ODYSSEUS 东京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻 纪要 别册2 摆2014年闭
1989年のいわゆる「第一次イスラーム?スカーフ事件」以来、フランス社会はイスラームに対して激しい反応を示してきた。本论集は、近代社会と宗教との関係を再确认しながら、近年のフランスでイスラームをめぐって起こった诸现象に、あまり触れられることのなかった角度から考察を试みている。
「宗教的近代」は、マックス?ヴェーバーが提示した世界の「脱魔术化」もしくは世俗化の延长线上にあるとされていた。1970年代まで支配的であったこの観点は、イラン革命および欧米社会における新たな宗教现象によって见直しを迫られる。さらに、1980年代から「宗教の回帰」や「神の復讐」が语られ、ハンティントンの「文明の衝突」论が宗教対立によって分断されたグローバルな地政学を提示するに及んで、宗教は政治イデオロギー以上に世界を形作る要因として语られるようになった。
フランスには、ライシテという政教分离もしくは脱宗教性の原理が存在する。それは当初、国家の宗教的中立を规定することによって、共生を実现しようとするものであった。しかし今日では、その共生の原理が反宗教性の原理と姿を変え、特にイスラームを强く批判することによって共生を困难にするのが见られる。
本論集は、「宗教的近代」、「世俗化」、「ナショナリズム」について、フランスの研究者による最近の知見を紹介した上で、一連の問いを取り上げている。2003年に、政府の肝いりで「フランス?ムスリム信仰評議会」が創設された。なぜ、厳格な政教分離 (ライシテ) を標榜する共和国がイスラームを組織し、ひいては管理しようとするのか。また、いわゆる「スカーフ禁止法」による退校処分は、ムスリム女性から教育の機会を奪っている。それなのに、なぜフランス?フェミニズムの大部分は、その法律を女性抑圧に対する手段として支持したのか。さらに、フランスの政治言説は、人種主義を否定する立場から「人種」という語の使用を封じている。だが、それはかえって「人種」間、エスニシティ間の差別を隠し、格差是正を妨げてはいないのか。これら問いを通じて、普遍主義を自称するフランス共和制の特異な性格が浮かび上がってくるはずである。
なお、イスラーム内部の调査として、イスラーム学研究机関であるアズハルと2011年のエジプト革命の関係を扱う论文も掲载した。西洋とは异なる仕方で、政治と宗教を切り分けようとする方向性が见られる。印刷直前になって発生した『シャルリー?エブド』袭撃事件を受けてフランス社会が示した反応について、紧急报告的な试论も収録した。
本論集は、平成22~25年度科学研究費補助金基盤研究 (B)「共生の宗教へむけて -- 政教分離の諸相とイスラーム的視点をめぐる地域文化研究」(代表: 増田 一夫、課題番号: 22320027) の研究成果と関連研究の一部である。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 増田 一夫 / 2016)
本の目次
宗教的近代 / セバスティアン?タンク?ストルペール (増田一夫 訳) 3
世俗化 / ダニエル?エルヴュー=レジェ (杉村靖彦 訳) 15
ナショナリズム / アラン?ディコフ (稲永祐介 訳) 25
フランスにおけるイスラームの制度化と表象の限界 - 宗教を管理するライシテの論理 / 伊達聖伸 35
アズハルと2011年エジプト革命 / 長沢栄治 59
反性差別主義それとも反人種主義? - 偽りのジレンマ / クリスティーヌ?デルフィ (増田一夫 訳) 85
人種を見ないか? もしくは人種主義を見ないか? - 一つの戦略的なアプローチ / エリック?ファッサン (増田一夫 訳) 113
戦うライシテ -『シャルリー?エブド』のフランス / 増田一夫 141