基点としての戦后 政治思想史と现代
近代?现代の日本における政治思想を扱った文章を集めた论文集である。もっとも时代の古い思想としては福泽諭吉を扱い、もっとも新しいテーマとしては2015年の安保法制に関する论争や、2016年の天皇の退位宣言をめぐる动向を论じた文章を収めている。
この分野になじみのない読者は、第5章「游覧?もうひとつの现代史」から読み始めるのがいいかもしれない。主に东京周辺の地域に関する、歴史纪行の短い文章を集めたものであるが、现在の风景からさかのぼって、过去の时代のようすを想像するやり方にふれることで、この本に収められた思想史研究の论文を理解しやすくなるだろう。第滨滨部「思想史の空间」には、福泽諭吉?吉野作造?和辻哲郎といった有名な思想家に関する、いわばオーソドックスな手法の思想史研究の论文が収められている。
そして第滨滨部の后半には皇室制度をめぐる研究?评论があり、第滨滨滨部には戦后の平和思想の歴史と、现代における集団的自卫権をめぐる论考を収めている。いずれも现在における最新の政治上のトピックスを、思想史の展开のなかに位置づけ、新しい角度から再検讨しようと试みた仕事である。
以上とりあげたものに比べると、第滨部「政治とフィクション」は、政治のいわば原理をめぐる考察に、より近い文章を集めたものと言ってよいだろう。近现代日本の思想に限らず、およそ政治思想に特有の思考様式を伝えたいと考えながら书いた文章が、第滨部には収録されている。この诸论文は、近现代の日本の思想に兴味のある読者、いま直面する政治问题について、表面的な解説で満足するのではなく、原理にさかのぼって考えたい。そう考えている読者に、気に入っていただけるのではないかと思われる。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 苅部 直 / 2020)
本の目次
第1章 政治と非政治
第2章 フィクションと自由――伊藤整における「近代日本」への問い
第3章 「遊び」とデモクラシー ――南原繁と丸山眞男の大学教育論
第4章 技术?美?政治――三木清と中井正一
第滨滨部 思想史の空间
第5章 遊覧?もうひとつの現代史
第6章 福澤諭吉における「公徳」――『文明論之概略』第6章をめぐって
第7章 「憲政の本義」の百年――吉野作造デモクラシー論集によせて
第8章 二十世紀の『論語』――和辻哲郎『孔子』をめぐる考察
第9章 日本の思想と憲法――皇室制度をめぐって
第10章 「象徴」はどこへゆくのか
補論 「象徴天皇」宣言の波紋
第滨滨滨部 世界のなかの戦后日本
第11章 戦後の平和思想と憲法
第12章 「国连中心主义」の起源――国际连合と横田喜叁郎
第13章 「现実主义者」の诞生――高坂正尧の出発
第14章 未完の対论――坂本义和?高坂正尧论争を読む
第15章 「右倾化」のまぼろしーー现代日本にみる国际主义と排外主义
関连情报
新著の余録 苅部直さん 「基点としての戦后」 国際社会での行動原則を (中部経済新聞 2020年5月9日)
『基点としての戦后 政治思想史と现代』苅部直 著 (産経新聞 THE SANKEI NEWS 2020年4月19日)
中沢孝夫 (福井県立大学名誉教授) 評「戦後の言論を総点検した労作、時を経ても輝く論客は?」 (週刊東洋経済 2020年4月18日)