いま宗教に向きあう 4 政治化する宗教、宗教化する政治 世界编滨滨
本书は、二十一世纪における宗教の&濒诲辩耻辞;いま&谤诲辩耻辞;を多方面から明らかにしたシリーズ《いま宗教に向きあう》の第4巻である。シリーズ全体は、一般に宗教とされている団体や现象以外の分野や运动を含めて広い意味での宗教と见なし、それが一般に世俗と呼ばれている领域に浸透したり拡散したりして现に世界を形成している様を描いた。これは二十世纪の末に宗教学界で进行した「宗教概念」批判を踏まえている。それは、通常、「宗教」という分野は通时代的に存在したと信じられているが、「宗教」概念は西欧近代という文化的にも歴史的にも极めて特殊な场で作られた可塑的な概念に过ぎないのであって、「宗教」概念によっては西欧近代以外の宗教性は捉えられないというものであった。本シリーズはこの最新の知见に基づき、「宗教」概念を相対化し、近代西欧的な意味での「宗教」にとどまらない宗教性の全体像を描いた。
本巻は、世界各地における宗教の现代的な动きを把握したものである。叁部十叁论文から成る。第一部はナショナリズムに内包されている宗教性を扱った。ナショナリズムが宗教的性格を持つことは以前から指摘されていたことで、目新しくはないが、今までの议论で扱われたナショナリズムは西欧のそれを念头においたものであった。本书では非西欧诸国を対象とすることによって、政治と宗教の関係が宗教概念と同様に多様であり、近代西欧モデルで考えられた政教分离は一般化できないこと、场合によっては宗教がナショナル?アイデンティティの中核として近代国家と共栖関係にあることを示した。
第二部は政治の領域における宗教の扱いを論じたが、現在の潮流を反映してヴェールに関する論文が多くなった。フランス型の世俗国家 (ライシテ) の場合、ムスリムのヴェールは宗教の象徴であるとして抑圧される傾向が強いが、本来的にヴェールが意味するものも多義的であり、世俗領域における宗教的シンボルの扱いも国により異なる。これらの事例が示しているのは、近代的な聖と俗の区分が機能不全を起こしていること、宗教概念は様々なアクターが自らを有利にするための資源として活用されているということである。
第三部は宗教の社会参加と世俗領域に入りこんだ曖昧な宗教性を扱った。前者については、宗教がソーシャル?キャピタルとして、その社会参加が広く歓迎される風潮がある一方、それにより宗教の社会的活動は一定の政治的な意味を帯びざるを得ないこと、そのような傾向に反発し、敢えて社会的価値 (効用) を否定して宗教性を保持することを志向するタイプの社会活動も存在することを示した。世俗領域における曖昧な宗教性という現象については、学問的な言説の中に宗教的な思想がいつの間にか入りこんでいるという事例を挙げ、宗教が宗教という形をとらずに世俗領域に浸透していくのが、これからの一つの宗教のあり方であることを示した。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授、死生学?応用倫理センター長 池澤 優 / 2019)
本の目次
一 ナショナリズムと宗教
[争点1] ナショナリズムも宗教の代替物なのか?
第1章 三つの国の「セキュラリズム」──南アジアからこの語の意義を考える ……… 冨澤かな
第2章 上座仏教とナショナリズム──国家主導の宗教的ナショナリズム ……… 矢野秀武
第3章 ボスニアにおける宗教共存の伝統──ポジティブな文化ナショナリズムに向けて ……… 立田由紀恵
第4章 「解放」後韓国の宗教とナショナリズム──キリスト教を中心に ……… 川瀬貴也
二 世俗?人権?宗教
[争点2] フランスの共和主義も宗教のようなものなのか?
第5章 欧州人権裁判所におけるヴェールと十字架──イスラームに向きあう世俗的ヨーロッパのキリスト教的な系譜 ……… 伊達聖伸
第6章 イタリアの新たな「世俗性」 ……… 江川純一
第7章 イスラーム?ジェンダー論の行方──行動する女性たちへ ……… 塩尻和子
第8章 疑似コロニアルな宗教概念に抗するスカーフ──消費主義時代のトルコを事例と ……… 澤江史子
第9章 「宗教の自由」をめぐるアメリカの分断状況──国内の論争と外交政策 ……… ジョリオン?トーマス
叁 宗教の公共化
[争点3] 宗教は「役に立つ」のか?
第10章 見えない宗教の力──現代の生命倫理?環境倫理言説の宗教性 ……… 池澤 優
第11章 宗教の社会貢献──宗教的利他主義の実践と共生社会の模索 ……… 稲場圭信
第12章 公共圏における宗教の社会参加──世界最大の仏教NGO?慈済会の挑戦と試練 ……… 金子 昭
第13章 市民社会と生命現象──弱さと暴力に向きあう場としての <ラルシュ> 共同体運動 ……… 寺戸淳子
関连情报
信浓毎日新闻 2019年3月24日
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