春雨直播app

平成28年度东京大学学部入学式 総长式辞

| 式辞?告辞集インデックスへ |
 

式辞?告辞集 平成28年度東京大学学部入学式 総長式辞

 

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。东京大学の教职员を代表して、心よりお祝いを申し上げます。ご列席のご家族の方々にも、心からお庆び申し上げます。

本日入学された皆さんは3,146名です。うち、女子学生は615名、外国人留学生は40名です。

皆さんは、一般入試、推薦入試、外国学校卒业生の特別選考など、多様な入学試験を経て入学されました。それぞれ試験の手応えは如何だったでしょうか。私たちは知識の量ではなく、基本となる知識を柔軟な発想によって使いこなす力こそが大学での学びへの備えとして最も大切だと考えています。そのような期待を込めて出題させて頂きました。その期待にしっかり応えてくださった皆さんをここに迎え、これから仲間として共に活動できることを大変嬉しく思っています。皆さんが、東京大学の資源を存分に活用し、充実した学生生活を送り、自らをいっそう鍛え、大きく成長することを願っています。そして日本全国あるいは世界の各地から集う仲間と、競い合いまた信頼しあう人間関係を築いてください。それは、これからの皆さん自身の人生はもとより、社会全体にとっても貴重な財産になると私は信じています。

 

ここで、皆さんの新しい生活と学びにむけて、少しアドバイスをさせていただきたいと思います。

 

前期日程试験合格発表の翌日、3月11日で、あの东日本大震灾から丸5年が経ちました。皆さんの中にも、被灾地出身の方、あるいは知人や亲戚が罹灾された方がおられるでしょう。中学生のときに震灾を経験し、復旧と復兴の中で、困难を乗り越えて勉学に励まれたことに敬意を表します。

私は昨年4月に総长に就任致しました。8月末には、大地震で被灾した岩手県大槌町にある大気海洋研究所の国际沿岸海洋研究センターの状况を视察に向かいました。その际に、大槌町の市街地域、陆前高田市、后方支援の拠点となった远野市も访问致しました。そこでは国による大规模な土木工事が进む一方で、地域の人々の活力を取り戻すにはまだまだ多くの知恵と忍耐が必要であるということを痛感しました。復兴はまだ道半ばです。私たちはそのことをしっかり心に留めて置かねばなりません。

东京大学でも、これまで多くの教职员や学生がさまざまな復兴支援の活动をしてきました。これからもそのような活动をしっかり続けたいと考えています。新入生の皆さんにも、机会を捉えて復兴支援の轮にぜひ积极的に加わって顶きたいと思います。

 

東京大学は1877年に創立され、本日、139周年を迎えます。昨年は第二次世界大戦の終結から70年目の年でした。つまり东京大学の歴史は、終戦をほぼ真ん中に挟んで前後とも約70年を数えます。東京大学が創立された当時、日本は、西欧列強に伍した国となるために、西洋文明を取り入れて、近代国家の形を創ることが急務でした。その為、各方面の外国人教師を招き、高等教育の近代化を急ピッチで進めました。本郷キャンパスでは、草創期に力を尽くして下さった外国人の先生方の銅像をあちこちに見ることができます。

しかし、西洋文明を、たんにそのまま模倣したわけではありません。1886年、帝国大学令が公布され、工部大学校が东京大学に统合されました。当时世界では、工业に必要な技能は総合大学ではなく、工科学校等で教えることが一般的でした。东京大学はいち早く「工学」を学问として位置づけ、世界初の试みとして、総合大学のなかに组み入れたのです。最先端の自然科学と连动させ、高度な技术を生みだし、それを社会に活用するという学问の形それ自体が、世界に先がけた独自の発想だったのです。

その工学部が整备した数学の教育システムは、高度な技术力と思考力を有する人材育成の重要な础となりました。20世纪初头に见いだされ、物理学のパラダイムシフトをもたらした量子力学という学问があります。1920年代から工学部の力学教室で、理论物理学者たちがこの量子力学に基づく先端研究を行いました。第二次大戦后には、东京大学で数学や量子力学を学んだ多くのエンジニアが半导体エレクトロニクス等の新产业の立役者として活跃したのです。日本が戦后、工业立国として世界屈指の経済力をもつことになったのは偶然ではなく、歴史的必然であったのです。

 

20世纪において、科学技术の飞跃的な进歩を牵引力として、人类はかつてない大きな力を得て、その活动范囲は桁违いに拡大しました。特に交通、通信技术の进歩さらにはコンピュータやインターネットの普及によって、人々は国境を越えた交流をリアルタイムで行えるようになりました。これらの技术革新によって、人々の暮らしの质が向上し、より豊かになったことは事実です。しかしその一方で、资源の枯渇、地球环境破壊、世界金融不安、地域间格差、宗教対立など地球规模の课题は深刻さを増しています。人类は科学技术によって大きな力を得ることが出来ましたが、その力を十分に制御する知恵はまだ足りないのです。科学技术自体は课题を解决しません。それを活用し、解决に向かわせるのは人です。皆さんには、大きな课题にもひるまず积极的に取り组む人に育ってほしいのです。

