S?RIE ISLAMO-LOGIQUES Savants musulmans au Maghreb
本書は、マグリブ (現在のモーリタニア、モロッコ、チュニジア、アルジェリア、リビアに相当する「西アラブ」) 地域にルーツを持つ近現代のイスラーム学者を論じる。歴史学者、人類学者、社会学者による12の章は、それぞれ一人の人物に焦点を当てる。編者は序文で、研究対象としてマグリブ地域を選んだ理由について、この地域の文化的豊かさが過小評価されてきた点を挙げている。イスラーム研究者たちはしばしば、「東アラブ」地域つまりマシュリクをイスラーム科学の中心とみなし、その一方でマグリブについては、「民衆的なイスラーム」や聖者崇拝、迷信的な風習にのみ関心を払ってきた。こうした背景を考えると、本書で取り上げられているイスラーム学者の多くが近代の「改革派」傾向の人物であることは偶然ではない。18世紀ごろ始まったイスラーム改革主義 (al-i?濒ā?) は、近代の政治的?物質的秩序の変化への適応を目指し、イスラーム共同体における宗教解釈や社会的実践の変革を推進した様々な運動を包含している。本書は、チュニジアのムハンマド?バイラム5世、アルジェリアのアブドゥルハミード?イブン?バーディースやイブラーヒーム?バイユード、モロッコのムハンマド?アル=ハジュウィーやムハンマド?アル=ファースィーを、19世紀から20世紀にかけてのマグリブ地域の改革派の例として取り上げている。これらの研究は、マシュリク中心のイスラーム改革研究を相対化するのに役立つだろう。
このほか、サヌースィー教団創始者ムハンマド?イブン?アリー?アル=サヌースィーの軌跡や、モロッコ南部出身でトンブクトゥにおける宗教テキストの伝播に重要な役割を果たしたアフマド?ブーララーフ、モーリタニアの知識人であり野心的な『モーリタニア百科事典』の著者であるアル=ムフタール?ウルド?ハーミドゥンについても頁が割かれている。本書はまた、ウラマーに関する多くの学術書ではあまり検討されてこなかった人物についての章も含んでいる。これらの人物には、フランス保護領期のモロッコで国民の裏切り者として非難されることになった学者アブドゥルハイイ?アル=カッターニー、もともとの専門が世俗的な学問 (医学) であったにもかかわらずパリ?モスク所長という父の地位を継いだダリール?ブーバクル、フランス人のイスラーム改宗者で、モーリタニアで伝統的なイスラーム科学の訓練を受けたアブドゥッラー?セルジュ?アルタパロ、本書が取り上げた唯一の女性学者で、モロッコの宗教的な傾向を持つフェミニスト運動で積極的な役割を果たした法学者アーイシャ?エル=ハッジャーミーが含まれる。
それぞれの章の方法論は著者によって異なるが、コミュニティの社会的ニーズを察知し、反映するというムスリム学者の社会的役割に対する関心が、これらの章をつないでいる。本書は、Sabrina Mervinを代表者として2017年から2020年にかけてフランス国立研究機関の助成を受けた国際研究プロジェクトL'enseignement de l'islam au Maroc (XVIIIe-XXIe siècles) : islamologie et sciences sociales [モロッコにおけるイスラーム教育 (18~21世紀) : イスラーム学と社会科学] の成果の一部である。
(紹介文執筆者: 东洋文化研究所 准教授 渡邊 祥子 / 2023)
本の目次
?Muhammad ibn Ali al-Sanusi (1787-1859). Une voie soufie entre Maghreb et Arabie (Dyala Hamza)
?Ahmad Boularaf (1884-1955). Entre culture livresque et commerce du livre au Sahara (Rahal Boubrik)
?Muhammad Bayram V (1840-1889). Un ouléma tunisien défenseur des réformes ottomanes (Anne-Laure Dupont)
?Muhammad al-Hajwi (1874-1956). Créer la femme marocaine moderne (Etty Terem)
?Muhammad al-Fasi (1908-1991). La réorganisation du savoir au Maroc ()
?Ibrahim Bayyud (1899-1981). Un guide pour les ibadites d’Algérie (Augustin Jomier)
?Al-Mukhtar wuld Hamidun (vers 1897-1993). Le bouillon généalogique (Abdel Wedoud Ould Cheikh)
?Abdel Hamid ibn Badis (1889-1940). Du savant professeur à la figure mythique en Algérie (Charlotte Courreye)
?Abdelhay al-Kattani (1884-1962). De la gloire à l’exil (Ilyass Amharar)
?Dalil Boubakeur (né en 1940). Le recteur et le politique (Ricarda Stegmann)
?Abdallah Serge Althaparro (né en 1966). Un firansî devenu cheikh (Younes Johan Van Praet)
?Aïcha El Hajjami (née en 1952). Une jurisconsulte en action (Naïma El Makrini)
関连情报
Livres & MAM - Savants musulmans au Maghreb (Sabrina Mervin, Augustin Jomier & Charlotte Courreye) (IREMAM | YouTube 2023年8月29日)
Sabrina Mervin、Augustin Jomier、Charlotte Courreye (Livres & MAM (mondes arabes et musulmans) | Spotify 2023年8月29日)
オープンアクセス:
Ilyass Amharar (p.180-197): Abdelhay al-Kattani (1884-1962) De la gloire à l’exil (OpenEdition Books)
书评:
Faker Korchane 評 (Revue Etudes No. 4312 2024年2月)
Meryem Sebti 評「« Savants musulmans au Maghreb », sous la direction de Sabrina Mervin et d’Augustin Jomier : penser l’islam au Maghreb」 (Le Monde 2023年6月30日)
関连イベント:
Institut Du Monde Arabe 2024年2月29日
Présentation de l’ouvrage « Savants musulmans au Maghreb » (IRMC 2023年12月14日)