水田経営の戦略と组织
农业において家族経営が中心を占め、その优位性が长らく指摘されてきた中で、近年は非家族経営のプレゼンスが増しつつある。日本国内においては、过去20年ほどの间に、大规模な水田経営に农地が集积しつつあり、借地や雇用导入による规模拡大が进められるとともに、専业化、法人化した経営のシェアが増しつつある。また、集落営农组织は、当初は任意组织が中心であり、独立した経営としての性格が乏しかったものが、近年は、法人化による形式的?制度的な独立だけでなく、経営资源が蓄积され、経営として継続しうる组织となり、水田経営の主要な主体となってきている。
これらの経営がステークホルダー (SH) の支持を受けて持続するためには、規模拡大や組織形態の選択だけでなく、その戦略策定や管理が適切に実施される必要がある。とくに、SHへの対応、農地集積のプロセス、気象条件を踏まえた作業管理や労働環境の保全といった課題への対応が求められる。また、集落営農をはじめとする経営組織が発展してきた日本の中山間地域の経験は、条件不利地域の農業経営がSHに対応して適切な経営管理を選択し、経営資源を継承していくための貴重な知見を提供しうる。
こうした背景をふまえ、本书では、国内の水田経営を対象とした多角的な分析から、次のことを明らかにしている。第一に、不确実な条件下で规模拡大する水田経営が、持続可能となるための経営戦略について、厂贬との関係、农地の集积、机械の利用、人的资源といった视点に着目して明らかにしている。第二に、农业に関わる従事者の労働条件や职务満足について、その要因を明らかにしている。第叁に、圃场条件が不利な中山间地域について、农地保全と経営の継続の両立が可能な経営管理について明らかにしている。
以上の分析结果の総括として、组织形态によって関与する厂贬が异なることから、有効な経営管理が异なる一方で、これらの経営管理は、ある程度类似したものに収敛しつつあることが示されている。すなわち、规模拡大を达成し、多くの厂贬に直面する水田経営に求められる経営管理として、戦略的な农地集积と机械の稼働率向上による作业の効率化、労働分配を高め、人材确保に务めるとともに、作业の繁闲を念头に置きながら、农繁期の作业ピークを抑制することが示唆された。さらに、意思决定において、地域への贡献を意识しながらも、调整に时间をかけ过ぎない迅速な判断が求められると指摘している。组织形态それ自体が问题となるのではなく、むしろ、厂贬间のバランスを保ちながら、こうした経営管理を选択可能か否かが课题となると论じている。
(紹介文執筆者: 农学生命科学研究科?农学部 准教授 八木 洋憲 / 2023)
本の目次
1. はじめに
2. 水田経営の経営戦略とステークホルダー?マネジメント
3. 规模拡大下における水田経営の课题
4. 水田経営の组织形态と管理
5. 中山间地域における水田経営の戦略と管理
6. 日本の水田农业に関する统计的整理
7. 本书の课题と构成
第2章 ステークホルダー?マネジメントと组织形态
1. はじめに
2. 作业仮説の设定
3. 分析方法
4. 考察
5. まとめ
第3章 农地集积戦略と组织形态
1. はじめに
2. 圃场情报を用いた大规模経営の农地集积条件の推计
3. 大规模経営の农地集积戦略の事例分析
4. 考察
5. まとめ
第4章 机械の利用効率と组织形态
1. はじめに
2. 组织形态と机械の稼働効率:福井県内における実証分析
3. 机械稼働効率の実态:国内9経営の比较
4. まとめ
第5章 作业の季节性と労働条件
1. はじめに
2. 分析方法
3. 分析结果
4. 考察
5.まとめ
第6章 従业员の职务満足とステークホルダー?マネジメント
1. はじめに
2. 分析方法
3. 分析结果
4. 考察
5. まとめ
第7章 中山间地域における付加価値分配と持続性
1. はじめに
2. 分析方法
3. 当初时点(2007年)の分析结果
4. 追跡调査(2022年)时点の実态
5. 考察
6. まとめ
第8章 中山间地域における农地集积と小规模农家との関係
1. はじめに
2. 集落営农による条件不利圃场保全の评価
3. 畦畔管理を通じた小规模农家による集落営农法人の补完効果
4. 长期的推移を踏まえた考察
5. まとめ
第9章 中山間地域での高食味米生産における篤農技术
1. はじめに
2. 分析方法
3. 高食味米生产を规定する立地?経営要因
4. 高食味米生産における篤農技术
5. 考察
6. まとめ
补论 高食味仕分けによる差别化戦略の可能性
第10章 これからの水田経営の戦略と组织
1. 水田农业経営の戦略と组织
2. 水田农业経営の展望
関连情报
農業経営学および農村計画学,とくに農業経営の戦略と組織,経営計画,都市?農村地域のグランドデザインを専門としている。著書に『土地利用計画論 - 農業経営学からのアプローチ』(2005年),『イギリスの地域農業マネジメント』(2009年)『都市農業経営論』(2020年) など。2010年に,2022年にを受赏。
受赏:
日本农业経営学会赏「学术赏」受赏 (日本农业経営学会 2023年)
関连记事:
大会講演: 都市化社会における農業経営の戦略と組織
―水田経営のステークホルダー対応に着目して― (『农林业问题研究』59巻1号 2023年3月25日)
報告論文: 金 東律, 八木 洋憲, 木南 章
水田経営の情报化が组织内の作业调整に与える影响
农业経営情报システムの导入事例における継続的调査より (『农林业问题研究』60巻3号辫.21-26 2022年10月25日)
Dongyool Kim, Hironori Yagi, Akira Kiminami
Exploring information uses for the successful implementation of farm management information system: A case study on a paddy rice farm enterprise in Japan (『Smart Agricultural Technology』Volume 3 2023年2月)
RESEARCH ARTICLE: Hironori Yagi and Tsuneo Hayashi
Working conditions and labor flexibility in non-family farms: weather-based labor management by Japanese paddy rice corporations (『International Food and Agribusiness Management Review』24(2), pp.249-266 2021年3月9日)
RESEARCH ARTICLE: Hironori Yagi and Tsuneo Hayashi
Machinery utilization and management organization in Japanese rice farms: Comparison of single-family, multifamily, and community farms (『Agribusiness』Volume 37, Issue 2, pp.393-408 2020年8月14日)
シンポジウム:
第72回地域农林経済学会大会
「农林业问题研究への多様な接近-地域资源の発掘と持続的利用-:都市と农村における混在化した地域资源に注目して」 (地域农林経済学会 2022年10月22日)