歴史のなかの地震?喷火 过去がしめす未来
近代の機器による地震観測が始まってから150年であるが、日本では100年以上の時間をおいて繰り返される地震があることが知られている。そうした地震を知り、将来の予測に生かすには過去の史料に基づいた地震研究が必要である。東京大学では、2017年に地震研究所と史料编纂所が協力して地震火山史料連携研究機構を立ち上げ、近代以前の地震史料の収集と調査に取り組んでいる。2019年度からは、教養学部の学術フロンティア講義「歴史史料と地震?火山噴火」を開講し、文理二つの研究所の教員2名ずつが交互に授業を担当している。本書はその講義内容を書籍化したものである。
日本では最古の歴史书である『日本书纪』以来、多様な史料に地震の発生を伝える记述が残されている。それらを编纂した地震史料集が、现在までに35册刊行されている。これを活用した近代以前の地震研究も进んでおり、日本の地震史を概観した一般书も少なくない。そうした研究?出版の状况の中において、本书の特徴は、近代以前の地震を年代顺に取り上げるのではなく、地震が発生する仕组みごとに検讨している点である。
すなわち (1) 日本海溝での太平洋プレートの沈み込みによる地震 (東北地方の地震)、(2) 南海トラフでのフィリピン海プレートの沈み込みによる地震、(3) 日本列島上の活断層による地震 (内陸地震)、(4) 太平洋プレートとフィリピン海プレートの二つが沈み込む首都圏直下で起きる地震の四つに分けて、それぞれの地震の起こる仕組みについては地震学の研究者が、歴史上の大地震の具体的な様相については歴史学の研究者が記述するという形をとっている。それによって巨大地震のタイプごとに、どのくらいの被害をもたらした地震が、どのくらいの頻度で発生してきたのかを理解しやすくしている。また巨大地震と関係の深い9世紀と18世紀の富士山噴火についても、その経過を具体的に解説している。
各章では、最初に近年に起きた地震を取り上げて、読者の兴味を诱うように工夫した。また歴史に関する记述では、烦雑にならない范囲で根拠史料を掲げて、歴史学の手法を示した。揺れや被害が具体的にどう表现されているかも绍介して、史料のもつ生々しさを伝えられることを心がけた。コラムを多く设けたのも特徴で、地震の大きさや津波の速さのような地震学の基础知识や、前近代の时刻表现や暦など歴史研究の前提となる事柄に简単な解説をつけて、分野外の読者への便宜をはかっている。
本书は地震学と歴史学の研究者が执笔したが、説明に过不足はないか、一般読者にとって简明な记述になっているかについて、相互に忌惮のない意见を交换した。地质や火山など、执笔者阵の専门からやや外れる箇所については、互いに协力して执笔した。共着といっても往々にして分担执笔になりがちだが、本书は文字どおり歴史、地震の両分野の执笔者四人による共着である。地震火山史料连携研究机构での史料调査による最新の成果も取り入れているので、御一読愿いたい。
(紹介文執筆者: 史料编纂所 教授 榎原 雅治、地震研究所 准教授 加納 靖之 (地震火山史料連携研究機構) / 2021)
本の目次
1章 東北の地震 (佐竹健治、榎原雅治)
1-1 東日本大震災の地震と津波
1-2 平安前期の火山噴火と地震
1-3 三陸地方の歴史地震
2章 南海トラフの地震 (佐竹健治、榎原雅治、杉森玲子)
2-1 南海トラフの巨大地震―その繰り返しの歴史を概観する
2-2 古代?中世の南海トラフの地震
2-3 宝永の地震と富士山噴火
2-4 安政の地震
2-5 地震発生の長期予測と被害予測
3章 連動する内陸地震 (加纳靖之、榎原雅治)
3-1 熊本地震と兵庫県南部地震
3-2 天正地震
3-3 文禄畿内地震
3-4 文禄豊後地震
4章 首都圏の地震 (佐竹健治、榎原雅治、杉森玲子)
4-1 関東地方の地震のタイプと大正関東地震
4-2 中世の相模トラフの地震
4-3 元禄関東地震
4-4 安政江戸地震
4-5 関東地震の繰り返しと長期評価
5章 歴史地震研究の歩みとこれから (佐竹健治、榎原雅治、加纳靖之)
関连情报
榎原雅治『歴史のなかの地震?喷火―过去がしめす未来―』の刊行 (『画像史料解析センター通信総目録』第92号 2021年4月)
放送大学番组:
BSキャンパスex特集 歴史から地震を考える (前編) (放送大学YouTubeチャンネル 2022年6月26日)
BSキャンパスex特集 歴史から地震を考える (後編) (放送大学YouTubeチャンネル 2022年7月3日)
书评:
天野真志 評 (『歴史評論』第868 2022年8月号)
小山真人 (静岡大学教授) 評 (『地震ジャーナル』72号 2021年12月)
鎌田浩毅 (京都大学特任教授) 評「10月の地震と噴火に驚いた人は『歴史のなかの地震?喷火』を読め」 (HONZ 2021年10月27日)
佐藤善輝 (产业技术総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門主任研究員) 評 (『第四紀研究』Vol.60, No.3 2021年9月)
佐藤信 評 (読売新聞 2021年8月1日)
2021年上半期の収穫から:木村玲欧 (兵庫県立大学環境人間学部教授) 評 (『週刊読書人』 2021年7月23日号)
七山太 (产业技术総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門) 評 (『GSJ地質ニュース』Vol.10, No.7 2021年7月)
鎌田浩毅 (京都大学特任教授) 評 (公明新聞 2021年6月28日)
ブックウォッチング「良书を夸る大学出版部特集」 (毎日新闻 2021年5月12日)
Book Review (『週刊東洋経済』 2021年5月15日号)
郷土の本棚 (岩手日报 2021年4月25日)
话题の本 (『週刊エコノミスト』 2021年4月13日号)
书籍绍介:
気象と防災マメ知識!: 665回「末の松山」2022年2月12日OA (IBC岩手放送 2022年2月12日)
シンポジウム:
国际シンポジウム「デジタル化する歴史灾害研究」 (国立歴史民俗博物馆 2019年7月20日)
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