生诞130年记念 知られざる佐藤春夫の轨跡 秘蔵资料をよむ
明治?大正?昭和をつうじて、詩と小説の分野を中心に活躍した佐藤春夫 (1892-1964) は、多ジャンルにわたる先駆的な活動と、近代文学者随一の人脈の広さによって、近年再び注目を集めている作家です。
筆者は2010年以来、新宮市立佐藤春夫記念館および実践女子大学の協力を得ながら、佐藤家に残された膨大な直筆原稿と手紙類の整理にあたってきました。本書はその最新の調査結果と研究の成果を活かし、400枚を超えるオールカラーの資料図版に解説を添えて、佐藤春夫の生涯と業績をたどったものです。前著『佐藤春夫読本』(辻本雄一監修?河野龍也編、勉誠出版、2015年) とともに、佐藤春夫の入門書として活用できるだけでなく、収録した図版のほとんどが従来未紹介の一級資料で、春夫研究の最前線を展望することができます。
収録した資料はバラエティーに富み、多面体と称された春夫のさまざまな側面に触れることができます。たとえば、反骨精神旺盛だった少年時代の詩や、大正期抒情詩の金字塔である『殉情詩集』(1921) の草稿、出世作「田園の憂鬱」(1918) に描かれた土地の権利書類や、1920年の台湾旅行で春夫のよきアドバイザーになった森丑之助 (台湾原住民研究者) の遺稿など、すぐれた批評意識に貫かれた春夫の創作活動の裏側をうかがい知ることができる資料を多数収録しています。
また、一人の女性をめぐって激しい確執を生じた盟友?谷崎潤一郎の当時の手紙や、互いによきライバルとして意識し合った芥川龍之介との芸术談義、どん底の精神状態のなかから春夫に救いを求める太宰治の手紙など、本書に初めて収録された貴重な手紙を図版で読むこともできます。室生犀星や檀一雄の手紙も含めて、春夫を中心とする文学者たちの豊かな相関図をそこから見てとることができるでしょう。
デビュー前の一時期、画家を目指して二科展の常連であった春夫の経歴は、その後も美しい本づくりのなかに発揮されました。例えば、大正期のシリーズ企画として知られる新潮社の「中篇小説叢書」(1922-1924) および「短篇シリイズ」(1924-1925) の装幀では、太字のペンの描線の美を活かしたシンプルで斬新なデザインが試みられています。芥川龍之介の感想文集『梅?馬?鶯』(1926) の装幀デザインも春夫が提供しました。法廷実録の体裁をとった自著『維納 (ウィーン) の殺人容疑者』(1933) には、カバーデザインと挿絵に現地の絵入りドイツ語新聞が活用されています。島田訥郎や谷中安規など、春夫を慕った若い画家たちから著書のために提供された画稿も見つかり、本書に紹介しました。
自分の才能を一つのジャンルに限定せず、境界を超えて思うさま芸术の沃野に遊んだのが佐藤春夫でした。本書に収録された資料を読み解きながら、近代日本を彩った新しい芸术運動の躍動感に触れていただきたいと願っています。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 河野 龍也 / 2024)
本の目次
第一章 闘志みなぎる怠け者
記スベキコトナシ――佐藤春夫日記 (一九〇四年)
志士を以て自任――「同時代私議」草稿 (一九一二年)
春夫の結婚問題――佐藤夏樹?秋雄日記 (一九一二~一四年)
第二章 一作で世を动かす
行きづまりから、文壇の寵児に――「田園の憂鬱」の誕生 (一九一八年)
ライバルに励まされて――佐藤春夫宛 芥川龍之介書簡 (一九一七年)
私の好きな男――岛田訥郎挿絵稿
第叁章 自分を见つめる旅
スランプ到来――「私の日常生活」草稿断片 (一九一九年末)
热帯の土地を行く――台湾?福建旅行関连资料
得難いアドバイザー――森丑之助「台湾蕃族図譜 (織物ノ部)』図案集
第四章 恋する诗人の真剣胜负
絶交しても、僕の心の中にある君を思ふ――佐藤春夫宛 谷崎潤一郎書簡 (一九二一年)
さんま苦いか塩つぱいか――诗稿ほか
第五章 苦悩と模索
そのネクタイは三十何本目だい?――「剪られた花」草稿 (一九二一~二二年)
ブックデザイナー?春夫――『剪られた花』装丁案
失恋だけが本当の恋だ――「紫陽花」「薔薇と真珠」稿 (一九二一~二二年)
第六章 惜别、よきライバルへ
目下海辺の憂ウツ中――佐藤春夫宛 芥川龍之介書簡 (一九二六年)
芥川龍之介がよき霊に捧ぐ――『車塵集』草稿綴 (一九二八年)
第七章 结実のとき
世の中は常なきものを――「細君譲渡事件」の蔭で ( 一九三〇年)
小説は噂話の終つたところから始まる――『維納の殺人容疑者』装丁資料 (一九三三年)
第八章 戦云せまる
活动の多様化から「非常时」の表现へ――翻訳?随笔?戦争诗の时代
おれもさう思ふ――谷中安規装画『FOU』 (一九三六年)
先生、私を厳正叱咜、いまはいけませぬ――佐藤春夫宛 太宰治書簡 (一九三五~三六年)
第九章 疎开先からの再起
秋風や時に古城にのぼる人――佐久スケッチノート (一九四五~四六年)
ありがたさなみだながれて――『佐久の草笛』自筆稿 (一九四六年)
第十章 春の日の主
「門弟三千人」伝説――佐藤春夫宛 檀一雄書簡 (一九四六年)
「小説」への挑戦――少々は事実を曲げても真実を书きたい
「私は幸いに…」――書かれなかった手帖 (一九六四年)
新资料 翻刻篇
【新資料1】佐藤春夫談話 速記稿 (全集未収録)
【新資料2】佐藤春夫書簡 佐藤豊太郎宛 (第一章参照)
【新資料3】芥川龍之介書簡 佐藤春夫宛 (第二章参照)
【新資料4】谷崎潤一郎書簡 佐藤春夫宛 (第四章参照)
【新資料5】芥川龍之介書簡 佐藤春夫宛 (第六章参照)
【新資料6】芥川龍之介葉書 佐藤春夫宛 (第六章参照)
【新資料7】芥川龍之介書簡 佐藤春夫宛 (第六章参照)
【新資料8】室生犀星書簡 佐藤春夫宛 (第六章参照)
【新資料9】太宰治書簡 佐藤春夫宛 (第八章参照)
【新資料10】檀一雄書簡 佐藤春夫宛 (第十章参照)
佐藤春夫略年谱 新宫市立佐藤春夫记念馆作成
関连情报
公開講座「美の冒険者?佐藤春夫の挑戦」 (主催:実践女子大学生涯学習センター 2022年10月8日)
新出秘蔵資料展「生诞130年记念展示 知られざる佐藤春夫の轨跡――不滅の光芒」 (主催:実践女子大学文芸資料研究所/公益財団法人佐藤春夫記念会 2022年9月26日~10月15日)