岩波新书 古代ギリシアの民主政
およそ二五〇〇年前、古代ギリシアに生まれた民主政。顺ぐりに支配し、支配されるという人类史にかつてない政体は、いかにして考え出され、実施されたのか。公共性に一人ひとりが平等にあずかり、分かちあうことを基本にして古代の民主政を积み重ねた人びとの歴史的経験は、いまを生きる私たちの世界とつながっている。
本书は本学文学部での特殊讲义をもとに、古代ギリシアに民主政という政治スタイルがどのようにして诞生し、どのようなメカニズムによって机能し、どのような経纬をたどったのかを、最新の研究动向を反映させ、また一次史料をも绍介しながら、初学者にもわかりやすく物语ったものである。ローマの征服によって消灭した后、古代ギリシアの民主政が一贯して众愚政治の烙印を押され、否定的な评価を受け近代に至り、それが今日の日本の世界史教科书にも色浓く影を落としているのは、どのような歴史的経纬によるものかをも论じる。その意味で、本书はたんなる古代ギリシア史の概説书としてではなく、民主主义の问题を古代にさかのぼった视点から捉え直す问题提起として読むことが出来よう。
民主政は、ポリスと呼ばれる古代ギリシア固有の都市国家に誕生したが、それは全体の三分の一程度にとどまり、それ以外のポリスは最後まで貴族政 (寡頭政) か僭主政 (独裁政) のいずれかであった。民主政がアテナイ (アテネ) ではじめて実現したのは、他国にくらべて例外的に広い領土と多くの住民を抱えた国家をいかに統合し、スタシス (内部抗争) に終止符を打って強国となるか、という現実的な課題への応答として、それがもっとも適合的な政体であったからである。ペロポネソス戦争中の政界の混乱と敗戦とは、のちにしばしば衆愚政治の典型事例として取り上げられたが、これは人口過密?大量死?飢餓といった極限状況に起因する例外的な現象であった。ペロポネソス戦争敗戦後、内戦の痛手から立ち直ったアテナイ市民は、ふたたび民主政という生き方をあらためて選び取り、以後前4世紀末に至るまで、アテナイ民主政はきわめて安定した支配を続けることとなった。
その後アテナイはマケドニアの支配下に置かれ、前322年に一旦は民主政を強制的に廃止させられたが、これは民主政が伝統的な生活様式となっていたアテナイ市民にとって到底容認できる事態ではなく、民主政の復活を目指して何度も蜂起し、断続的に民主政は続いていった。最終的にローマの属州となったあとも、彼らは「デモクラティア」の看板を下ろそうとはしなかった。民主政は滅亡したのではなく、歴史の闇の中に溶暗していった。近代民主政の本質は代議制 (代表制) にあるが、古代民主政は「あずかる」「分け持つ」、すなわち全員が何かの形で公共性に参加するということに本質がある。古代と現代との大きな差異を超えて、それは民主政の始原的な生命であり続ける。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 橋場 弦 / 2023)
本の目次
第1章 民主政の诞生
第2章 市民参加のメカニズム
第3章 试练と再生
第4章 民主政を生きる
第5章 成熟の时代
第6章 去りゆく民主政
おわりに 古代から现代へ
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