日本思想史の现在と未来 対立と调和
本書は、日本思想史学会が2018年に50周年を迎えたのを記念して刊行された論集である。この学会の会長を連続して務めた二人、前田勉 (愛知県立大学名誉教授) と苅部直 (東京大学法学部教授) とが共編者として、9本の論文を集めている。9本は、いずれも日本思想史学会において研究の最前線を担っている、中堅?若手の研究者によるものである。
日本思想史学会が1968年に発足したとき、中心となった研究者は、主として东北大学の日本思想史、京都大学?同志社大学の日本文化史の学问系统に属していた。そこに、歴史学?伦理学?宗教学?政治学?社会学といった诸分野の思想史研究者を加えて、この学会は活动を続けてきた。その50年间の达成をふりかえり、今后にいかなる方向がありうるかを、それぞれの専门分野から语った论文を、本书は収めている。この学会の2017年度?2018年度の研究大会におけるシンポジウムでの诸报告が、各论文の原型となっている。
第滨部は「现在と未来」と题して、古代?中世?近世?近代という四つの时代区分について、最新の研究成果に基づきながら再検讨する论文を集めている。自分の生きてきた社会の歴史をふりかえり、同时代の社会と人间のありようを考察することは、どの时代においても思想の重要な営みとなっている。现在の学界で通用している四时代の区分もまた、近代のある时点において、特定の関心に基づいて歴史を整理して概観するために、编み出されたものである。したがって、古代から中世、中世から近世、近世から近代への転换期を见なされている时代において、実际に人々がどのように歴史の変化をとらえていたかを再认识することを通じて、従来の思想史像を刷新することができるだろう。そうした见通しに基づいた研究を収めている。
第II部は「対立と调和」と題して、近年になって注目されてきた研究主題のうち、日本思想史という学問分野を、その外にむかって切り開くような三つのテーマを扱った論文を集めている。すなわち「宗教と社会」「東アジアと日本」「日本思想とジェンダー」である。世俗の社会と「聖なるもの」の関係、東アジアという環境のなかでの日本の意味づけ、思想史におけるジェンダー問題への問い。こうした問題群は、もちろん以前から研究されてきたものではあるが、近年になってその重要性が改めて認識され、多くの著書や論文が刊行されている。そうした研究の最新現場からの報告集である。
本书は第滨部?第滨滨部の全体を通じて、日本思想史とはいかなる学问なのか、现在、その最新の动向はどうなっているのかを知るために、必読の文献になっていると言えるだろう。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 苅部 直 / 2022)
本の目次
I 现在と未来
◆近世から近代へ
思想史研究を时代区分から救い出すには=松田宏一郎
◆中世から近世へ
道元の时间论から见た卍山道白における「復古」について=赖住光子
◆古代から中世へ
生身仏の時代――『三宝絵』の行基像をめぐって――=冨樫 進
II 対立と调和
◆宗教と社会1
民衆宗教、あるいは帝国のマイノリティ=永岡 崇
◆宗教と社会2
幕末期における宗教言説の展开――僧?龙温の自他认识をめぐって――=オリオン?クラウタウ
◆东アジアと日本1
兰学と西洋兵学――比较と连锁の政治思想史――=大久保健晴
◆东アジアと日本2
漢籍の訓読から儒教儀礼へ――舶載された知の受容と多様な思想展開――=田 世民
◆日本思想とジェンダー1
史学思想史としての「女性史」――「ジェンダー」という问い――=长志珠絵
◆日本思想とジェンダー2
神道における女性観の形成――日本思想史の问题として――=小平美香
あとがき=苅部 直