富士山喷火に备える
本書は雑誌「科学」の掲載論文選であり、カルデラ噴火の話題を集めた2014年の特集号と富士山噴火の話題を集めた2022年の特集号の論文が大部分を占めている。対象としている噴火がカルデラ噴火と富士山噴火という違いもあるが、原稿が書かれた8年間の時間差も内容に大きく影響している。2014年9月の御嶽山の噴火災害を契機に、火山研究はより防災?減災の観点から広範に取り組まれるようになる。その結果、様々な観測技术の進歩やデータの蓄積があって噴火現象への理解が深まるとともに、それらに基づく噴火対策といった現実的な内容が「第一部:富士山喷火に备える」に盛り込まれている。そうしたことにも注目して本書を手に取ると、火山研究の方向性も読み取れて本書の面白さが増すに違いない。
「噴出物から読み解く富士山のマグマ供給系」では、円錐形の高い山容を持つ富士山が特別な火山であることを地下に存在するマグマ供給系から説明している。ではマグマ供給系の実体は噴出物からどのように読み出されたのだろうか。噴出した岩石やそこに含まれる結晶だけではなく、結晶に捕獲されたメルト包有物と呼ばれる地下深部のマグマ、さらには噴火に伴って得られた火山深部の岩石など、様々な情報源からマグマ供給系に迫る。(地震研究所 准教授 安田 敦)
「桜島のリアルタイム透視」では、透過力の強いミュオンという素粒子を用いて火山内部を観測する技术とその最新成果を紹介する。ミュオンは銀河系の遥か彼方から到来する宇宙線が地球の大気と反応することで生成される素粒子でキロメートルを超える岩盤を透過する能力を持っている。この透過力を使って火山などの巨大物体のレントゲン撮影する技术をミュオグラフィと呼ぶ。ミュオグラフィの技术は観測装置の技术の発展と共に進化してきたが、今では軽量高解像度のミュオグラフィ撮影装置が桜島に展開されている。本書では、まずこの軽量高解像度のミュオグラフィ撮影装置について簡単に解説する。次にこの軽量高解像度のミュオグラフィ撮影装置が撮像した桜島内部のマグマ動態と火山噴火の関係について説明する。(地震研究所 教授 田中宏幸)
「世界初の多方向3次元透視が明らかにした大室山の内部構造」では、前の記事で紹介されたミュオグラフィによる火山内部の透視技术を多方向から行う事によって、伊豆大室山の3次元密度分布の可視化を試みた報告が記されている。従来の研究では2~3方向からの観測が限界だったが、電源が不要で軽量な原子核乾板を用いることで11方向からの多方向観測を実現し、高い3次元空間分解能を達成している。可視化された3Dイメージからは、中央の主火道から山体に貫入したマグマが西麓の溶岩流や南山腹の小火口を形成したことが読み取れる。この観測手法はより大きな山体を持つ活火山に対してただちに応用できる段階ではないが、溶岩流を伴う火山噴火活動に対する防災対策への貢献が将来期待される。(地震研究所 助教 宫本成悟)
(紹介文執筆者: 地震研究所 准教授 安田 敦、教授 田中宏幸、助教 宫本成悟 / 2023)
本の目次
火山専门家の育成?确保が急务〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;藤井敏嗣
I 富士山喷火に备える
摆概论闭
富士山喷火に备える〔2022年7月〕………藤井敏嗣
富士火山の喷火史〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;山元孝広
摆地下构造闭
富士山のモニタリング――地下では何が起こっているか?〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;藤田英辅
电磁気的観测で地下构造を探る――マグマ性ガスの上昇と电気比抵抗构造〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;相泽広记
富士山の地下构造を地震波から探る〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;中道治久
摆喷火史闭
宝永山は降り積もってできた火砕丘である〔2022年7月〕………馬場 章
喷出物から読み解く富士山のマグマ供给系〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;安田 敦
富士山の景観〔2014年1月〕 ………小山真人
摆地下构造を探る新手法闭
桜岛のリアルタイム透视〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;田中宏幸
世界初の多方向3次元透视が明らかにした大室山の内部构造〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;小山真人?宫本成悟?长原翔伍?铃木雄介
摆防灾闭
富士山ハザードマップの改定〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;吉本充宏
宝永喷火の降灰シミュレーション〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;万年一刚
都市が火山灰で覆われたらどうなるか〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;久保智弘?石峯康浩
