「森と水」の関係を解き明かす 现场からのメッセージ
森は、木材生产、洪水缓和、水资源かん养、土砂灾害軽减、二酸化炭素吸収、生物多様性保全など、さまざまな恵みを私たちにもたらしてくれます。人はこれまで、その长い歴史の中で、それぞれの时代の要请に応じて、これらの恵みをバランスよく享受できるように、森の伐採や植林を行ってきました。ところが近年、森のゆっくりとした时间の流れをはるかに上回るスピードで人々の嗜好や価値観、ライフスタイルが変化するようになり、その结果、森は时代の流れに取り残されてしまった感があります。
人の考えは简単に変えることができますが、森は、简単に変えることはできません。今の森の姿は、50年前、高度経済成长期の人たちが思い描いていた森の姿を反映しています。彼らは、森が今よりもっと利用される时代の到来に备え、木材生产力の高い森を増やしておこうと考え、それを忠実に実行してきました。しかし実际には、人々の森への期待は木材生产から水资源、防灾、そして二酸化炭素吸収へと移り変わり、日本の歴史上初めて、日本の森に木材生产を期待する人は少数派になってしまいました。森に人々が期待するものが、短期间の间にこのように目まぐるしく変化することを正确に予测できた人は谁もいませんでした。
50年后、100年后の森の姿は、今の时代に生きる私たちが、何を考え、どう行动するかで决まります。50年后、100年后の人々の嗜好や価値観、ライフスタイル、森への期待がどのようなものなのか、いま予测することは不可能です。今私たちにできることは、过去の経験と知恵に学び、森に対する确かな知识を身につけ、森の客観的なデータを集めることで、出発点である今の森の姿を知り、目标や计画を定め、森を爱する多くの人々の共感を得つつ、それを着実に実行していくことしかありません。
本書は、私たちが森から得ている恵みの一つである「水」を題材にして、森と水と人との関係の歴史、今何がどこまで解明されているか、人と森とのかかわりが薄れていくにつれて忘れられつつある「森と水と人の関係」を再構築しようと奮闘している科学者、技术者、行政、森林ボランティア、シンクタンク、企業、市民の皆さんの様々な取り組みについて紹介していきます。本書を読むことで、森づくりという現実問題に取り組む際、科学者や研究者を探し、育て、ともに汗を流すことの大事さ、必要十分な知識や情報を入手し、共有し、活用することの有効性を感じていただけることでしょう。科学者、研究者、専門家というと雲の上の人のように思われがちですが、彼らも皆さんと同様、現実社会の問題解決に少しでも役に立つために踏み出したいと思っており、その準備ができていることを、皆さんに知っていただければ存外の喜びです。
(紹介文執筆者: 农学生命科学研究科?农学部 教授 蔵治 光一郎 / 2019)
本の目次
第1章 森と水をめぐる知見の整理
森と水に関する科学的知見 - どこまで解明されたのか/森林と水害/森林と水資源/森林と水質/森林の環境サービス取引
第2章 科学的な解明?検証をする仕組み
人々の認識と科学者の認識のギャップ - 科学的に完全に把握できるのか/管理の意思決定方法 - 完全には把握できないものの管理/修正する手法 - 見試し、PDCAサイクル、順応的管理/森と水の機能回復を評価する やまぐち森林づくり県民税関連事業評価システムの挑戦
第3章 科学的な解明に向けた情報を集める仕組み-地域型の情報管理を目指して
地域型の情報管理を目指して - 地域内シンクタンクの可能性/地域型の情報管理を目指して - 森と水の源流館/地域型の情報管理を目指して - 多摩川源流大学/地域に根ざした学術の融合 - 流域圏学会の可能性/地域型の情報管理を目指して - 情報の共有手段としてのWeb-GIS
第4章 连携による森林管理の合意形成
流域市民と研究者との関係づくり/国県町?学?民が一体となって照葉樹林を復元する - 宮崎?綾の取り組み/ 国有林の共同管理と治山ダム部分撤去 - 利根川源流?赤谷プロジェクトの挑戦/愛知県豊田市の挑戦 (1) - 森づくり条例と100年の森づくり構想/愛知県豊田市の挑戦 (2) - 森づくり会議とは/水と生きる企業の森づくり サントリー天然水株式会社 奥大山ブナの森工場
第5章 研究者のあるべき姿势、かかわり方
现场と向き合う研究者の悩み/社会に役立つ研究者とは
関连情报
東京大学公開講座「水」 蔵治 光一郎「水と森と人」 (東大TV 2009年11月7日)