歴史文化ライブラリー444 古建筑を復元する 过去と现在の架け桥
2019年10月31日の深夜、首里城が焼け落ちた。そのニュースは冲縄だけではなく、日本中の人の心を痛めたことは记忆に新しい。一方で、首里城正殿が「復元建物」であることを火灾に関连する报道で知った人も少なくない。この首里城正殿は第二次世界大戦の中で失われたのち、1992年に再建されたものである。この首里城のように、遗跡で「復元建物」を目にする机会は多いだろうが、こうした「復元建物」がどのように造られるのか、その里侧を知る人は少なかろう。
この復元建物はあたかも、往时の建物そのものであるかのような错覚に陥ってしまう危険性もはらんでいる。復元建物は现代建筑であり、100%正しいことはないということを忘れてはならない。同じ遗跡でも復元设计者によって、全く异なる形になることさえある。こうした妄信を避けるためには、见る人のリテラシーが求められ、それには復元された过程を知るのが第一である。
首里城の场合は戦前の调査成果があったので、復元に必要な情报も多かったが、例えば縄文时代の竪穴建物や高床仓库などではそうはいかない。同じく日本には古代の宫殿建筑も残っていないが、平城宫では第一次大极殿や朱雀门などが復元されている。発掘调査で分かるのは柱を立てた穴や柱の下に置かれた础石等、限られた情报だけである。これらが復元建物の出発点であるが、これと復元建物をすぐには结び付けられないであろう。考古学や建筑史学の専门家であっても、両方を知らなければ理解は难しい。
本书はこうした発掘调査で得られた成果をもとに、どのようにかつての建物の姿を考えていくかという过程を纽解いたものである。そのためには発掘调査と木造建筑の基础知识が必要であるため、前半部で绍介している。そのうえで、竪穴建物?寺院建筑?宫殿の復元の実例を通して、復元にいたる学术的プロセスを纽解いている。この復元のプロセスの理解こそ、復元建物の里侧を见る醍醐味であり、遗跡との真挚なかかわり方でもある。これは日本に限った话ではなく、イギリスでも実験考古学的に住居が復元されているし、中国や韩国でも宫殿や寺院の復元が进んでおり、遗跡における復元建物は共通の课题である。
この復元を発掘調査の成果などの与えられた「前提条件」から様々な復元の形が導かれるが、検討過程を学術的に位置づけることで、「復元学」という新しい学問領域を拡大している。「復元学」に興味を持った方は『文化遺産と〈復元学〉』(海野聡編、吉川弘文馆、2019年) を手に取ってもらいたい。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 准教授 海野 聡 / 2020)
本の目次
古建築を知る (古建築の基本構造/建築各部の構造/さまざまな建築形式と平面)
建物の痕跡を見る (建物のさまざまな基礎構造/建物に付随する発掘遺構/出土遺物)
発掘遺構と建物をつなぐ (復元のフロー/復元をサポートする資料/発掘遺構から復元建物へ)
復元の裏側をのぞく (宮殿を復元する―平城宮第一次大極殿?朱雀門/寺院を復元する―四天王寺/集落を復元する―登呂遺跡)
復元建物の楽しみ方とこれから―エピローグ
関连情报
第5回 古代歴史文化赏 优秀作品赏 (古代歴史文化普及协议会 2017年11月)
书评?绍介文:
书评 (『関宿まちなみ研究所』ホームページ 2021年2月23日)
新刊紹介 光井 渉 (『建築史学』71号 2018年9月)
海野 聡「復元建物の見かたと「復元学」のすすめ」 (『本郷』129号 2017年5月)
古建築復元、入門に - 奈文研研究員が著書 (『奈良新聞』 2017年5月10日)