「间にある都市」の思想 拡散する生活域のデザイン
本書は、ドイツの建築家トマス?ジーバーツによる著書 "Zwischenstadt: zwischen Ort und Welt, Raum und Zeit, Stadt und Land" (2001年?Birkhauser Publishing?ドイツ語) の日本语版である。2006年に初版が出版され一度は絶版になったが、近年、改めて本書の内容に関心が集まり、11年後の2017年に再版された。
本書は、我々が生活する都市田園空間のカタチを扱うものである。従来、都市田園空間は、文明と文化の中心として歴史的に形成された中心都市及びその周辺にある複数の中小都市と、それらの間を埋める田園で構成されるものとして認識され、広域計画?都市計画も、このいわゆる「コンパクトシティ」を前提に展開されていた。しかし、経済?社会のグローバル化や交通?物流?情報技术の革新により、产业構造と生活様式が激変し、従来の認識に基づく「コンパクトシティ」の枠組みでは、都市?田園の区分を超えて拡散した現代の生活域を適切に捉えることができず、その質を高めることができないと言う。
「間にある都市 (Zwischenstadt)」は、「田園地域の海に群島のように浮かぶ多数の都市」と定義され、これは世界中で見られる。「間にある都市」とは、より一般的には、「今日の都市が『間にある』状態の中にあること、すなわち、場所と世界の間、空間と時間の間、都市と田園の間にあること」を意味している。「都市と田園の間」は空間的に (あるいは物的環境として) 理解しやすいと思うが、「場所と世界の間」と「空間と時間の間」は、実体験として共感できても、それを図や文章の箇条書きでシンプルに説明することは困難であり、深い思考が必要である。
人口減少?超高齢社会を迎えた今の日本でこの「間にある都市」が改めて注目される理由は、2006年にまちづくり三法 (大規模小売店舗立地法、都市計画法、中心市街地活性化法) が改正された頃から規範とされてきた「コンパクトシティ」や「集約型都市構造」を、現実の都市田園空間を踏まえて冷静に再評価すべき時期に来ているからである。つまり、一度拡散した生活域「間にある都市」を再び「コンパクトシティ」に戻すことが必ずしも有効でないとの意見が出てきているからだ。人口や世帯数が減少する中、都市を小さくして (コンパクト化して) みんなが集まって暮らせば、様々な公共施設?サービスの効率化、自動車依存型生活からの脱却による環境負荷の低減、都市中心部及びその周辺における空き家?空き地の解消が実現するかも知れない。しかし、一方では、都市を小さくする過程で発生するコスト、都市ではなくなってしまう空間の管理など「コンパクトシティ」の新たな問題が発生する可能性が高い。
「间にある都市」の计画?デザインは、拡散した生活域の実态を受け入れ、それを无理にコンパクト化することなく、広域的な役割分担?连携と空间デザインを通じて、その质を高めようとするものであり、これからの日本の都市田园空间のカタチを再検讨する际、大いに参考となろう。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 村山 顕人 / 2018)
本の目次
第2章 「間にある都市」とは
第3章 日常生活空間の構成
第4章 デザインの焦点となる「間にある都市」
第5章 新しい形の広域計画の展望