fukushima Nuclear Accident
本書は、公共政策学、科学技术論、法学、ジェンダー研究、社会学、心理学、文化人類学、都市計画学、観光学、建築学、地理学、日本研究などを専門とする国内外の研究者が学際的かつ多角的な視点から災害と正義について論じる論文集である。東日本大震災後10年以上を経て、震災、福島原発事故、沿岸部の津波被害に対する災害対応や政策における課題、長期にわたる復興の困難等について入念な調査研究から明らかにする。
本书の执笔者は、キャリア初期の研究者からシニアの研究者まで幅広く、国籍も多様である。东日本大震灾前から岩手、宫城、福岛をフィールドワークの场として调査研究に従事していた者や同大震灾以降に研究を开始した者などバックグラウンドも様々である。それぞれが専门领域の観点を通して、东日本大震灾以降の被灾地の変迁と葛藤、现在も続く灾害と復兴の影响による社会的格差を様々な角度から取り上げている。
本書では「自然災害」(Natural Disaster) という用語は間違った使い方であることを明確にしている。人間に影響を与える大規模災害は、多くの場合予測可能であり、甚大な被害の発生を最大限防ぐことに注力することが必要だとする。各章においては、女性や子ども、若者、外国人など災害時に脆弱な立場におかれる人々の視点などを通して、災害と復興における正義/不正義を分析している。
本书は第4部に分かれている。第1部は、福岛第1原発事故后の状况について、復兴政策、集団诉讼、原告侧の语り、核エネルギー政策の各テーマより论じる。第2部は、东日本大震灾や津波被害と顿痴被害女性、移民女性、原発灾害と震灾関连死の承认等との関係について取り上げる。第3部は东日本大震灾后の主に原発事故后の市民の活动に焦点を当てている。原発事故被害に対する市民活动、母亲による子への甲状腺がんの検査実施の活动、幼少期に被灾した若者の声を通してその葛藤と変容について论じる。第4部は、东日本大震灾后の復兴过程における场に着目した。被灾后の集いの场とコニュニティー再生、沿岸部の景観変化と再构筑、被灾地における観光の影响等が描かれる。最终章では、灾害后に正义を追求することの难しさと批判的灾害研究の探求について触れる。本书の特徴の一つは、灾害正义、环境正义、社会正义、认识论的正义、构造的不正义等の様々な正义の视点から被灾后の状况を検証し论じていることである。
笔者は、第5章において东日本大震灾被灾地における顿痴被害者への支援について、民间支援狈笔翱等への闻き取り调査を基に検証した。同大震灾前后の顿痴被害の増加や形态の変化、先駆的に支援活动を行ってきた民间シェルターと顿痴被害女性の相互作用过程を通して、その背景にある社会构造プロセスをヤングの正义论の视点から考察した。东日本大震灾を通して明らかになった女性に対する构造的不正义と、その解消に取り组む民间シェルターの支援活动を検証した。民间シェルターの活动は、人々の正义に対する责任の拡大に寄与する可能性があるとした。
本书が灾害、正义、市民活动等を研究テーマとする研究者や学生にとって役立つものであることを愿っている。
(紹介文執筆者: 情報学環 特任准教授 小川 真理子 / 2024)
本の目次
Natalia Novikova, Julia Gerster, and Manuela Hartwig
Part I: Nuclear Disaster and Recovery Challenges
1. Ten Years of Recovery and Revitalization Policies after the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster
Kota Kawasaki
2. Restoring the Rights of Fukushima Nuclear Accident Victims through Collective Lawsuits
Masafumi Yokemoto
3. Voicing the Invisible: Resilience, Adaptation, and Resistance in the Narratives of the Fukushima Plaintiffs
Giulia De Togni
4. Japanese Politics and Nuclear Energy in the Ten Years since Fukushima: A Meta-Political Justice Perspective
Katsuyuki Hidaka
Part II: Dismissed Voices and Agency
5. Disasters and Domestic Violence: Making Structural Injustices toward Women after the Great East Japan Earthquake Visible
6. Citizenship and Disaster: Experiences of Foreign Women after 3.11
Sunhee Lee
7. The Recognition of "Death by Disaster"
Yuki Sadaike
Part III: Discredited Voices in the Credibility Economy of Disaster
8. Strategic Just-Peacebuilding and Citizen Activities after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident
Akiko Ishihara
9. The Right to Be Heard: Analyzing Parents’ Activism in the Kantō Region
Natalia Novikova
10. Growing up in Fukushima Prefecture after the Nuclear Accident: Young People Give Voice to the Stories of Non-Evacuated Communities
Shira Taube Dayan
Part IV: Place-making and Identity
11. Community Empowerment for a Just Recovery of Gathering Spaces: Case Studies from 3.11
Yegane Ghezelloo and Elizabeth Maly
12. Lowering Mountains, Raising Walls: Impacts of Rebuilding in Coastal Miyagi Communities
Alyne Delaney
13. From Being Seen and Heard to Feeling Displaced: The Double-Edged Sword of Tōhoku’s Post-Disaster Tourism
Anna Vainio and Annaclaudia Martini
14. The 3.11 disasters and Challenges of Pursuing Justice: Epilogue
Aya H. Kimura
関连情报
Sophia University Institute of Comparative Culture Book Break『Japan’s Triple Disaster: Pursuing Justice after the Great East Japan Earthquake, Tsunami and Fukushima Nuclear Accident』 (上智大学 2023年11月25日)
研究ノート:
小川真理子「震災と DV 被害者支援――東日本大震災被災地における行政?民間へのインタビュー調査を通して」 (『経済社会とジェンダー』4号 pp.75-95 2019年6月)