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平成30年度东京大学学部入学式 教养学部长式辞

式辞?告辞集 平成30年度东京大学学部入学式 教养学部长式辞

 

新入生のみなさん、そしてご家族のみなさま、その思い出に深く刻まれるであろうこの时をここに共有できることを光栄に存じます。そして本学への入学を许可された新入生のみなさんが、本当に东京大学で学んでよかったとの深い喜びを抱いて卒业の日を迎えられることを心から愿い、そのために本学の一员として微力を尽くしたいと考えます。

 

新入生のみなさんは、これから驹场キャンパスにおいて学士课程の前半を过ごすことになります。この春、教养学部の一员となったみなさんに、学部を代表して歓迎の意を表するとともに、この机会にその学士课程前半の前期课程教育が持つ意味についてお话しておきたいと思います。

 

私たちは、无数の利害関係者が复雑に络みあう社会の中に生きています。この社会は、特定の个人や集団の个别利益の実现と、社会全体の共通利益の実现とが必ずしも両立するとは限らない社会です。

たとえば、現在の世代のための開発は、地球温暖化、オゾン層の破壊、生物多様性の喪失、酸性雨、砂漠化等をもたらし、地球環境の保護や地球規模の共有資源の保全を困難にして将来の世代の利益を損なうことがあります。それゆえに、環境保全にも配慮した節度ある開発としての「持続的開発(sustainable development)」を求める動きが生まれました。

また、エイズ(后天性免疫不全症候群)、エボラ出血热、厂础搁厂(重症急性呼吸器症候群)など、国境を越えて広がる感染症の扑灭は国际社会の共通の利益です。この感染症の扑灭には、医薬品の知的财产権を保护するなどして製薬公司がその研究?开発に取り组む経済的动机を作り出さなければなりませんが、逆にそれを制限することなしには、途上国で暮らす多数の患者に安価な医薬品へのアクセスを保障することはできません。こういった事情を背景として、先进国と途上国との间に知的财产権の保护をめぐる主张の対立が生じ、それにどのように折り合いをつけるかが论じられました。

さらに、领土、国民、宪法など、一国にとって価値あるものに対する胁威を、国家の政策を通じて軽减することはその国家の安全保障上の利益と位置付けられるでしょう。しかし、军备の増强や同盟の强化は、现状の防卫に资するのみならず现状の一方的変更にも资するものです。现状の防卫を目的とする国家のみならずその一方的変更を目的とする国家さえも、目的実现のために军备増强や同盟强化という同一の手段を选択するとあっては、选択された手段からその目的を推论できません。それゆえに、相手国の不安を掻き立てることなしには、自国の不安を拭いさることができないという「安全保障のディレンマ」が生じるのです。こうして守势に立たされているという不安から、各国が军备の夸示や先制自卫行动の検讨をするなどして、结果的に互いの不信を増幅するような攻势に出る事态もしばしば観察されます。东アジアの国际情势も例外ではないどころか、むしろその典型かもしれません。

このように、地球上の人间の诸活动はさまざまなディレンマを私たちに突きつけています。そしてそれはいずれも深刻なものです。いま例に挙げた持続的开発や平和的共存なども、たやすく実现できるものではありません。このほかにもみなさんの心に重くのしかかる现実は、数えればきりがないかもしれません。しかし、この困难を前にして悲観も冷笑もみなさんを含む私たちの选択肢たりえないと考えます。むしろ、《勇気ある楽観》をみなさんには期待したいと思います。そしてこの困难な状况からの脱出口を切り拓いてもらいたいと思います。无论、この勇気ある楽観は、根拠の乏しい梦物语ではなく、学识豊かな判断力であり、そのような判断力を养うためにこそ驹场で过ごす二年间を最大限有効に活用することを愿うものです。

 

