航空経済纷争と国际法
海洋法は国际法学においては人気があるが、国际航空法はまったくといってよいほど人気のない分野である。しかしながら、航空机は多くの人々にとって船舶よりもはるかに身近な交通手段である。そして、国际民间航空输送は、国家の利益とエアラインの利益が复雑に络み合い、また経済と安全保障が错综する非常に面白い主题であり、グローバル化の缩図ともいえるものである。
航空?空港ファンでもある私は、1990年代から国际航空法をめぐる诸课题の検讨をすすめ、相当数の论文を発表してきた。本书は、それらのうち、経済的纷争に関连するものを中心とした10の邦语论文を収録したものである。
1980-90年代の日米航空紛争は我が国にとって二国間航空協定の解釈?適用をめぐる最大の紛争であったといえる (I)。オーストラリアの公文書をフォローすることにより、日米間の航空紛争と似た構造を有する豪米間の航空紛争をフォローすることができた (VII)。
米国は1990年代からopen skyを強力にすすめてきたが、競争力に優れたUAEやカタールのエアラインに市場を奪われることを懸念した米国のエアラインはopen skyならぬfair skyを主唱するようになり、また欧州のLCCの乗り入れに反対した (II 及びVII)。
ソ連?ロシアは国際法上の根拠がないにもかかわらず、日本や欧州のエアラインに多額のシベリア上通過料を要求し、日本や欧州のエアラインは「背に腹は代えられぬ」と泣く泣くアエロフロートに上空通料を支払ってきた (III)。
航空協定の解釈?適用をめぐる国際仲裁裁定はこれまで5つある (1963年の米仏仲裁、1965年の米伊仲裁、1978年の米仏仲裁、1981年のベルギー?アイルランド仲裁、1992年の米英仲裁)。国際航空法にとってはもとより、国際法全般にとっても重要な判断がなされている (V,VI及びVIII)。
湾岸戦争時には、英米同盟の裏側で、意外なことにヒースロー空港への乗り入れ権の継承をめぐって英米は激しく対立していた (VIII)。パリやミラノといった大都市における複数空港間での輸送配分にも国際法がかかわっている (IX)。
ポストコロナにおける国際航空輸送体制は不透明であるが、最先端の航空協定として注目されるのはカタール?EU航空協定である。ロシアのウクライナ侵略のような現状に鑑みると、航空協定にも安全保障のための例外条項をおく必要があるかもしれない (X)。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 中谷 和弘 / 2022)
本の目次
1 はじめに
2 日米航空纷争の経纬
3 航空协定における输送力条项
4 日米航空协定の解釈问题
础 日米航空协定の「不平等性」
叠 日米航空协定第12条の解釈问题
5 纷争解决の诸方式
6 国际民间航空输送体制と日米航空関係
A WTO (世界貿易機関) サービス貿易協定航空運送サービスに関する附属書
叠 国际民间航空输送の特徴
颁 日米航空関係の将来像
II 国际民间航空输送における自由と规制――国际法の観点から
1 はじめに
2 国际民间航空输送と「空の自由」に関する国际法ルール
3 「湾岸エアライン」対「米国エアライン」
4 Norwegian Air Internationalの米国乗り入れ問題
5 省 察
III シベリア上空通过料と国际法
1 はじめに
2 シベリア上空通过料の実态
3 国际民间航空条约,国际航空业务通过协定,航行援助施设利用料とシベリア上空通过料
4 日ソ航空协定とシベリア上空通过料
5 ロシアの奥罢翱加入问题とシベリア上空通过料廃止合意
6 2014年以降の状况
7 省察
IV カタール危机と国际输送
1 はじめに
2 カタールに対する外交関係断絶
3 航空输送の规则
4 海上输送の规制
V 国际航空输送の経済的侧面に関する国际裁判
1 はじめに
2 国际航空输送と国际裁判
3 航空协定の解釈?适用に関する国际仲裁裁判
A 米仏航空協定事件 (1963年12月22日仲裁判決)
B 米伊航空協定事件 (1965年7月17日仲裁判決)
C 米仏航空協定事件 (1978年12月9日仲裁判決)
D ベルギー?アイルランド航空協定事件 (1981年7月17日仲裁判決)
E 米英航空協定事件 (1992年11月30日仲裁判決)
4 まとめにかえて
VI 过剰输送力を减少させたベルギー?アイルランド航空协定仲裁裁定
1 はじめに
2 事案の概要と仲裁廷の设置
3 仲裁裁定の内容
4 省察
VII 2つの幻の国际航空仲裁
1 はじめに
2 幻の豪米航空仲裁と输送力条项
A 事案の概要
B 省 察
3 幻の贰鲍米航空仲裁と労働条项
A 事案の概要
B 省 察
4 まとめにかえて
VIII 叠别谤尘耻诲补2の下でのヒースロー空港に関する2つの米英间の事案をめぐる国际法と外交
1 はじめに
2 ヒースロー空港に乗り入れる権利の継承をめぐる外交交渉
3 ヒースロー空港の使用料をめぐる仲裁
4 おわりに
IX 大都市圏における复数空港间での航空输送配分と国际法――欧州共同体における事案を参考にして
1 はじめに
2 欧州共同体理事会规则2408/92
3 パリ空港システム内での输送配分をめぐる事案
A Viva Airの申立に関する1993年5月28日欧州委員会決定
叠 罢础罢の申立に関する1994年4月27日欧州委员会决定
颁 英国による申立てに関する1995年3月14日欧州委员会决定
4 ミラノ空港システム内での输送配分をめぐる事案
础 1998年9月16日欧州委员会决定
叠 2000年12月21日欧州委员会决定
颁 2001年1月18日欧州司法裁判所判决
5 若干の考察
础 欧州委员会,欧州司法裁判所の判断の评価
B シカゴ条約15条の解釈とperimeter rule
X ポストコロナにおける国际民间航空输送ルールの変容の可能性
1 はじめに
2 颁翱痴滨顿-19と国际民间航空输送ルール
3 二国间航空协定に例外条项は不要か
4 输送力条项と国籍条项はどうなるか
5 多国籍エアラインの「復活」の可能性はあるか
6 多数国间航空协定の可能性
7 米中间及び米ロ间における国际民间航空输送をめぐる纷争の可能性
8 おわりにかえて