太宰治论
太宰治は日本の近?现代文学を代表する小説家で、世界60カ国以上で翻訳されている。中学、高校の国语の教科书にも多くの作品が掲载されて亲しまれており、また、代表作の『人间失格』は今でも年に数十万部が売れ続けている隠れたベストセラーである。本书はその太宰治について、着者の数十年にわたる研究成果を集大成した研究书。分量は1200ページを越え、全40章、48个のコラムからなっており、その文学の特色と魅力が多角的に明らかにされている。
构成は「序」と第滨部~滨痴部からなる。「序」は本书全体の见取り図が评论风のスタイルでまとめられているので、まずこの部分を読むことによって本书全体の论旨を一望することができる。第滨部は、太宰が小説家になるまでの歴史的社会的背景が、伝记的事実の検讨を通して明らかにされている。第滨滨部は第一创作集『晩年』の内容が详细に论じられている。『晩年』は文学的に极めて高度な达成を示しており、本书は太宰文学の最高峰に位置するこの作品に関し、特に外国文学の影响、同时代の世界的な文学动向との関係を重视して検讨が进められている。第滨滨滨部は、『晩年』の作者がその高度な达成ゆえに背负わなければならなかった课题、あるいはその后の挫折から自身の文学を再建していく过程がたどられている。また第滨痴部は、第2次世界大戦下にあって、太宰がどのように国家総动员体制に向き合い、独自の语りのメカニズムを构筑していったのか、またそれゆえに戦后、なぜその文学が自壊の悲剧をたどることになってしまったのか、というプロセスが解明されている。
全体を貫く着眼点は、太宰治文学独自の「時代錯誤 (アナクロニズム) 」である。一例を挙げるなら、地方の大地主に育った彼は、旧民法下の家族制度を忠実に内面化して育ち、ついに最後まで、戦後の新民法のうたう、「平等な家族」の理念を手にすることができなかった。しかしそれゆえにこそ、その苦悩を通し、我々は近代家族制度自体の持つ本質的な課題を知ることができる。個人はみずから独創的であろうとしてこれを実現するのではなく、多くの場合、時代に身丈を合わせようとして、それがかなわぬ不適合を通し、はからずも時代に異彩を放つことになる。結果的にそのアナクロニズムが時代の最先端の表現を生み出していく興味深いパラドックスを通し、近代文学全体の見取り図、並びに近代文化論、近代社会論を展開している点に本書の特色がある。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 安藤 宏 / 2022)
本の目次
第滨部 揺篮期
第一章 「百姓」と「贵族」
コラム1 新出史料?津岛家関係文书
コラム2 生い立ち
コラム3 津岛家の女性たち
第二章 〈自尊心〉の二重构造
コラム4 回覧誌「星座」と阿部合成
コラム5 中学时代の直笔资料
コラム6 「青んぼ」の时代
第叁章 〈放荡の血〉仮构
コラム7 「细胞文芸」について
コラム8 草创期の映像文化
コラム9 新派?新剧の影响
コラム10 ノートの落書き ―― 高校編
第四章 「哀蚊」の系谱
コラム11 浄瑠璃语りの影响
コラム12 习作期の咏草
第五章 津軽と東京と ――〈二百里〉の意味するもの
コラム13 津軽文坛の状况
第滨滨部 『晩年』の世界
第一章 习作から『晩年』へ
コラム14 非合法活动
第二章 『晩年』序论
第叁章 山中の怪异――「鱼服记」论
第四章 回想という方法――「思ひ出」论
コラム15 文坛デビュー(1)――「海豹」前后
第五章 寓意とはなにか――「猿ケ岛」「地球図」论
第六章 自杀の季节――「道化の华」论
コラム16 アンドレ?ヂイド『ドストエフスキー』
コラム17 「道化の华」四题
第七章 自意识过剰と「死」の形象
第八章 「小説」の小説――「猿面冠者」论
第九章 诗と小説のあいだ――「玩具」论
第一〇章 散文诗の论理――「叶」论
第一一章 『晩年』と”津軽“――「雀こ」ほか
第一二章 転向?シェストフ?纯粋小説
