岩波新书 ライシテから読む现代フランス 政治と宗教のいま
実は、本书には幻のタイトルがありました。私の侧が用意していたのは、『ライシテとは何か』というもの。しかし、出版社によれば、『〇〇とは何か』というタイトルは、最近话题の言叶を改めて根本から论じるような本にふさわしいのだそうです。つまり、「ライシテ」という言叶は、日本ではそもそも耳にする机会がまだ少ないと判断されたことになるでしょう。
「ライシテ」とは、简単に言えばフランスの政教分离のこと。しかし、ことは狭い意味での政教分离の话にとどまりません。フランス革命以来の共和国の理念が詰まった言叶で、ライシテの歴史はフランスの近现代の歩みと轨を一にします。すると、ではライシテはあくまでフランスに固有の话なのだなと思われてしまうかもしれません。そう主张する研究者もいますが、私の考えではライシテはフランスだけの话ではありません。
もうひとつ、気になっていたことがありました。たしかに、「ライシテ」はまだ日本で広く使われる言叶ではないかもしれませんが、一时期よりはよく知られるようになってきました。ただ、私の印象では、この言叶を闻きかじったことがあるという程度の人は、しばしば一定のイメージをかなり性急に作りあげています。
そのイメージとは、ライシテとは非常に厳格なフランス流の政教分离で、公共空间から宗教を一切排除し、とりわけ政治と宗教を分けないイスラームの信仰実践を抑圧するものだ、というものです。しかし、私に言わせれば、たしかにそのようなライシテのあり方は存在するけれども、それはライシテの一面であって、すべてではありません。
『ライシテとは何か』という幻のタイトル。その副题は「「フランスの厳格な政教分离」をずらす」というものでした。フランスのライシテには、必ずしも「厳格」とは言えない面もある。「政教分离」という理解だけでは不十分だ。「フランス」だけの话ではない。そのような思いを込めたものでした。
タイトル自体は没になりましたが、问题意识はそのまま本书に反映されています。第1章では、ライシテには宗教の公共的役割を承认する面も多分にあることが论じられています。第2章では、フランスがこれまで宗教的マイノリティとの共生についてどのような试行错误を繰り返してきたのかを、过去の事例からパターン化して取り出し、その正负両面を论じています。第3章では、実际にフランスで生活しているさまざまなムスリムのライシテ観を扱っています。现在、ライシテとイスラームの関係はうまくいっていないように见えるかもしれませんが、案外うまくいっている面もあるのです。
今から振り返ると、この本を书いていたときの私には、共和国フランスの歴史がもたらしてきた负の面はしっかり批判しつつ、共和主义の理念を救い出すことが重要だという问题意识がありました。それはフランスだけの话ではなくて、现代日本の课题とも通じているはずだからです。特に若い読者には、そのように読んでもらえると嬉しいです。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 伊達 聖伸 / 2019)
本の目次
1 揺れる共和国――テロ事件と大統領選挙から
2 なぜ,いまライシテなのか
第1章 ライシテとは厳格な政教分離のことなのか
1 分離から承認へ
2 右傾化と治安の重視
3 同性婚反対運動とカトリック
4 キリスト生誕の模型とカト=ライシテの論理
5 託児所のヴェールとライシテの宗教化
第2章 宗教的マイノリティは迫害の憂き目に遭うのか
1 シャルリ?エブド事件からヴォルテールの『寛容論』へ
2 カラス事件とプロテスタント
3 ドレフュス事件とユダヤ人
4 スカーフ事件とムスリム
5 反復と差異
第3章 ライシテとイスラームは相容れないのか
1 ヴェールを被る理由,被らない理由
2 フェミニズムとポストコロニアリズム
3 「原理主義」と括られる潮流
4 「フランスのイスラーム化」か「イスラームのフランス化」か
5 フランスで開花するイスラームの可能性
終 章 ライシテは「フランス的例外」なのか
1 ライシテを「脱フランス化」する
2 日本のライシテ
参考文献
あとがき
関连情报
伊達 聖伸 (現代ビジネス)
着者インタビュー:
【宗教学】伊達聖伸「ライシテ 政治と宗教を読み解く補助線」by リベラルアーツプログラム for Business (LIBERARY | YouTube 2023年3月17日)
日本は「无宗教」の先进国 个人尊重の仏と大きく违う政教分离 (『毎日新闻』 2022年12月16日)
政教分离に必要なのは「ライシテ」? 宗教学者に闻く (朝日新闻顿滨骋滨罢础尝 2022年10月6日)
书评:
高橋昌一郎 (情報文化研究所所長?國學院大學教授) 評「思考力を鍛える新書【第42回】ライシテとは何か?」 (高橋昌一郎 | note 2020年6月18日)
図書委員からの推薦図書 2018 Vol.3 (日本大学法学部 2018年)
神社新報 2018年7月2日
しんぶん赤旗 2018年6月17日
フランスで论争が絶えない「ライシテ」とは? 过去には大きな対立も (础贰搁础.诲辞迟 2018年6月16日)
(新書)『ライシテから読む现代フランス』伊達聖伸著 (『日本経済新聞』朝刊 2018年6月9日)
鹿島 茂 評「外国語学習に王道なし、「ライシテ」解釈の多様性――週刊文春「私の読書日記」より」 (『週刊文春』 2018年5月24日号)
徳島新聞 2018年5月20日
宮下志朗 (仏文学者?放送大客員教授) 評「テロをきっかけに変容」 (『読売新聞』朝刊 2018年5月13日)
山梨日日新聞 2018年5月13日
[読書]/政治/伊達聖伸著/ライシテから読む现代フランス/多文化を探る議論 問題点 (『沖縄タイムス』 2018年5月12日)
田中拓道 評 (『熊本日日新聞』7面 2018年5月6日)
新書ピックアップ (『朝日新聞』朝刊 2018年4月14日)
书籍绍介:
大学生协新书年间ベスト10 (2018年)