ちくま新书 縄文と世界遗产 人类史における普遍的価値を问う
2021年7月、「北海道?北东北の縄文遗跡群」が世界遗产一覧表に记载されることが决まった。本书のメインテーマは、世界遗产というフィルターをとおして「縄文文化」像の描かれ方を探ることである。この遗跡群には着名な青森県叁内丸山遗跡が含まれるものの、世界遗产の対象となったのは北日本に所在する17箇所の国指定史跡であった。本书は、なぜ限られた地域の遗跡群が世界遗产に选ばれることになったのか、さらに「縄文文化」概念の人类史における位置付けを読み解く试みである。
第1章では、「縄文文化」がどのように形作られた概念なのかを考える。一般に「縄文」は、日本列岛全域に広がる均质な文化として理解されてきた。しかし「縄文文化」の研究史を振り返ると、「縄文土器」概念と同一视されていった経纬や、海外の研究者からは考古学的「文化」の集合体として捉えられていたことがわかる。数多くの土器型式が示すように、「縄文文化」には地域的多様性のほかに复层性が含意されているのである。
第2章では、「北海道?北東北の縄文遺跡群」の世界遺産としての特徴を明らかにする。1990年代前半ころまで世界遺産に選ばれていた先史遺跡は、洞窟絵画などの芸术性の高い遺跡やモニュメント的な性格を持つものが多くを占めていた。世界遺産の総数が増えた今日でも、世界遺産一覧表には先史遺跡が少なく、その中で地下遺構を主体とするケースはほとんどないのである。この2つの条件を満たし、かつ狩猟採集民が残した縄文遺跡群は極めて稀なタイプの世界遺産といえよう。
第3章では他の世界遗产との比较を通じて、縄文遗跡群の特徴を浮き彫りにする。西アジア、ヨーロッパ、北米?南米および东アジアから类似资产を选び、その年代や特徴について比较を行った。その结果、狩猟採集民が残した世界遗产はいずれもモニュメントであるため縄文遗跡群とは区别されることと、多くの世界遗产が考古学的「文化」を単位として推荐されていることが明らかになった。それらの「文化」の范囲は限られており、新石器时代などのより大きな単位を代表している訳ではない。言い换えれば、そのような概念を単位として世界遗产に推荐された先史遗跡は见られないことが重要である。
第4章では「北海道?北东北の縄文遗跡群」の普遍的価値について论じる。「縄文文化」はもともと大陆の新石器时代に相当するものとされてきたが、农耕と牧畜をセットにした古典的定义には当てはまらない。また新石器时代に入っても狩猟採集が続く地域も世界各地で确认されており、日本列岛もその一つとして位置付けられる。一方「縄文文化」は一つの考古学的「文化」と呼ぶには広范な概念であり、多様性と复层性をもっている。その中で「北海道?北东北の縄文遗跡群」には、津軽海峡を挟んだ长期间におよぶ文化交流が认められる点と、縄文时代の末期に至るまで农耕が波及しないという点に、普遍的価値があると考えられる。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 根岸 洋 / 2023)
本の目次
1 问题の所在
2 縄文遗跡群と世界遗产
3 「縄文文化」を考える
4 「縄文文化」論に向けて
第2章 先史遗跡と世界遗产
1 世界遗产のイメージ
2 世界遗产に选ばれるまでのプロセス
3 先史时代の遗跡を世界遗产にするということ
4 地下遗构と世界遗产
5 縄文遗跡群と景観
6 考古遗物と世界遗产
第3章 世界の先史时代との比较
1 比较の视点
2 世界遗产一覧表における縄文遗跡群
3 西アジアとの比较
4 ヨーロッパとの比较
5 アメリカとの比较
6 东アジアとの比较
第4章 縄文遗跡群と「縄文文化」
1 世界遗产と文化多様性
2 「縄文文化」の複層性と多様性
3 「北海道?北東北の縄文遺跡群」
4 过去の文化への眼差し
あとがき
関连情报
东奥日报 2022年7月14日
読売新闻 2022年5月22日
秋田魁新报 2022年5月22日
北日本新闻 2022年5月14日