水の未来 グローバルリスクと日本
日本では、自然災害というとどうしても地震のことばかりに注意が向きがちですが、世界では旱魃や洪水などに伴う被害の方がむしろ深刻です。国際社会が懸命に対処しようとしている気候変動も概ね水を通じて人間社会に悪影響を及ぼします。一方で、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられている持続可能な開発目標 (SDGs) には水や衛生の利用可能性と持続可能なマネジメントの確保をはじめとして、貧困の撲滅、食料安全保障と農業、健康、エネルギー、女性の平等の実現など水と密接に結びついた目標が数多く含まれています。
このように、世界では最重要课题だと考えられている水问题に対して、日本でももう少し関心を向けた方が良いのではないか、と考えて本书を执笔しました。
水は循环する资源なのになぜ枯渇したりするのか、水问题は节水すれば解决されるのか、なぜ洪水被害は减らないのか、などに関する専门家の常识が一般には共有されていないようにも思いましたので、その点に関しましても书き込んでいます。
逆に、水や気候変动だけが问题なのではなくて、资源、食料、エネルギー、感染症、自然灾害、大规模事故、世界同时不况、国际纷争やテロ、核戦争など、さまざまなグローバルリスクに我々は囲まれていて、楽観论と悲観论のバランスを取りつつ、それらを上手に管理する必要があるのだ、という点についても议论しています。「人は死なないためだけに生きているわけではない」という文言が登场しますが、これには「安全で快适、健康で文化的な生活のためには多少のリスクを许容せざるを得ない」という意味と、「死ななければ良いわけではなく、より良い生活が送れるように水、食料、エネルギーなどを确保する必要がある」という2つの意味を込めています。
また、なぜグローバル化した大公司が环境问题に热心に取り组むようになっているのか、気候変动の科学的侧面と社会的侧面の歴史的経纬、今后の気候変动対策とエネルギーの持続性の构筑や社会の强靭さの増进との関係、さらには世界の食料需给がどういう风に推移してきたのか、今后何に注意する必要がありそうかについても言及しました。
最后に、持続可能性という概念は环境分野で使われ始めましたが、厂顿骋蝉の达成、人类の究极の目标に近づくためには、社会と経済と环境というトリプルボトムラインで持続可能性の构筑を考える必要がある点にも言及しました。「弱い持続性」についても绍介しています。
本书を通じて、少しでも多くの方が人类社会と水と地球环境の未来に希望を持ち、グローバルリスクを上手に管理しながら社会と経済と环境の持続可能性の构筑に向けて取り组んでいただければ、と愿っています。
(紹介文執筆者: 生産技术研究所 教授、総長特任補佐 沖 大幹 / 2016)
本の目次
第1章 地球の水の何が问题か
第2章 グローバル水リスクに備える - ウォーターフットプリントとは何か
第3章 仮想水贸易から见た食料安全保障
第4章 気候変动と水
终章 未来可能性の构筑へ向けて
参考文献
あとがき
関连情报
日本経済新闻 2016年6月5日付け
読売新闻 2016年5月29日付け
参考文献、补足资料など着者からの情报: