日本史の森をゆく 史料が语るとっておきの42话
東京大学史料编纂所という研究所をご存知だろうか。本郷キャンパスの赤門を入り、すぐ左に見える建物が史料编纂所である。この史料编纂所に所属する教員42名によって執筆されたのが『日本史の森をゆく』である。
史料编纂所の最大のミッションは、古代から明治維新までの日本史史料を収集し、それを調査し、成果として史料集を編纂することである。現在史料编纂所では、教員がいくつものチームを組んで、『大日本史料』『大日本古文書』など、目的を異にした数種類の史料集を編纂?刊行している。
その一方で、各教員はそれぞれの研究テーマをもって論文を発表している。全国の大学?研究機関には多くの日本史研究者が所属して研究を進めているが、史料编纂所の教員の場合、史料集を刊行するという研究所としてのミッションと、ひとりの研究者としてのテーマが結びついている点に特徴がある。本書は、42人の著者がそれぞれの関心によって題材を決めて執筆したもので、統一したテーマが設定されているわけではないが、史料集の編纂と個人研究の一体性という、史料编纂所における歴史研究の特徴が表われた一冊となっている。
たとえば、冒头の章では、史料集编纂のために必要な精緻な调査を行いつつ、大量の史料と格闘している编纂所教员たちの日顷の苦労の一端が记されている。ばらばらになってしまった史料の原状復元、残された一片の书状の背后に隠され人间関係の推定、言叶の书かれた当时における意味の确定など、歴史研究の基础固めにかける执念と自信が示されている。
第二の章には古代から明治に至る日本と海外の交渉をテーマとした論考が集められている。史料编纂所には戦前以来、海外に所在する史料調査を積極的に行ってきた伝統があり、対外関係史は史料编纂所の研究を特色づける分野である。ポルトガル人やオランダ人の書いた手紙や、禅僧たちが作った難解な漢詩文を読み解くことによって明らかになる過去の日本人たちの行動や思考、また遙かサンクトペテルブルクの博物館で見つかったキリシタン大名旧蔵の大砲など、現在も続く海外史料調査の最新の成果が次々と繰り出される。
第叁から第五の章では、それぞれ公家、武家、民众に関する话が取り上げられるが、教科书に登场するような有名な事件や人物はあまり登场しない。むしろ无名な人々をとりまいていた平凡な日常が绍介される。とはいえ、当时の人々にとっての「日常」である。公家の娘との縁谈を探す戦国时代の地方武士、仕官先を求める江戸初期の牢人、主人の放荡に苦しむ家族や奉公人など、日常の中にこそ、それぞれの时代の特性が表れていることがよくわかる。未婚のまま皇后になった女性、农业知识の习得に励んでいた中世の禅僧など、最新の研究成果も盛り込まれている。史料集の编纂过程でたまたま出会った人々の人生に惊き、その生きた轨跡を解き明かしたいという、执笔者たちの思いが伝わってくる。
(紹介文執筆者: 史料编纂所 教授 榎原 雅治 / 2016)
本の目次
滨滨 海を越えて
滨滨滨 云の上にも诸事ありき
滨痴 武芸ばかりが道にはあらず
痴 村の声、町の声を闻く
関连情报
- アエラ 2016年6月20日号
- 週刊朝日 2015年3月6日号 / 青木るえか
- 朝日新聞 (朝刊) 2015年2月8日
- 週刊東洋経済 2015年1月24日号
- 読売新聞 (朝刊) 2015年1月11日