语用论の基础を理解する
『语用论の基础を理解する』は、Gunter Senft, Understanding Pragmatics, London and NewYork: Routledge, 2014.の全訳である。語用論の説明には、フランスの哲学者ヴォルテール (1694-1778) の言葉が使われることがある。
外交官の「はい」は、「おそらく」を意味し、
「おそらく」は、「いいえ」を意味する。
「いいえ」は、その人が外交官でないことを示す。
「はい」「いいえ」の文字通りの意味は、肯定的応答、否定的応答である。どのようにして「はい」は「おそらく」を、「おそらく」は「いいえ」を意味するようになるのか。発话が文字通りでない意味を持ちうる例は身近な场面でも见られる。冬の寒い日友人と宿题をしている时、その友人から「少し寒くない?」と言われれば「そうだね」と言って、暖房の温度を上げるかもしれない。しかし文字通りに受け取れば、友人は质问しただけであり、暖房の温度を上げて欲しいとは言っていない。どのようにして「少し寒くない?」という质问が暖房の温度を上げることにつながるのか。
語用論は、言语がそれを取り巻く脈絡 (context) に埋め込まれてどのように使用されるかを明らかにする、多様な領域を基礎にもつ学問領域であり、ここで挙げたような問いを考えるためのさまざまな理論から構成される。
本書はまず言语をどのように捉えるかに関して、言语行為論、会話における推論を丁寧に解説するとともに、本書の全体を貫く視点から批判的な捉え直しの可能性を議論する。第2章では脈絡を考慮に入れなければ意味をなさない言语表現である直示とジェスチャーに関する知見が取り上げられ、言语使用が本来的にマルチモーダルなものであることが示される。続いて3章にわたり、人間行動の機能、文化?社会における言语使用、文化?社会の基底をなすコミュニケーションに関する相互行為の規範、相互行為の秩序について説明される。第6章では、言语教育の政策に関する語用論の貢献と、言语によりどのように政治が形づくられるかを明らかにした研究を紹介している。
言语?コミュニケーションは効率や精度で評価されることが少なくなく、また、文化?社会の多様性は繰り返し議論されるが、言语?コミュニケーションとの関連で考えられることは多くはない。本書は、哲学、心理、人間行動、文化、社会、政治の観点から語用論に関連する代表的な知見を取り上げ、その歴史から現在までを批判的にまとめており、多様な観点から言语?コミュニケーションを考えさせてくれる書となっている。
(紹介文執筆者: 情報学環 教授 石崎 雅人 / 2019)
本の目次
第1章 語用論と哲学―我々は言语を使用するとき,何を行い,実際に何を意味するのか:言语行為論と会話の含みに関する理論―
第2章 語用論と心理学―直示参照とジェスチャー―
第3章 語用論と人間行動学―コミュニケーション行動の生物学的基盤―
第4章 語用論と民族誌学―言语?文化?認知の相互関係―
第5章 語用論と社会学―日常における社会的相互行為―
第6章 語用論と政治―言语,社会階級,人種,教育,言语イデオロギー―
第7章 语用论の基础を理解する―まとめと展望―
関连情报
堀江 薫 評 (『語用論研究』第19号,2018: pp.100-105.)