日本语ライブラリー 现代语文法概説
現代語文法は、近年では文法全体を統括する理論が提示されることはなくなって、研究分野ごとに専門分化が進み、その分野ごとに独自の理論が提示されている。研究者もそれぞれの分野ごとの専門家が存在しているのが現状である。編者は、そのような現状を踏まえて、文法研究の現段階を最も忠実かつ正確に紹介する概説書を編むとすれば、それぞれの研究分野の第一人者に、自由に自分の研究分野を紹介してもらうのが最善の方法であると考えた。そして実際にそれらの方々にお願いしたところ、全員から快諾をもらうことができた。こうして、編者が最も理想的と考える现代语文法概説書を公刊できる運びとなった。
さて各章の構成であるが、まず第1章は編者自身による、文法研究の現状に至る歴史的な経緯の概観である。編者は近代以降の文法研究を三期に分けて考えているが、第一期の草創期を経て、山田孝雄の『日本文法論』が刊行された1908年以降を第二期と考える。この時期、陳述論を中心とした全体理論が展開される。その陳述論も北原保雄の『日本语助動詞の研究』(1981) で終焉を迎え、一方新しい文法研究の流れが仁田義雄の『語彙論的統語論』(1980) を皮切りに展開されるようになったので、それ以降を第三期と考える。その特徴は先に示したように専門分化が進み、研究分野ごとに独自の理論が展開されてきた。
さて専門分化した研究分野といっても、かつてのように動詞?名詞?助詞?助動詞といった品詞によって研究分野が分割されるのではない。言语には、中でも文法には様々な側面があるが、理論的に一括して論じることができる領域を一つの研究分野とするもので、その中には伝統的な英文法の研究分野でもある、ヴォイス (受動態?使役態?可能態など)、テンス (過去時制?現在時制?未来時制)、アスペクト (完了相?進行相など)、モダリティ (推量法?命令法?疑問法など) も含まれる。第2章から第4章までは、この分類法に従っているが、それぞれ理論的進展のありさまが提示されている。
また日本语の特徴としてしばしば問題にされる「は」と「が」との違いも、話し手と聞き手とが何を知っていて何を知らないかを問題にする情報構造という土台の上で議論されるようになり (第5章)、従来は副助詞と呼ばれていたものも、限定や添加といった意味を”副える“ものでなく、”範列的“(ソシュールの術語) な含意を持つものとして名称も「とりたて詞」と面目を一新した (第6章)。さらに指示詞も従来のように話し手からの距離 (近?中?遠) だけでなく、話し手と聞き手とが対立しているのか融合しているのかも関わっていることが明らかになり (第7章)、条件表現に関しても従来の順接?逆接、仮定?確定にとどまらない詳細な分類が行われている (第8章)。従来連用のさまざまな型は承知されていたが、連体にも”ウチの関係“”ソトの関係“と呼ばれる型があることが解明され (第9章)、否定表現は単純に肯定表現のひっくり返しではなく、潜在的な肯定的内容との対立の上に成立していることが示される (第10章)。そしてノダ文を中心とする形式名詞述語文は、実質的な意味に関わるものではないが、それがないものとは異なる独自の機能を果たすものであり (第11章)、近年注目されることの多い、コミュニケーションにおける言语表現の機能を考える、文文法を越えた文の範囲を超える語用論にも目を配る (第12章)。最後に近年の文法研究には、大量の用例調査が不可欠になってきたことを受けて、データ処理の方法を簡潔にまとめている (第13章)。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 井島 正博 / 2023)
本の目次
1.1 近代以降の日本语文法研究
1.2 本书の构成
第2章 ヴォイス 〔早津恵美子〕
2.1 受身文?使役文を使うとき
2.2 动词の形态论的な形とそれを述语とする文の主语の性质
