知られざる地下街 歴史?魅力?防灾、ちかあるきのススメ
本书は、通勤?通学?饮食?憩いなど様々な用途で多くの人が絶え间なく利用する、地下の「まち」を考察したものである。现在、わが国には约80箇所の地下街があり、そのほとんどが鉄道駅を中心として地下へ広がる构造を有している。なかでも、大都市部である东京?名古屋?大阪の主要駅には巨大な地下空间ネットワークが広がり、利用者が1日あたり10万人以上となる地下街も多数存在する。一般に、地下街は「道路下型地下街」と「駅前広场型地下街」の2种类に分类されるが、特に前者の场合は通路部分に道路法が适用され、地上の道路と同じ幅になるなど「道路」と同じ扱いとなっている。一般的な商业施设等の通路と异なり、地下街の通路に看板やワゴンなどが置いていないのも、この道路法により规制されているためである。
さて本书は、「减灾」を切り口として地下街に特化した日本国内ではじめての书籍であるが、必ずしも安全性の向上のみを目指して书かれたものではない。そもそも人类は、トルコのカッパドキアや古代ローマやパリのカタコンベ、日本の穴仓をはじめとして、温度変化が少ないといった恒温性、濡れないといった耐候性のみならず、火山や火灾などの灾害から资产を守るための空间として、また卫生や混雑といった都市问题を解决するための一助として、地下空间をこれまで利用してきた。わが国の地下街は、地下鉄とともに作られた地下道に付随する形で1930年に整备された上野駅の「地下鉄ストア」がそのはじまりといわれている。このため厳密には、地下鉄以外の収入源确保を目指した経営多角化がその端绪と位置づけられるが、その后、高度経済成长期に急増した自动车と歩行者による道路交通の辐輳を缓和させる目的で、あるいは大都市中心部における地下驻车场のニーズ対応のため、道路や駅前広场の地下に次々と公共用通路と店舗が一体的に整备された。そのためわが国の地下街は整备から40年を迎えるものがほとんどであり、その一部は设备の老朽化などが进んでいる。その一方で大都市ターミナル駅周辺では、大深度法の施行やリニア鉄道の整备もあいまって、多数の管理者のもとで今后ますます大规模な空间が広がりつつあり、これらの地下空间では迷路性に伴い浸水、火灾、烟、津波などからの避难もとりわけ困难と考えられる。つまり都市问题を解决し、また灾害から资产を守る目的で利用されはじめた地下空间が、现在はその一部で様々な防灾上の课题を有した空间となっているという事実がある。
ところで、先述した耐候性や地上道路交通の錯綜軽減というメリットのみならず、地下街は勾配が緩やかであり、また自動車を気にしないで歩くことのできる空間である。その他にも、賑わい空間と回遊性の確保、地上土地空間の景観向上、連続的歩行ネットワークによる接続建物の価値向上といった多種多様な魅力を有した都市の資産でもある。大都市中心部のターミナル駅では数多くの利用者が地下空間を通じて出勤し、また帰宅につくことからも、地下街は都市におけるあらゆる活動の起終点と言うことができる。近年はその迷路性を生かし、夜間に脱出ゲームなどのユニークなイベントも行われており、地域の再生やまちの価値向上を目的とした都市再構築のきっかけとなる公共空間のひとつが地下街といっても過言ではない。ただし、このような連続的歩行ネットワークは接続建物の価値を向上させ、都心周辺の開発を促す結果となるが、同時に非常時に迅速な避難を困難とする要因となる可能性もある。このため地下街では近年、これらの魅力や長所、位置づけを踏まえながら、ICTなどの最先端技术を駆使して、災害に対する備えをすすめることで、魅力的かつ災害に強い地下街へと生まれ変わろうとしている。
本书「知られざる地下街」を通じて、大都市中心部の将来展望を考察し、ひいては安全と魅力を同时に追求する空间のあり方を考えるきっかけとしていただければと思う。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 廣井 悠 / 2018)
本の目次
第2章 地下街の歴史
第3章 災害から地下街を守る、日本の進化する技术
第4章 地下街のこれから
関连情报
書籍協力「知られざる地下街 歴史?魅力?防灾、ちかあるきのススメ」 (八重洲地下街 2018年3月20日)
书籍协力「知られざる地下街」出版のお知らせ (惭鲍尝罢滨厂翱鲍笔 2018年3月30日)
エキマチぐるりと地下散歩 (东京エキマチ 2018年6月10日号)