岩波ジュニア新书 国语をめぐる冒険
国语という教科を、どんな力の养成に向けて、どういう中身にしてゆくのか。そんな议论がかまびすしい。
はい、大変けっこうなことですね。日本语を使い、学ぶことを通じて、さまざまな力を養えるはずだという信頼が、白熱する議論の裏側に感じられます。これが、明治維新後や第2次大戦後に一部で考えられたように、日本语を全廃して別の言语を採用するなんてことになっちゃ大変だ。第一言语そのままで、高度に抽象的な概念や複雑な論理も扱え、政治経済や社会の仕組みも報道?議論でき、ちょっと勉強すれば1,300年前の自国の文章も読め、もうちょっと勉強すれば2,500年前の大陸の文章だって (いちおう) 読めるというのは、本当にありがたいことなのですから。
制度设计や方针をめぐる、大所高所からの议论はもちろん必要です。でも、それについては本コーナーで别に绍介されている、阿部公彦ほか『ことばの危机―大学入试改革?教育行政を问う』をお読みください。本书の笔头着者である渡部泰明が、以前所属していた文学部からのメッセージです。
それはそうとして、人が动くにはやっぱり目的が必要です。なぜ、何のために国语を勉强するのか、国语を勉强するとどうなるのか。目的や効果ばかり强调すると、どうも杀伐としてきますけれど、でも何の见通しも示さず闇云に押しつけても、教えられる侧にやる気は出ませんからね。教える侧だって出ないかもしれない。
学習指導要領を読め……は無理ですね。中高生にあれを読んでもらう、その動機づけのほうが大変だ。いいことも書いてあるんですよ。高校国語科の目標の筆頭、「生涯にわたる社会生活に必要な国語について,その特質を理解し適切に使うことができるようにする」なんてすばらしい。いまの高校生たちが生きる将来、社会はさらにグローバル化するでしょう。そのなかで、日本语がほかの言语といかに切り結び、なぜこういう形になってきたのかという特質の理解を通じ、言语から自分たちの立ち位置を相対化できるようになるのは、とても大切なことです。同時に、複雑で多様な社会において、言葉に乗せられた他者の思いを汲み取り、また他者に配慮した言葉を使うことで、誰しも生きやすい環境の実現に寄与できたら、それこそ国語の最高に適切な使いかたでしょうね。すくなくともぼくは、「社会生活に必要な国語」の特質理解と適切な使用とはそういうことだと、勝手に思っています。
というわけで、そんなふうなぼくたちが考える国語を学ぶ意味、国語から生まれる可能性について書いてみたのが本書です。言葉の持つ力を知り、それを助けに成長してゆく。言葉を手がかりに自分自身を見つめる。他者の言葉と向きあい、人間理解を深める。言葉を使って思いや考えを他者に届ける。そして、上に書いたように、日本语という「国語」の成り立ちと性質を知ることで、他言语話者への理解や新しいつながりをはかる。どれも間違いなく、国語が持つ大きな現代的意義です。
国语はけっして、役に立たない趣味的な教科でも、古色苍然たる知识の詰め込みでもありません。自他の人间理解とコミュニケーションとを通じて、时には古い自分を壊しながら、次世代の自立した社会人や国际人への成长を可能にする、「実学」にほかならないのです。
いままさに国语を学ぶこと、学んできたこと、そして教えることに疑问や悩みを感じているかた、そんな本书をぜひお読みくださいませ。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 出口 智之 / 2022)
本の目次
第一章 国语は冒険の旅だ&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;渡部泰明
愿いは、何?/国语って何を勉强するの?/虹の根もとを探す人/なぜ偶然なのか/境界という场所/冒険者、登场/僕なんていらない!?/八桥という异世界/言叶を武器にせよ/言叶の魔力/すみだ河の都鸟/昔の日本列岛はどんなイメージ?/境界の空间/都鸟、现る/命の、危うさ/感动が壁や殻を取り払う
第二章 言叶で心を知る&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;平野多恵
わたしの心は、どうやったら见える?/占うって何?――隠されたものをあらわす/言霊の力――歌の呪文とお告げ/こんなふうに占った――室町时代の和歌占い/占う前に大切なこと――〈问い〉を立てる/和歌占いにチャレンジ!/歌を読み解く――见えない心と见える景色/心と言叶の深い関係――「むかつく」と「かわいい」の向こうへ/正解は一つじゃない――そして冒険は続く
【コラム】 ?文法を勉强してどうなるの?」前编
第叁章 他者が见えると、自分も见える&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;出口智之
なぜ国语で小説を学ぶのか?/物语の里侧を読む/?山月记」の谜――発端/种本「人虎伝」と中岛敦「虎狩?/李徴は嘘をついている!/人はなぜ嘘をつくの?/文学者、李徴/小説から人间を理解する/柔软な発想力を养う/他者が见えると、自分も见える
【コラム】 ?文法を勉强してどうなるの?」后编
第四章 言叶で伝え合う&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;田中洋美
言叶につまずく/?わかりやすさ」を疑う/?わかりにくさ」と向き合う/书けない理由を整理する/?自由」の不自由さ/?つまずき」のち「ひらめき?/言叶で伝える「きっかけ?/本当の「きっかけ」を见つけよう/できごと&迟颈尘别蝉;心の动き/题材を选ぼう/モノを见つめて気づくこと/?心の动き」から伝えたいことをつかもう
【コラム】 ?旧字より新字が难しい!??
第五章 言叶の地図を手にいれる――そして新たなる旅立ちへ&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;仲岛ひとみ
国語って何だろう?/個人の言葉と国家の言葉/日本の「国語」ができるまで/どこまで国語? いつから国語?/消滅の危機にある言语/ろう教育と言语権/境界を越えて
深掘りしたい人へのオススメの本
参考文献
関连情报
安藤宏 (東京大学教授) 評「なぜ国語に文学 情報化社会にこそ求められる異質な他者に触れ、心情思う奥深い知性 東京大学教授?安藤宏」 (『朝日新聞』 2022年1月22日)
松尾葦江 評 (中世文学漫歩 2021年9月1日)