2.3 原动文?受身文?使役文による事态把握
2.4 テモラウ文のヴォイスにおける位置づけ
2.5 日本语のヴォイスの射程
2.6 形态的な対応のある他动词と自动词
2.7 おわりに
第3章 テンス?アスペクト 〔井上 優〕
3.1 テンス(时制)
3.2 アスペクト(相)
3.3 テンス?アスペクトと否定
3.4 日本语のテンス?アスペクトの特徴
アスペクトの基本的性格、動詞の意味との関係/日本语の状態形の意味範囲の広さ/非状態形と状態形の意味/過去形の使用のタイミング
第4章 モダリティ 〔宫崎和人〕
4.1 文の本质的な特徴とモダリティ
4.2 动词のムード
4.3 文の通达的なタイプとモダリティ
4.4 认识的な文のモダリティ
认识的な文の概観/叙述文のモダリティ/疑问文のモダリティ
4.5 意志表示的な文のモダリティ
意思表示的な文の概観/希求文のモダリティ/命令?勧诱文のモダリティ
4.6 モダリティの副词
第5章 「は」と「が」 〔野田尚史〕
5.1 「は」と「が」の违い
5.2 「は」は主题を表す
5.3 「が」は主语を表す
5.4 「は」が使われる文
5.5 主题になりやすい名词
5.6 「が」が使われる文
5.7 主题にならない名词
5.8 节の中の「は」と「が」
5.9 対比を表す「は」と排他を表す「が」
5.10 日本语以外の言语の「は」と「が」
第6章 とりたて词 〔沼田善子〕
6.1 とりたて词の统语特徴
6.2 とりたて词の意味
とりたて/基本的意味特徴
6.3 とりたての焦点
6.4 とりたての作用域
6.5 おわりに
第7章 指示词 〔冈﨑友子〕
7.1 指示词の用法
7.2 指示词研究史
直示用法(指示领域)の论争/照応用法のソと観念用法のアの论争/その他の研究
7.3 现在と、これからの指示词研究
第8章 条件表现 〔前田直子〕
8.1 条件表现とは
条件表现と因果関係/条件表现の4分类/现代语の顺接条件表现と古典语の顺接条件表现
8.2 条件表现の分类
8.3 条件表现形式の使い分け
「ば?なら」対「と?たら」/「ば?と」対「なら?たら」/「と」の特殊性と「なら」の特殊性
8.4 使用実态にみられる4形式の违い
ジャンルによる违い/方言による违い
8.5 おわりに
第9章 连体 〔大岛资生〕
9.1 连体修饰节の2分类
内の関係/外の関係/内の関係と外の関係のまとめ
9.2 连体修饰における「制限」「非制限」
制限的修饰节と非制限的修饰节/非制限的修饰节の意味的特性/非制限的连体修饰节の意味机能
9.3 连体修饰节のテンス解釈
ル形-タ形の组み合わせ/修饰节?主节ともにタ形の场合/连体修饰节のテンス解釈のまとめ
9.4 おわりに
第10章 否定表现 〔井岛正博〕
10.1 否定文の原理
10.2 否定文の诸问题
数量词と否定文/情态副词と否定文/二重否定
第11章 形式名词述语文 〔野田春美〕
11.1 形式名词述语文とは
11.2 「のだ」
「のだ」とは/「のだ」による関係づけ/さまざまな「のだ」の文
11.3 「ものだ」
11.4 「ことだ」
11.5 「わけだ」
「わけだ」の基本/「わけだ」と「のだ」/「わけだ」の否定
11.6 「はずだ」
11.7 「ところだ」
11.8 「つもりだ」
11.9 おわりに
第12章 语用论 〔定延利之〕
12.1 発话
遂行性と「やってみせる」/発话の场に事物を现出させる力/権利/时间経过
12.2 状况
直示性?指标性/文脉
12.3 知识
话し手の世界知识/当事者间の了解
12.4 おわりに
第13章 パソコン言语学(コーパス言语学) 〔鴻野知暁〕
13.1 言语単位
短単位/长単位
13.2 形态论情报
13.3 叠颁颁奥闯を使う际の注意点
コアデータのサイズ/出版年の情报/ブログ记事の误记/翻訳书の扱い/レジスター间での偏り
13.4 叠颁颁奥闯の文法研究への応用例
索引