芸术教養シリーズ19 私たちのデザイン3 空间にこめられた意思をたどる
建筑の设计をする际に気をつけているのは、「派手な建物をたくさんつくるのではなく、ひとつひとつのプロジェクトの中にどのような思考を展开できるか」ということである。旅先の何気ない风景、いつもの街角。それらを见る度にデザインの意味を自分なりに考えるのが、ごく自然な习惯となっている。こうした私なりのデザイン的思考をきちんとまとめるために生まれたのが、この本である。
私の専门分野は、建筑意匠、もしくは风景论と呼ばれている。前者の建筑意匠とは、建筑のデザインを研究する分野を指す。古くから、建筑设计の方法论について多くの议论がされてきたが、建物を构成要素に分解し各要素の美しさを検証したり、光の効果などを研究するのが主であり、建筑の形式が周辺の场所にどのような影响を与えるかについて议论されることはほとんどない。后者の风景论は、各地の风景の特质を浮き彫りにし、その背景にあるメカニズムを探究する学问だが、现状の把握が主であり、そこから新しい建筑をつくり出す论理を导くことは困难である。私は、これまでのキャリアの中で、この両者を学ぶことができた。建筑をつくり出す回路と风景を理解する回路である。この二つの回路がつなぎ合わさるとき、日本の风景の中で立ち上がる建筑の姿を描くこと、场所ごとに浮かび上がる然るべき形式を探求することができるのではないかと考えた。
(1) 空間把握の新たな方法論
本書は、多岐にわたる事例を、軸線 / 迷宮、加法 / 乗法、抽象 / 感情、明示 / 重層、解釈 / 手法、連動 / 受容、社会 / 個人、伏臥 / 屹立、未来 / 芸术、技术 / 都市、保存 / 生業、様式 / 機能、構築 / 出現、瞬間 / 永遠、求心 / 遠心という15の対の概念として提示している点が特徴的である。単なる事例紹介にとどまらず、空間体験を概念的に抽象化することにより、空間把握の新たな方法論を提示している。
(2) 分野横断的な事例選定
本书の対象は、建筑物以外にも、集落や河川、土木构造物など幅広い分野をカバーしている。学问分野としては、建筑学の他に、土木工学、农学分野にまたがる対象物选定となっている点が注目に値する。建物、建物群、构筑物、自然要素などを并列的に捉える试みは、中长期的な国土计画にとって重要な视座を提示するだけでなく、これまでに类を见ない新しい「空间学」の可能性を提示している。
(3) 空間の価値と魅力の社会への発信
建筑に対する関心は高まっているが、その捉え方はまだ限定的である。今こそ、一般向けに「空间」という建筑の魅力を伝える试みは、大きな意味を持つ。本书は、平易な文体でわかりやすく执笔されているだけでなく、建筑史における重要な事例を取り上げており、空间体験をきっかけとした一般教养としての建筑学の価値と魅力を、ひろく社会に発信する大きな役割を果たしている。
(紹介文執筆者: 生産技术研究所 准教授 川添 善行 / 2016)
本の目次
加法と乗法 - 礪波平野と竹富島
抽象と感情 - パルテノン神殿とノートル?ダム大聖堂
明示と重層 - 江川家住宅と閑谷学校
解釈と手法 - テンピエットとラウレンツィアーナ図書館
連動と受容 - 釜無川と四万十川
社会と個人 - 二条城二の丸御殿と臥龍山荘
伏臥と屹立 - 小屋平ダムと黒部ダム
未来と芸术 - ウィーン郵便貯金局とシュレーダー邸
技术と都市 - 熊本県立美術館と広島ピースセンター
保存と生業 - 内子と宇治
様式と機能 - 中央停車場と復興小学校
構築と出現 - 東大寺南大門と大谷石地下採掘場跡
瞬間と永遠 - 法隆寺西院伽藍と三仏寺投入堂
求心と遠心 - セイナッツァロ村役場と軽井沢の山荘