放送大学教材 地域と都市の防灾
本書は放送大学の講義「地域と都市の防灾」の印刷教材(教科書)として出版された書籍であり、同講義は同大学の「都市と防災」の後継の講義である。内容は以下のとおりである。
日本は四方を海に囲われ、国土の8割以上が森林に覆われた山地で占められた豊かな自然と海の幸?山の幸に恵まれた岛国である。また国土の大半が温帯に属し、各地で四季折々の风物诗を楽しむことができる。このような环境下で、温泉や海や山の景観など自然の恩恵を受け、わが国の文化や生活様式が育まれてきた。その一方でわが国は、地震、津波、火山喷火、台风、水害など多种多様な灾害が多発する灾害大国でもある。恵み豊かで景観の美しい国土と多発する灾害は表里一体の関係にあり、わが国の地理的、地形的、気象的诸条件や都市构造の特徴を理由としている。
上記のような理由から、わが国は過去に多種多様な災害を受けてきたが、それらの経験から学び、防災力を向上させてきた。しかし災害は進化する。紙と木で建築物を造ってきたわが国の都市では、1970年代まで延焼火災が多発し、その対策が都市防災上重要な課題であった。また重工業が発達し、都市の空間構造が大きく変わった戦後の高度経済成長期には、产业災害と呼ばれるコンビナート爆発や地下街での災害なども多発し、我々が対応すべき新たな災害が生まれた。1995年1月17日の兵庫県南部地震に端を発する「阪神?淡路大震災」は、高度にシステム化された現代の都市を襲った災害で、津波以外の様々な災害事象が引き起こされ、神戸を中心とした阪神?淡路地域に壊滅的な被害を与えた。2011年3月11日には東北地方太平洋沖地震が発生した。この地震は、我が国の観測史上最大となるマグニチュード (Mw) 9.0を記録し、日本列島に甚大な被害「東日本大震災」をもたらした。そして、日本社会にさらなる防災上の課題を突きつけた。
本書では、東日本大震災から学ぶべき教訓も踏まえ、「都市」のみならず「地域性」にも対象を広げて防災論を展開している。防災の基本は、発災時の様々な状況を踏まえた上で、時間経過に伴って、自分の周辺で何が起こるのかを正しく具体的にイメージできる (この能力を「災害イマジネーション」と定義する) 人を増やしていくことである。効果的な防災対策は、高い災害イマジネーションにもとづいた「現状に対する理解力」と「発災前後の各時点において適切なアクションをとるための状況判断力と対応力」があってはじめて実現する。いうまでもなく正確な災害状況のイメージには、多様な災害の発生メカニズムとその対策の理解、法制度をはじめとする災害を取り巻く環境の理解が不可欠である。また災害の舞台となる地域あるいは都市の特徴の理解が必要なので、本書では都市の成り立ちや、都市の成長にともなう災害の進化についても述べている。
(紹介文執筆者: 情報学環 教授 目黒 公郎 / 2017)
本の目次
2. 地域社会と都市防災
3. 災害法制度の変遷と防災体制
4. 防災対策の基本と災害対応の循環体系
5. 気象災害とその対応
6. 地震災害とその対応
7. 津波災害とその対応
8. 延焼火災とその対応
9. 土木?建築構造物の安全性
10. 建築物の免震構造
11. 建築物の制振構造
12. 被害軽減のための事前準備
13. 都市における災害と復興
14. 情報とコミュニケーション
15. 災害文化とこれからの都市防災