集英社新书1024 ことばの危机 大学入试改革?教育行政を问う
本書は2019年度の東京大学ホームカミングデイ文学部企画のシンポジウム「ことばの危机―入試改革?教育行政を問うー」の内容をもとに、これを新書に編集し直したものです。
现在、文部科学省を中心に大学入试改革や新学习指导要领の改订がすすめられ、「国语」という科目の内容が「実用」に大きく舵を切ろうとしています。一连の改革论议の中で「実用」「情报」「论理」といった言叶がともすれば一人歩きし、「社会の役に立つ」という概念がきわめて表面的に受けとめられているのではないか、という危惧が感じられるわけです。シンポジウムでは、文学部の教员4名が、そもそも人间が言叶で他者とコミュニケーションをとるとはどのような意味を持つことなのか、一见わけのわからないもの、理解しがたいものを排斥しようとする発想が社会に蔓延しつつあるのではないか、こうした时代だからこそ文学的知性や想像力がわれわれに求められているのではないか、といった问题を热く语り合いました。
たとえば第一章で英文学研究室の阿部公彦教授は、近年議論になっている「読解力」が、実は「注意力」と同じレベルで捉えられている点を問題視し、言葉の持つ多義性や意味深さへの敬意がないがしろになっているのではないか、と問題提起しています。また、第二章では現代文芸論研究室の沼野充義教授が、現代社会においてコミュニケーション能力が劣化している事実に警鐘を鳴らし、あわせて情報伝達能力だけを取り上げて言语能力を評価することの危険を、ご自身の文章がセンター試験に出題された体験をもとに解き明かしています。第三章では哲学研究室の納富信留教授が、ことばを実用的なツールと見なす発想を批判しています。ことばは「わたし」と他者との関係を成り立たせる根源的な基盤なのであり、ことばをツールと見なすことは、他者との対話を放棄し、自分自身をもツールと化してしまうことなのだというのです。第四章は中国文学研究室の大西克也教授が、言语が本来持つポライトネス (対人配慮) が軽視されている風潮に警鐘を鳴らし、あわせてセンター試験に代わる「新テスト」の漢文の問題 (プレテスト) を例に、古典の作品を「情報処理」の対象として扱おうとする発想の危険を指摘しています。
上记のシンポジウムは大変好评で、これをぜひ书籍化したい、という要望に応え、メンバーがさらに原稿を书き直して世に问うたのが本书です。その意味でもこの书は文学部、だからこそ世に问うことのできる警告であり、问题提起でもあります。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 安藤 宏 / 2020)
本の目次
(安藤 宏 / 国文学研究室)
第一章 「読解力」とは何か――「読めていない」の真相をさぐる
(阿部公彦 / 英語英米文学研究室)
第二章 言叶の豊かさと复雑さに向き合う――奇跡と不可能性の间で
(沼野充義 / 現代文芸論研究室?スラヴ語スラヴ文学研究室)
第叁章 ことばのあり方――哲学からの考察
(納富信留 / 哲学研究室)
第四章 古代の言叶に向き合うこと――プレテストの汉文を题材に
(大西克也 / 中国語文化研究室?文化資源学研究室)
第五章 全体讨议
おわりに
(安藤 宏)
関连情报
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