コラム18 文壇デビュー (2)――「鷭」「青い花」
コラム19 「彼は昔の彼ならず」
コラム20 井伏鱒二との”共働“―― ナンセンスの系譜
第一三章 〈嘘〉をつく芸术家 ――「ロマネスク」論
第一四章 現実逃避の美学 ――「逆行」論
コラム21 「陰火」―― 幻想小説としての「尼」
コラム22 演剧との関係(昭和叁―一四年)
コラム23 『晩年』の刊行
第滨滨滨部 中期の作品世界
第一章 ”罪“の生成――『晩年』の崩壊
第二章 「太宰治」の演技空间――「ダス?ゲマイネ」を中心に
コラム24 ”芥川赏騒动“前后――佐藤春夫との関係を中心に
第叁章 第二次&濒诲辩耻辞;転向&谤诲辩耻辞;の虚実――未定稿「カレツヂ?ユーモア?东京帝国大学の巻」を中心に
コラム25 キリスト教の受容
第四章 〈懒惰〉の论理――「悖徳の歌留多」から「懒惰の歌留多」へ
コラム26 荻洼というトポス
第五章 〈自己〉を语り直すということ――『爱と美について』论
コラム27 石原家
第六章 「生活」と「芸术」との齟齬――「富嶽百景」論
コラム28 美知子夫人と「太宰治文库」
第七章 「女生徒」の感性
第八章 女がたり
コラム29 「千代女」と「生活缀方」运动
コラム30 映画とのかかわり
第九章 「小説」の条件――「女の决闘」论
コラム31 画家?版画家たちとの交流
コラム32 「善蔵を思ふ」と栋方志功
第一〇章 メロスの懐疑――「走れメロス」论
第一一章 太宰治と”东京“――「东京八景」を中心に
コラム33 「新ハムレット」の舞台化
第滨痴部 戦中から戦后へ
第一章 戦中から戦后へ
コラム34 戦争の影――叁田循司のことなど
第二章 荡児の论理――「水仙」「花火」
コラム35 二人の女性画家
コラム36 「右大臣実朝」――原稿を中心に
第叁章 「津軽」の构造
第四章 翻案とパロディと――「新釈诸国噺」论
コラム37 『惜别』执笔関连资料から
コラム38 「お伽草纸」の本文
第五章 「八月一五日」と疎开文学
コラム39 「パンドラの匣」と骋贬蚕
第六章 〈桃源郷〉のドラマツルギー――「冬の花火」と「春の枯叶」
コラム40 新剧とのかかわり――戦后を中心に
第七章 戦后文学と「无頼派」と
コラム41 戦中、戦后の叁鹰
第八章 戦后の女性表象――「ヴィヨンの妻」を中心に
第九章 「斜阳」における”ホロビ“の美学
コラム42 「斜阳」执笔の背景
コラム43 伊豆というトポス
第一〇章 「悲剧」の不成立――「人间失格」论
第一一章 関係への希求――「人间失格」の构成
コラム44 信仰と文学と
第一二章 「人间失格」の创作过程
コラム45 草稿研究の课题
第一叁章 最晩年の足跡
コラム46 「井伏鱒二」への想い
コラム47 「志贺直哉」への抵抗
コラム48 肖像写真
関连情报
日本学士院賞 受賞 (日本学士院 2024年3月12日)
书评:
滝口明祥 評「文学史的な視野のもとに太宰治を位置づける ――「テクスト論」以降の文学研究の潮流に対するアンチテーゼを見て取ることも可能」 (図書新聞 2022年5月21日号)
沼田典子 評「太宰研究 40年の集大成」 (東奥日報 2022年2月11日)
金子拓 評「「かぶれ」極北の重み」 (読売新聞 2022年2月20日/2022年2月25日オンライン)
自着绍介:
「文学研究の醍醐味 ――『太宰治论』を上梓して」 (東京新聞 2022年6月21日夕刊)
「太宰治という迷宮 (ラビリンス) ――『太宰治论』を執筆して」 (东京大学出版会note 2021年12月28日)
绍介记事:
「安藤宏?東大教授の40年以上にわたる研究の集大成」「太宰の作家論の決定版」 (読売新聞 2022年3月10日)
関连记事:
「普遍につながる問い 太宰治研究30年 安藤宏さん (東京大教授)」 (東京新聞Web 2021年4月17日)
関连イベント:
「太宰治と近代作家たち ―― 芥川龍之介?川端康成?志賀直哉」 (昭和女子大学 2022年11月16日)