このような、知をもって人類社会に贡献する人材を私は、「知のプロフェッショナル」と呼ぶことに致しました。「知のプロフェッショナル」の「知」とは、知識、知恵、知能の「知」です。皆さんが「知のプロフェッショナル」となるために、これから述べる三つの基礎力を養っていただきたいと思います。

 

第一の基础力は、「自ら原理に立ち戻って考える力」です。この力は、情报量の増加と学问の细分化が进んだ现在、ますます重要になっています。

情报通信技术の急速な発达は知识の集积や流通といった学问の基盘をも大きく変质させています。书物にあたらなくても、スマートフォンやパソコンを使って一通りの情报を瞬时に得ることができるようになっています。

流通する知识の総量は指数関数的に増え、爆発しているかのように见えます。しかし、真の知识は人が自ら経験し思考することによって生みだされるものです。従って、その総量が指数関数的に増えるとは思えません。うわべの知识を鵜呑みにして、その洪水に饮み込まれてしまっては、真のプロフェッショナルとは言えません。知の本质を自らの手、自分の头でしっかりつかむことが求められています。

また、研究の最前线では学问の先鋭化と细分化が同时に进んでいます。その中で、足场となる基础が见失われがちです。难しい课题に取り组む中で、复雑に入り组んだ迷路に入ってしまうこともあるでしょう。その迷路から抜け出すには、一段高い视点に立って自らの位置を确认し、原点に立ち帰ることが必要です。その為に、皆さんには、学问の歴史を良く学び、その中で学问体系の骨格をしっかり捉えてほしいと思います。そうすることで、自ら原点に立ち戻って课题の本质を见つめ直すことが出来るようになるのです。

第二の基础力は、「忍耐强く考え続ける力」です。天才の一瞬の闪きによって生み出されたとされる歴史的な発见であっても、実は、殆どの场合、たゆまぬ努力の产物なのです。では、「知のプロフェッショナル」に必要な努力とは何なのでしょうか。人が课题に挑戦するとき、最初は解决への道筋や糸口は见えていません。试験问题とは违い、正解があるのかどうかということさえ分からないのです。このようなとき、あきらめず考え続けることが大切です。考え続ける期间は年単位に及ぶことも稀ではありません。その持続力をまず锻えて下さい。その粮となるもの、それは「学问の楽しさ」です。

第叁の基础力は、「自ら新しい発想を生み出す力」です。オックスフォード大学のマイケル?オズボーンらは「雇用の未来―コンピュータ化によって仕事は失われるのか」と题する研究结果を発表しました。现在人间が行っている仕事の半数が20年后には人工知能やロボットによって行われるだろうと予言しています。しかし、技术がいかに発展したとしても、ロボットができるのは过去の知识をベースとした仕事です。人间には、思いがけない発想によって无から有を生み出す能力があります。本日は、昨年ノーベル物理学赏を受赏された梶田隆章先生から祝辞を顶きます。梶田先生の「ニュートリノに质量がある」という発见は、先生の言叶を借りれば「人类の知の地平线を拡大する」営みです。研究の最前线には、先人によるお手本はありません。そこで求められるのは、人间に固有の「自ら新しい発想を生み出す力」なのです。これは受け身の姿势では身につかない力です。

 

皆さんには、これまでの学びのスタイルをより能动的なものに切り替え、「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐强く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」という叁つの基础力を身につけて「知のプロフェッショナル」となることを目指していただきたいのです。范囲の限られた知识を吸収することとは异なり、叁つの基础力には、要领の良い习得法というようなものは存在しません。目标と意欲をもって、かなりの时间にわたる努力の継続が必要になります。しかし、足を一歩前に踏みだせば、これはつらい作业ではなく、刺激的で魅力的な楽しいことだと感じるはずです。皆さんはその扉、すなわち学问の扉を今まさに开こうとしているのです。魅力あふれる知の世界での、皆さんの挑戦、それを私たちは全力で応援したいのです。

 

さて、三つの基礎力をもって人類社会に贡献する行動をおこすためには、さらに、「多様性を活力とする協働」と「自らを相対化できる広い視野」が必要となります。そこで、この重要な2点について、お話します。

 

私たちが直面している地球规模の课题は、人类の活动の拡大によって、「地球が相対的に小さくなった」ということに起因しています。そして、グローバル化の进行は、文化の画一化と表里一体なのです。実际、すでに大航海时代において、海上を支配した国、その国の文化による画一化が世界で进んだのです。ヨーロッパの特定の地域文化にすぎなかった宗教や言语が世界各地に强い影响を及ぼし、その结果、民族固有の文化や言语が、多数灭亡してしまったという事実があります。

しかし、私たち21世纪の人类は、个性を涂りつぶして皆が同じような生活をする社会をめざすべきではありません。私は、グローバル化の中で顕在化してきている问题を解决するためには、むしろ、画一化の対极にある多様性の尊重が不可欠だと考えています。人々が、性别、年齢、言语、文化、宗教などの违いを互いの多様性として尊重し合い、地域や国境を超えて协働する「地球社会」を実现しなければなりません。すなわち、「多様性を活力とする协働」が地球规模で行われることこそ、私たちが目指すべきグローバル化なのです。