火山灰で覆われた道路を车両は走れるのか〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;西泽达治
富士山喷火の降灰が首都圏のインフラに及ぼす影响〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;伊藤哲朗
富士山喷火と防灾情报〔2022年7月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;地引泰人
富士山での突発的喷火の可能性と登山者対策――地域の火山防灾力をいかに高めるか〔2014年12月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;小山真人
桜岛2022年7月喷火と火山防灾の课题〔2022年10月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;井村隆介
II 大喷火?巨大喷火を知る――巨大喷火がつくりだした日本列岛
大喷火の溶岩流?火砕流はどれほど広がるか〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;中田节也
私たちは本当の巨大喷火を経験していない――喷火予知の现状と课题〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;藤井敏嗣
カルデラとは何か:鬼界大喷火を例に〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;前野 深
阿苏4巨大喷火のマグマ発生と喷火推移〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;金子克哉
超巨大喷火は予知できるか〔2014年9月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;高桥正树
焦眉の急,巨大カルデラ噴火――そのメカニズムとリスク〔2014年12月〕………巽 好幸?鈴木桂子
7300年前に破局噴火を起こした鬼界カルデラに巨大溶岩ドームが成長〔2018年5月〕………巽 好幸
九州を南北につらなるカルデラたち〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;小林哲夫
北アルプスをつくった大噴火――槍穂高カルデラとは〔2014年1月〕………原山 智
北海道东部,阿寒~屈斜路火山群の成り立ち――小型カルデラが复合した大型カルデラの形成〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;中川光弘?长谷川健?松本亜希子
谜の箱根カルデラと过去に秘められた巨大喷火――列岛中央の特异なテクトニクス场におけるカルデラの形成〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;高桥正树
大规模喷火データベースと喷火推移データベースで喷火の详细情报を明らかに〔2022年11月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;宝田晋治?池上郁彦?金田泰明?下司信夫
日本の火山データベース――火山の活動史を一覧〔2014年1月〕………石塚吉浩?中野 俊
喷火と原発〔2014年1月〕&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;守屋以智雄
関连情报
富士山喷火に备える (『科学』Vol.92 No.7 通巻1079号 2022年7月号)
巻头エッセイ:
火山専門家の育成?確保が急務 藤井敏嗣 (山梨県富士山科学研究所所長?東京大学名誉教授) (『科学』Vol.92 No.7 通巻1079号 2022年7月号)
书评:
おすすめ本レビュー: 鎌田浩毅 (京都大学名誉教授) 評「『富士山喷火に备える』「噴火スタンバイ状態」の富士山はどうなっているのか?」 (HONZ 2023年11月14日)
本の時間 新刊书评: 鎌田浩毅 評 (『プレジテント』 2023年6月16日号)
书籍绍介:
【瀬田ミニ展観:1/9~1/28】防災とボランティア週間 展示資料 (龍谷大学図書館 2024年1月9日 – 1月28日)
山の本 - 類書紹介: 山を知る、山に祈る、山を楽しむ (『有鄰』第587号 2023年7月10日)
関连记事?関连动画:
富士山噴火は南海トラフ地震と連動も! 備え遅れる火山対策 (ちいきのなかに防災ニッポン+ 2023年10月17日)
もういつ噴火が起こっても全然不思議ではない――研究の第一人者に聞く、「富士山リスク」への向き合い方 #災害に備える (Yahoo!ニュースオリジナル特集 2023年4月8日)
いま目の前にある富士山喷火という危机:
企業が富士山噴火に備えなければならない理由 - いつ起きる? そのとき何が起きる?
山梨県富士山科学研究所所长?东京大学名誉教授 藤井敏嗣氏に闻く(リスク対策.肠辞尘 2022年5月1日)
火山の仕組みを知る(3)富士山の噴火はあるか? (藤井敏嗣)
富士山の喷火はいつ?予想される被害や影响とは (テンミニッツ罢痴 2018年6月1日)