角川选书 シリーズ世界の思想 ウィトゲンシュタイン 论理哲学论考
『论理哲学论考』(以下『論考』と略) は、現代を代表する哲学者ウィトゲンシュタインが、その生前に唯一刊行した哲学書です。この書物の目的は、哲学の問題すべてを一挙に解決するという、実に途方もないものです。彼は、「語りうること」と「語りえないこと」の間に境界を引き、哲学の問題が「語りえないこと」の領域に属すると証明することで、自身の目的を遂行しようと試みました。
この、哲学史上でもきわめて野心的な书物は、実际、现代哲学の最重要文献に数え入れられるものです。1920年代初头に刊行されて以来、世界の学问や文化に多大な影响を与え、いまなお新たな読者を获得し続けているのがこの书物なのです。
けれども、この书物は、记号论理学の道具立てを駆使し、特异な形式と文体で书かれているために、悪名高い难解さでも知られています。兴味をもって手に取ってみたけれど、読んですぐに挫折してしまった、という人も大势いるでしょう。
私が本书で目指したのは、ウィトゲンシュタインの哲学に驯染みがない人だけではなく、哲学や论理学に関する知识をほとんどもたない人も対象に、『论考』の「肝」の部分を理解できるような、文字通りの入门书をつくることです。
ただしそれは、本书が『论考』の当たり障りのない箇所をなぞっているだけのライトな読み物だということを意味するわけではありません。
深く解釈に入り込むことなしに、物事をかみ砕くことや明晰にすることはできません。したがって本书もまた、独自の踏み込んだ议论を多く含んでおり、『论考』全体を一贯した解釈の下に见渡す新たな読み筋を示そうと试みています。その意味で、本书は论争的な研究书でもあります。真の入门书であるためには、そうした冒険が不可欠なのです。
また、解釈の独自性以外にも、本书にはさまざまな特徴があります。まず、扱う箇所を思い切って绞っていること。たとえば、记号论理学の体系について一定の知识をもっていることを前提とする箇所は、本书では省略しています。
その代わりに、『论考』全体の趣旨を理解するために最低限おさえておくべき文章や用语については、できるかぎり一つ一つ丁寧に、详しく解説しています。また、より内容が理解しやすくなるよう、『论考』の论述の顺序を部分的に组み替えたりもしています。それらの手当てによって、本书を冒头から顺に読み进めながら『论考』の勘所を徐々につかんでいく、という読书体験が可能になるよう工夫しました。ちょうど、大学の讲义を受けるような感覚で、ページをめくっていくことができるはずです。
おそらく、『论考』で最も有名な言叶は、「语りえないことについては、沉黙しなければならない」という、この书物の缔めくくりの警句でしょう。本书の読者は、330ページ目でこの言叶に行き当たることになります。この言叶がどのような思考の末に刻まれたものであったのかを、皆さんが本书とともに楽しんで探究してくれること、それが着者としての愿いです。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 古田 徹也 / 2019)
本の目次
凡例
人と作品
『论理哲学论考』
§0 『论理哲学论考』の目的と構成
§1 事実の総体としての世界、可能性の総体としての論理空間
§2 事実と事態、事態と物 (対象)
§3 不変のものとしての対象、移ろうものとしての対象の配列
§4 現実と事実
§5 像と写像形式
§6 像とア?プリオリ性
§7 思考と像、像と論理空間
§8 命題と語
§9 名と要素命題
§10 解明と定義
§11 シンボル (表現) と関数
§12 日常言语 (自然言语) と人工言语
§13 個別性の軽視、個別性の可能性の重視
§14 言语の全体論的構造節
§15 「言语批判」としての哲学
§16 命題の意味の確定性と、命題の無限の産出可能性
§17 『論考』の根本思想
§18 否定と否定される命題の関係
§19 哲学と科学
§20 要素命題とその両立可能性 (相互独立性)
§21 真理表としての命題
§22 トートロジーと矛盾
§23 命題の一般形式1
§24 推論的関係と因果的関係
§25 操作、その基底と結果
§26 操作の定義
§27 世界のあり方と、世界があること
§28 独我論と哲学的自我
§29 命題の一般形式2
§30 論理学の命題および証明の本質
§31 説明の終端
§32 意志と世界
§33 永遠の相の下に
§34 投げ棄てるべき梯子としての『論考』
§35 『論考』序文
コラム1 記号論理学
コラム2 倫理学講話
文献案内
用语の対照表
あとがき
索引
関连情报
インタビュー古田 徹也 「古典をもっと、ずっと開かれたものに」 (カドブン 2019年6月21日)
试し読み:
[試し読み(1)] これならわかる! 『ウィトゲンシュタイン 论理哲学论考』<はじめに> (カドブン)
[試し読み(2)] 『ウィトゲンシュタイン 论理哲学论考』<§0 『论理哲学论考』の目的と構成> (カドブン)
[試し読み(3)] 『ウィトゲンシュタイン 论理哲学论考』<§1> 物が集まっただけでは世界にならない (カドブン)
书评:
齋藤元紀 評 「2019年上半期の収穫から」 (『週刊読書人』第3299号 2019年7月26日)