このゲームにはゴールがない ひとの心の哲学
心とは何でしょうか。なぜ我々は心をもつのでしょうか。なぜ、我々には心が必要なのでしょうか。本书は、现代を代表する哲学者ルートウィヒ?ウィトゲンシュタインと、彼に深く影响を受けたアメリカの哲学者スタンリー?カヴェルの议论を跡づけながら、懐疑论を手掛かりにして、人间の心というものの本质的な特徴を探究するものです。
まず第一章では、他者の心についての懐疑论の内実を、外界についての懐疑论との比较の下で轮郭づけます。その过程で、〈他者が心のなかで本当は何を感じたり考えたりしているか〉という点をめぐる懐疑论こそが、生活上の具体的な烦闷としばしば綯い交ぜになったかたちで展开される、最もリアルで深刻なタイプの懐疑论であることを确认します。
そのうえで第二章では、懐疑论の急所を突くウィトゲンシュタインの议论と、それに対するカヴェルの解釈の道筋を辿ります。まず确认するのは、ウィトゲンシュタインが独自の惊くべき视角から懐疑论の问题に切り込んでいるということです。彼は懐疑论に対して、我々は他者の心を确実に知ることができる、という风に反论するのではありません。そうではなく、「私は自分の心中は确実に知っているが、他者はそれを推测することができるだけだ」という物言い自体に混乱が见られると批判するのです。この章では、「规準」および「文法」という、ウィトゲンシュタインの议论で频出する概念をめぐるカヴェルの解釈を追跡しながら、彼らの懐疑论批判のポイントを浮き彫りにしていきます。
次に第叁章では、まず前半において、懐疑论の言叶は実のところ主张にまで达しておらず、自分自身に対してさえ意味を明确にできていない、というカヴェルの议论を见ていきます。そして后半では、にもかかわらずカヴェルが、ウィトゲンシュタインの「规则のパラドックス」などを参照しつつ、懐疑论のある种の自然さを强调している次第を追跡します。カヴェルは、懐疑论をたんなる混乱した思考の产物として片づけるときに见落とされるある极めて重要な论点を指摘しています。それが何かを明らかにすることが、本节の最大の目标になります。
最后に第四章では、他者の心について、あるいは、人间の心というもの一般について、ウィトゲンシュタイン自身が何を论じ、何を示唆しているのかを探ります。その道筋は、他者の心についての懐疑论はそもそも乗り越えられるべきなのか、また、人间の心の特徴とはどのようなものであり、それがなぜ我々に必要なのかを问うものとなります。
こうして本书は、自然科学とも社会科学とも异なる観点から、人间の心というものに迫っていきます。また、同时に、人间が互いにかかわり合いながら生きるということの根本的な意味を问い直していくことになります。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 古田 徹也 / 2023)
本の目次
第一章 他者の心についての懐疑论
第一节 「秘密の部屋」としての心
第二节 外界についての懐疑论
第叁节 日常の生活に息づく懐疑论
第二章 懐疑论の急所
第一节 懐疑论の不明瞭さ、异常さ、不真面目さ
第二节 规準
第叁节 文法
第四节 懐疑论は混乱した思考の产物なのか
第叁章 懐疑论が示すもの
第一节 懐疑论の真実、あるいはその教训
第二节 生活形式への「ただ乗り」としての懐疑论
第叁节 懐疑论への「自然」な道行き
第四节 「人间的なもの」の発露としての懐疑论
第五节 悲剧としての、他者の心についての懐疑论
第六节 「他者を受け入れる」とは何をすることか
第四章 心の住処
第一节 演技の习得
第二節 子どもが言语ゲームを始めるとき
第叁节 「このゲームにはゴールがない」
第四节 他者とともにあることの苦痛と救い
関连情报
伊藤迅亮 評、酒井健太朗 評、冨塚亮平 評「フィルカル?リーディングズ」 (『フィルカル』Vol.8, No. 1 2023年4月30日)
本からコミュニケーションが生まれる、ブックカルチャーの新拠点に:叁鹰「本と珈琲の店」鲍狈滨罢&贰补肠耻迟别;(ユニテ) (じんぶん堂 2023年2月13日)
雪下まゆ 評「つぶやきでは語り切れないこと」 (NEUT magazine 2023年1月31日)
「揺らぎ、戯れ続ける心」 (中部経済新聞 2023年1月1日)
「揺らぎ、戯れ続ける心」 (北國新聞 2023年12月18日)
「人と人の间に「心」は育つ」(冲縄タイムス 2022年12月17日)
「揺らぎ、戯れ続ける心」 (山陰中央新報デジタル 2022年12月17日)
関连记事:
[はじめにより]「ある日、娘が不透明になった」 (じんぶん堂|好書好日 2022年12月7日)
インタビュー:
「他者の心をめぐる哲学的探求」 (『tattva』Vol. 9 2023年10月)
「哲学と文学が重なるとき――ひとの心はわかるか」 (『すばる』 2023年10月号)
「半透明を受け入れる」 (『週刊文春』 2023年6月29日号)
トークイベント:
古田徹也『このゲームにはゴールがない』(筑摩书房) 刊行記念 古田徹也×古賀及子トークイベント 「卵焼きから始まる哲学」 (代官山蔦屋書店+オンライン 2022年10月18日)
『このゲームにはゴールがない』?『聞く技术 聞いてもらう技术』(筑摩书房) 刊行記念 古田徹也×東畑開人トークイベント 「心はどこにあるのか」 (代官山蔦屋書店+オンライン 2022年12月20日)
『このゲームにはゴールがない』(筑摩书房)『生成と消滅の精神史』(文藝春秋) 刊行記念 古田徹也×下西風澄トークイベント「心と言葉をめぐるダイアローグ」 (UNITÉ+オンライン 2023年3月26日)