コロナの时代の歴史学
本书は、新型コロナウイルス感染症の流行という、死者数からみれば世界大戦に匹敌するような大きな出来事が进行しつつあるいま、过去に何を学び、现状をどのように把握?认识し、未来をどのように展望すべきかを、16名の歴史学研究者が问うた本である。
内容としては、(1) 感染症や医療?公衆衛生の歴史を掘り下げ明らかにしている論稿 (飯島論文、海原論文、福士論文)、(2) 感染症の流行を契機として問い直されるべき歴史認識を、新自由主義の展開や国家、民主主義のありようなどから追究している論稿 (小沢論文、中澤論文、古谷論文、加藤論文、池田論文)、(3) 感染症が顕在化させる格差?貧困?差別について検討している論稿 (三枝論文、石居論文、貴堂論文、今津論文、小田原論文)、(4) オンライン授業やデジタルアーカイブの促進など「コロナ禍」によって模索されることになった新たな「歴史実践」の取り組みを紹介している論稿 (大門論文、若尾論文、北條論文)、の4つに大別される。執筆者の多くは、これまで感染症や医療の歴史について研究してきた研究者ではない。それにもかかわらず、本書が成ったのは、感染症が、国家や社会?経済?文化に多大な影響を与え、これを変動させ得るものであることを研究者自身が日々体感しているからにほかならない。すなわち、新型コロナウイルス感染症の流行は、感染症の歴史を明らかにしていくことと、国家や社会?経済?文化の歴史を明らかにしていくこととが密接不可分の関係にあることを、歴史学研究者に改めて認識させる契機ともなった。
「结びにかえて」でふれているように、本书は、企画され执笔者が确定されてからわずか二か月でまとめ上げられた。このような短期间での刊行が可能となったのは、执笔者それぞれが、悪化しつつある感染状况や社会情势を前に、歴史学の果たし得る役割や可能性をいまこそ问い直し示したいという热意を持っていたからである。新型コロナウイルスの流行という出来事を経験することによって、私たちはどのような歴史をつくることになるのか、どのような歴史をのこすことになるのか。様々な方々に本书を手に取っていただくことで、よりよい未来を共に展望していけたらと愿っている。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 三枝 暁子 / 2021)
本の目次
第一章 感染症拡大の歴史的再検討?歴史学の位置
COVID-19と「感染症の歴史学」 飯島 渉
新自由主义下の颁翱痴滨顿-19 小沢弘明
第二章 医療史?公衆衛生史のなかの感染症
安政コレラ流行と蘭方医 海原 亮
環境?感染症?公衆衛生――新型コロナウイルス感染症と中国医療社会史研究 福士由紀
第三章 感染症をめぐる政治と社会の分断?緊張
新型コロナウイルスの副作用――「感染症の人種化 (racialization)」 中澤達哉
パンデミックに対峙する福祉国家の経験――「フォルク」の両义性に揺れるスウェーデンの选択 古谷大辅
第四章 感染症による現代国民国家の変質
コロナ祸の世界からみる国家と国民の関係の変容 加藤阳子
コロナ祸と现代国民国家、日本、それに西洋史研究 池田嘉郎
第五章 感染症が照らしだす人権と差別
感染症と中世身分制 叁枝暁子
「卫生」と「自治」が交わる场所で――「コロナ祸」なるものの歴史性を考える 石居人也
アメリカ社会とコロナ祸――人种マイノリティ差别とブラック?ライヴズ?マター运动 贵堂嘉之
第六章 感染症をめぐる格差?労働?ジェンダー
日本古代の疫病と秽 今津胜纪
パンデミックとジェンダー分业――共同体の公正な存続のために 小田原琳
第七章 感染症と歴史実践
コロナ祸/オンライン授业のもとで「考える歴史学」を教える试み――2020年度春学期の例 大门正克
いま歴史研究に何ができるのか――若手研究者问题を中心に 若尾政希
忘却と変质の相克――颁翱痴滨顿-19下の歴史実践の行方 北条胜贵
结びにかえて
関连情报
東京外大教員の本 執筆者のコメント: 小田原琳 (大学院総合国際学研究院 准教授) (TUFS Today)
书籍绍介:
外冈秀俊の「コロナ 21世纪の问い」(43) 歴史学に问われるもの (闯-颁础厂罢ニュース 2021年8月21日)
「コロナの时代の歴史学」 コロナ禍の社会課題を考える (好書好日 2021年2月1日)