継続的契约の规范
本書は、同じ著者の『継続的売買の解消』(有斐阁、1994年)、『継続的取引の研究』(同、2000年) に続く、主としてその後20年間に公表された継続的契約に関する論稿を収録する論文集である。
本書第1編「継続的契約総論」は、6つの論稿を収める。中心となるのは、21世紀初めに行われた民法改正における継続的契約の処遇の検討である。日本においては、継続的契約に関する一般的規定を民法に置くことが検討されたが見送られ、2017年改正民法では、各種の継続的契約における規定が改正されたにとどまる。他方、2016年に改正されたフランス民法には、継続的契約に関する一般的規定が新設された。このような相違は、日仏2国間だけのことではない。各国の立法や国際的な諸契約原則において、継続的契約に関する規定の有無、それがある場合の規律の態様とその位置づけは、大きく異なっている。第1編の諸論稿は、継続的契约の规范の内容を検討するとともに、それに関する立法の多様性とその原因を考察する。
第2编「継続的契约の诸相」では、使用贷借、赁贷借、保証、雇用、银行预金という各种の継続的契约に関する具体的问题が検讨される。
第3编「契约と债务」は、継続的契约に限らない、各种の契约や债権债务関係に関する5つの论稿を収める。売买の多様性と本质、债権者平等の原则、共同型の债権债务などが论じられる。
第1作品である『継続的売买の解消』では、着者は、全体としての契约があるか否かを问わず、同じ当事者间で継続してきた売买が一方的に打ち切られる场合について検讨した。全体を包摂する契约の存否、それがある场合とない场合のそれぞれにおける解消者の责任が関心の対象である。それは当时の日本における取引実态を反映する问题でもあった。アメリカの学説の提唱する関係的契约论も参照しつつ、本书は、信义则により补完された伝统的契约法にとどまる。
そのころから、商取引において、取引基本契约书などの契约书を作成し、当事者の义务、契约期间、终了事由などを精緻に规定する実务が急速に広まった。そこで、発达しつつある契约の内容と构造、及び、そのような契约を生み出す継続的取引の実态に関心が向かった。第2作品『継続的取引の研究』では、取引実态と契约との関係を考察するとともに、契约构造の分析方法としてフランスとドイツの「枠契约」の概念を検讨した。
その後の20年余に、国内外で契約法?債権法について大きな法改正があった。第3作品である本書は、継続的契约の规范の内容の検討を続けるとともに、これに関する立法例の相違の原因についても考察を広げるものである。
本书を含む3作品は、継続的契约という不明确な概念に対して、さまざまな角度から検讨することにより问题の全体像を浮かび上がらせたうえ、継続的契约において问题となる诸価値の分析、それを适切に规律するための契约の构造と内容の考察、これに関する各国の制定法の相违の理由の考察を表すことを试みるものである。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 名誉教授 中田 裕康 / 2023)
本の目次
第1章 継続的契约関係の解消
第2章 継続的契約 ―― 日仏民法改正の対照
第3章 フランス民法改正案における継続的契约
第4章 永久契约の禁止
第5章 契约における更新
第6章 継続的取引における时の流れ
第2编 継続的契约の诸相
第7章 使用贷借の当事者の破产
第8章 不动产赁借人の保証人の责任
第9章 将来の不动产赁料债権の把握
第10章 契约解消としての解雇
第11章 银行による普通预金の取引停止?口座解约
第3编 契约と债务
第12章 売買 ―― 売買の多様性とその本質
第13章 消费者契约法と信义则论
第14章 債権者平等の原則の意義 ―― 債権者の平等と債権の平等性
第15章 共同型の债権债务について
第16章 共同相続された預金債権の法律関係 ―― 普通預金債権を中心に