Pottery Making and Communities During the 5th Millennium BCE in Fars Province, Southwestern Iran
西アジアにおける7000~6000年前の社会は従来、人口の増加とともに村落社会が発达し、集住する都市社会へ向かう途上として理解されてきた。人类史上重要なこの社会変化を探るには、土器などの考古学的証拠を详细に分析?考察する必要がある。こうした社会変化の详细を実証的に探究できる対象のひとつとして土器生产组织、换言すれば集団が土器づくりにおいてどのように组织されたか、が挙げられる。本书の目的は土器生产组织の変化を解明することでこの社会変化の详细をより良く理解することにある。
研究対象となる時期?地域は紀元前5千年紀のイラン南西部である。紀元前5000年頃、彩文土器を土器焼成窯で焼成する技术がこの地で受容され、1000年をかけて展開した。これまでの研究は土器づくりの専業度 (少数かつ常勤の職人による生産の度合い) について議論しているものの、1000年間にわたる土器生産組織の通時的変化を論じていなかった。また生産組織を閉じたシステムと捉え、既知の生産組織の類型に当てはめようとする点にも問題があった。そこで本書は、紀元前5千年紀の前?中?後期の遺跡における土器生産組織を通時的に比較するとともに、生産組織を開かれた、様々な人間とモノの間の関係性が絡まり合う総体とみる視点、すなわち関係論的アプローチを採用した。
具体的にはイラン南西部の4遺跡から出土した土器 (東京大学総合研究博物馆、シカゴ大学西アジア?北アフリカ古代文化研究所所蔵) を分析した。この分析ではかたちや装飾といった土器がもつ様々な属性を扱い、それら属性同士の関係性を可視化し考察した。また当時の村落内で土器を含む各種の工芸品の生産組織がどのように絡まり合っていたのかも考察した。その結果、土器生産組織と村落社会の変化を以下のように論じた。
1) 前期に初めて彩文土器が受容されたとき、土器生産組織内では土器づくりの知識は安定して伝達されておらず、在来の土器を主に製作する陶工たちが、遺跡外の陶工たちと交流を持ちながら、稀に彩文土器を製作していた。
2) 中期になると土器生産量、文様、器形など、様々な土器属性の関係が大きく変化した。土器生産組織はより長い見習い期間を要する、安定的かつ徒弟制的な形態へ移行した。彩文土器の激増と銅製品、スタンプ印章等の新たな工芸品の出現は、村落内に新たな人間とモノの関係性を生み出し、居住者間の社会的平等の維持を試みていた従来の生活世界から脱することとなった。
3) 後期には視覚的に強調される土器属性 (文様や器形) の関係性が大きく変化し、彩文土器はより精巧に作られ、差異を強調する方向へ向かった。卓越した文様を描く陶工が出現し、土器づくりが村落社会内で大きな位置を占めるようになった。彩文土器は共有物から財産へと変化し、居住者間の格差を可視化することでさらなる社会内不平等をもたらした、と本書は推察した。
以上、人间とモノの関係性から土器生产组织と村落社会を捉えることで、社会内の関係性が変化していくようすを、类型に囚われない新たな切り口で论じた。
(紹介文執筆者: 総合研究博物馆 特任助教 三木 健裕 / 2023)
本の目次
Chapter 1 Introduction
Part II: Reviewing previous studies and presenting theoretical frameworks and methodology
Chapter 2 Previous Studies
Chapter 3 The theoretical framework for craft-production studies
Chapter 4 Methodology
Part III: Analyses
Chapter 5 Chronological relations of the Bakun-period sites
Chapter 6 Materials and analyses of wares, vessel forms, and design structures
Chapter 7 Analyses of pottery-making techniques
Part IV: Discussion and conclusion
Chapter 8 Discussion: reassembling the organisation of pottery production
Chapter 9 Conclusion
関连情报
书评:
Abbas Alizadeh 評 (Journal of Near Eastern Studies Volume 82 Issue 1 pp. 140-142 2023年4月)