社会が大学に大きな期待を寄せるのも、大学と「社会との连携」を高く评価してのことであります。大学はその先端的「研究力」を通じて人间社会のディレンマ克服に有益な学术的知见を社会に提供するとともに、その教育活动を通じて学术研究の成果の意义を正确に理解できる人材を育成するという両面を持ちます。大学の持つこの二面が高い评価を受けていることは间违いありません。そのように申し上げたうえで、学术研究も、原子力の平和利用と军事利用の例を引き合いに出すまでもなく、本来の研究目的の范囲を超えて利用されうる汎用性を持つことは自明ですから、それ自体ディレンマから逃れられるものではない、ということも付け加えておきたいと思います。

 

私たちは、どれほど体格の良い个体であっても物理的にはしょせん世の中の一隅を占めるに过ぎない小さな存在です。もし私たちが、その想像力を自分で见闻きできる范囲を超えて広げることもできずに、ただ个人の、あるいはたまたま所属?居住する特定集団の短期的な利益だけを追求することに専心して、人类社会全体の长期的な利益を蔑ろにするならば、それは残念なことです。残念なだけでは済まずに、取り返しのつかないことになるかもしれません。

それゆえに、この春、驹场キャンパスにおいて大学生活を始めるみなさんには、前期课程における学修を通じて、多様な利害が时空を超えて复雑に络み合う现実を俯瞰し、その全体を総合的に考察する力を是非とも身につけてもらいたいと愿っています。そして、広く世界を见渡し、未来を见据え、地球规模の、そして将来世代の诸课题に主体的に関与し、その解决に寄与する《地球未来社会の责任ある构成员》として活跃することを期待します。地球未来社会における共通の利益実现にむけ、グローバルな舞台を縦横に行き来し、他者とともに生き、学び、考え、働く、つまり「国际协働」を先导する存在となることを期待します。

人间の知的活动の地平が広がるにつれ、大学における研究?教育は専门分化しています。その一方で、学问领域の枠を超えて、断片的な知见を连结し统合する総合的な知的探究への活力も生まれています。専门分化と学际统合の动きを併せみれば、知的関心の多様性が知的探求の一体性を生み出している、と言えるかもしれません。

 

私は前期课程教育の本质は、断片的な知见を连结し统合する総合的な知的探究にあると认识しています。教养学部が培おうとする教养も、多面的な现実を総合的に评価することを可能にする知の奥行き、広がりといったもので、それが人间の的确な判断力の基盘を成し、自由自在の発想を可能にすると考えます。変化のない时代には、専门领域に特化した知の分业は一定の合理性を持ちますが、今日のような急速な変化の时代には狭い専门に囚われることのない広い教养が力を発挥します。特定分野における未知の学识をひたすら吸収する勉强も必要ではありますが、それ以上に、既知の事物や事象を互いに関係づけて全体をとらえる视野の広い俯瞰力を获得するために、驹场キャンパスでの二年间を充てることを愿うばかりです。

东京大学教养学部の正门も、そのようなみなさんに対して开かれています。前期课程教育については既にみなさんは先週のガイダンス等で説明を受けていますから、それをここで繰り返すことはいたしません。ただおそらくその场では触れられなかったであろうことを一言付け加えておきたいと思います。すなわち、驹场キャンパスにおいてみなさんを迎える私たちの準备は、全体としてのカリキュラムから个々の授业等に至るまで、みなさんの大半を満足させる水準であると信じてはおりますが、私たちの想定の范囲に缩こまる必要などありません。どうぞ远虑なく私たちの想定を悠然と凌驾してください。そのような学生あっての东京大学であることは私たちの夸りであります。

 

最后に、以下のことを强调して、私からの式辞を结びたいと思います。

性别を问わず、国籍を问わず、障がいの有无を问わず、本学において学生生活を送ったみなさんが、周囲からその确かな见识と勇気ある判断力とを信頼される人材として、日本社会のみならず国际社会の选択を牵引する存在となることを、心から愿ってやみません。

 

 平成30年(2018年)4月12日
東京大学教養学部長  石田 淳

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