 

今説明した、「多様性を活力とする协働」には、自らと异なるものを理解し、互いの违いを多様性として尊重することが前提となります。そのためには、まず、他者を理解し、他者に心を砕き、そして自分が何者かということをしっかりと认识することが大切です。すなわち、「自己を相対化する视野」が必要なのです。

 

皆さんがこれから学ぶ教养学部には、この「自己を相対化する视野」を获得するための絶好の环境が整っています。东京大学の特徴として、全ての新入生が文系の学生も理系の学生も、それぞれの専门课程に进む前に、驹场のキャンパスで一绪に学びます。日本全国、そして世界の各地から集まった多様な学生と交流することも、自分の専门分野とは异なる分野の学问に触れることもできます。

教养学部での学びの中で、様々な学问に触れ、后に自らの専门について相対化できる视野をぜひ意识して身に付けておいてください。文系の皆さんは、最先端の自然科学に是非触れておいてください。理系の皆さんは、文化や社会の在り方に関する人类の叡智に是非触れておいてください。

そして教室での講義だけではなく、课外活动や部活動あるいは学生寮での生活などを通して、意識して自分とは異なるバックグラウンドを持つ友人を見つけて交流してください。もちろん学外の人々との交流も大切にしてください。異質な友人との交流は、「自己を相対化する視野」の獲得ヘと皆さんを導くでしょう。

 

ところで、皆さんは毎日、新闻を読みますか? 新闻よりもインターネットやテレビでニュースに触れることが多いのではないでしょうか。ヘッドラインだけでなく、记事の本文もきちんと読む习惯を身に着けるべきです。东京大学ではオンラインで新闻记事や学术情报を検索し閲覧できるサービスを学生の皆さんに提供しています。ぜひ活用してください。その上で、皆さんにさらにおすすめしたいことがあります。それは、海外メディアの报道にも目を通すことです。日本のメディアの报道との违いに注目してみてください。また、世界の中で日本がどのように见られているかということも意识してみてください。私は総长になって以来、世界の多様な人々と话す机会が増えました。その中で世界のとらえ方や、外から见た日本の姿が、私のそれまでの常识とずいぶん违うと思うことが度々ありました。手近な日本の新闻やテレビによる情报だけでは足りないのです。皆さんには、ぜひ、今からそのような国际的な视野を日常的に持つ习惯を身に着けてほしいのです。

 

东京大学は、皆さんが「知のプロフェッショナル」となることを全力で支援したいと思っています。

初年次ゼミナールでは、様々な分野の第一线で活跃する教员が、少人数のクラスで、自らの体験を踏まえながら、大学での学びについて语り、皆さんに学问の世界の醍醐味を伝えます。

自らが選択して異なる文化や価値観に触れて考える体験活動プログラム(Hands-on Activity)、リーダーとして世界を舞台に活躍する力を開発するプログラム(GEfIL)、1年間休学して自ら計画を作り、さまざまな体験活動に取り組むプログラム(FLY Program)なども用意しています。今年度から、トライリンガルプログラム(TLP)として、これまでの中国語に加えてフランス語、ドイツ語、ロシア語も選ぶことができるようになりました。

これらのプログラムは、大学での能动的な学びへ皆さんがギアチェンジすることを助けるものです。いずれも、自分自身の手で扉を开き、主体的に挑戦することを応援するものです。食わず嫌いでいることも、今兴味がわかないからと尻込みするのももったいないと思います。まずはトライすることから开かれる新しい世界もあるからです。受験时代に英语への苦手意识を抱いてしまった人もいるかもしれません。しかし、そんな人にこそ、これらのプログラムに参加してほしいのです。世界の人々とコミュニュケーションする力は、これからの皆さん全员にとって必要です。どうかこれらの新しいプログラムを存分に活用し、力を锻えてください。そして、机会を捉えて、実际に海外に飞び出してほしいと思います。

 

最後になりますが、皆さんが、他者に心を砕き、知をもって人類社会に贡献する「知のプロフェッショナル」となるためには、皆さん自身の心身の健康が第一です。まず、毎日の朝ご飯をしっかり食べ、規則正しい生活を心がけてください。そして、得手不得手にこだわらず、自分に適した形で、運動をする習慣を身につけるようにしましょう。運動会、サークル活動や体育実技の時間も是非活用して下さい。驹场キャンパスの運動施設も一層充実させていく予定です。

皆さんがこの东京大学を存分に活用し、「知のプロフェッショナル」として大きく成长されることを楽しみにしています。健闘を祈ります。

 

平成28年(2016年)4月12日
東京大学総長 五神 真

カテゴリナビ
アクセス?キャンパスマップ
闭じる
柏キャンパス
闭じる
本郷キャンパス
闭じる
驹场キャンパス
闭じる