うつのためのマインドフルネス & アクセプタンス ワークブック ACT (アクセプタンス & コミットメント?セラピー) でうつを抜け出し活き活きとした人生を送るために
本書は、カーク?D?ストローサルとパトリシア?J?ロビンソンの夫妻による著 <The Mindfulness and Acceptance Workbook for Depression: Using Acceptance & Commitment Therapy to Move Through Depression & Create a Life Worth Living> の邦訳である。
マインドフルネスは、もともとは東洋の禅に由来する心理療法で、宗教的要素を排して臨床応用され、発展してきた。マインドフルネスとは、「今の瞬間に注意を向け、その瞬間にとどまり思考や感情を観察する心のあり方」で、マインドフルネスの実践により、心身の症状、例えば慢性疼痛やうつ病、不安症等の改善を図る。一方、ACT (Acceptance commitment therapy) とは、認知行動療法の流れを組む心理療法で、「状況を避けることなく、あるがままを受け容れ (Acceptance)、価値に沿った行動を取る (Commitment) こと」を促すものであり、マインドフルネスと組み合わせて実施される。これらマインドフルネス & ACTは、米国で臨床応用されるようになった経緯もあり、慢性疼痛やうつ病、不安症への治療効果についての研究が数多く行われ、エビデンスも積み上げられている。例えば、慢性疼痛に対するマインドフルネス & ACTのメタ解析でも (Veehof MM 2016)、うつ病や不安症に対するACTのメタ解析でも、治療への有効性が示されている (A-Tjak JG 2015、Cavanagh K2014、González-Fernández S2018)。他にも、RCTで、肥満の人への体重減少効果 (Palmeira L2017) や、身体的不調を有する人へのQOL向上効果等が示されている (Jacobsen HB2017)。
本書では、夫妻の25年間の臨床経験をもとに、クライアントのストーリーや、マインドフルネス & ACTのエクササイズが数多く紹介されている。それゆえ、セルフヘルプの本としても、心理的援助職の人が、支援の技术を高める本としても、非常に実践的な内容となっている。ACTでは、不調に陥った人自身が人生において何が本当に大切であるかに気づくことが極めて重要であるが、本書では、クライアント自身の言葉、例えば、しっかりとした教育を受けて学んだことを他の人達にも伝えたい、大切な人達が助けを必要とする時に力になってあげたい等が、記載されている。さらに、価値をより明確にするために、例えば、健康について、食生活、運動、睡眠それぞれについて、自分にとって価値に一致していた行動とそうでない行動を挙げていく等、具体的な方法が示されている。本書を少しづつでも読み進めれば、生きる技术を着実に高めることが出来るだろう。
本書は、人生を幸福で豊かなものに変え得る技术―マインドフルネス & ACT―の修得に、確実に寄与するだろう。
(紹介文執筆者: 教育学研究科?教育学部 特任助教 種市 摂子 / 2018)
本の目次
イントロダクション うつの新しい見方
第I部 変化のための環境を整えよう
第1章 うつをありのままにとらえよう
第2章 うつに至る道をそこから脱する道を知ろう
第3章 うつとその人生への影響を一覧表にしよう
第4章 うつの罠を知ろう
第5章 マインドを理解し、体験を信頼しよう
第II部 うつを脱し、活き活きとした人生へ踏み出そう
第6章 ステップ1: 価値の方向を定めよう
第7章 ステップ2: 変えられないことは受け入れよう
第8章 ステップ3: マインドを観察しよう
第9章 ステップ4: 「正しいと間違っている」の罠を知ろう
第10章 ステップ5: 意味づけは無意味だと知ろう
第11章 ステップ6: 筋書きをゆるく持とう
第12章 ステップ7: 「今、この瞬間」にいよう
第13章 ステップ8: 人生のビジョンと計画をつくろう
第14章 ステップ9: コミットメントをし続けよう
第III部 活き活きと生きることにコミットメントをする
第15章 人生の方向性を保とう
第16章 支援のネットワークをつくろう