大日本古文书 家わけ第二十二 益田家文书之五
『大日本古文书 家わけ第二十二 益田家文书之五』は、『大日本古文书』として刊行されている、武家文書を対象とした史料集の一冊です。
益田家文書は、萩藩毛利家の永代家老益田家に伝来した文書で、総数1万8千点余りありますが、『大日本古文书』では、そのうち江戸時代の益田家で整理され巻子などにまとめられた、百十七軸の「益田家什書」と呼ばれる部分を编纂対象としています。近世益田家にとっては、毛利家に従う以前、石見国西部、現在の島根県益田市を中心とした地域の有力な武家として、大内氏や室町幕府とも深く関係し活躍した中世文書の時代は、家独自の歴史を誇るうえで重要な時代でした。したがって「益田家什書」には八百点余りある中世文書はすべて含まれています。同時に、益田家にとって家存続の危機ともいえる、大内氏滅亡後から毛利家家臣となり近世の体制のなかで安定した地位を獲得するまでの時代、益田元祥という当主に代表される時代も、やはり重要な時期として「益田家什書」に文書がすべて収載されています。
このように『大日本古文书』では、史料に対する伝来組織の認識?視点を重視し、原則として伝来のまとまりに従って史料编纂を行っています。もちろん歴史研究のうえでは、编年順などで史料を見ていく必要もありますので、史料编纂所では日本古文書ユニオンカタログ?古文書フルテキストという2つのデータベースを公開し()、以前は难しかった史料群を复眼的に见ることも容易となるよう工夫しています。
さて、益田家文书は本册によって中世文书のすべてが刊行されたことになります。そこで五册の史料集全体にわたる中世益田家文书の魅力をいうなら、中世地方武士の世界を多面的に示すということでしょう。近畿地方の大寺社には多くの中世文书が残っていますが、武家に伝来した中世武家文书となると、それほど多いとはいえません。そのなかで益田家文书は、いわゆる山阴地方の中世文书として屈指の质量を夸るものです。石见国の大田文など鎌仓时代の重要史料を伝える以外にも、15?16世纪の史料が特に豊富で、大内氏に従った二度の上洛时の室町幕府関係者からの书状类、一族?近隣武家同士の一揆契状群など、他に类例をみない史料が残っています。益田氏は、南北朝期に所领安堵に必须の証拠书类原本をほとんど失い、かろうじて写しによって室町幕府の安堵を得たという経験を持つためか、文书を捨てない、所领に関係する文书を集める、という原则をその后彻底していたようです。その结果、とても珍しい史料を残している点がその魅力で、益田氏自身の文书のみならず、石见地方の中小武家に関する鎌仓时代の文书も含まれています。少々难しい点はありますが、中世武家文书の世界を垣间见ることができるでしょう。
(紹介文執筆者: 史料编纂所 名誉教授 久留島 典子 / 2021)
本の目次
九一七 永和贰年卯月廿二日 石见国益田本郷年贡幷田数目録帐
〔第八十一〕
九一八 和贰年卯月廿二日 石见国益田本郷田数年贡目録帐
〔第八十二〕
九一九 (年未详)卯月一日 山名氏奉行人连署奉书
九二〇 (年未详)卯月廿日 下瀬頼家书状
(中略)
〔第九十叁〕
一〇七五 戌(正保叁年カ)卯月廿八日 无庵&濒迟;益田元尧&驳迟;笔牛庵&濒迟;益田元祥&驳迟;一代奉公覚书
补遗
〔第百十二〕
一〇七六 寛永拾贰年七月一日 牛庵&濒迟;益田元祥&驳迟;起请文
関连情报
所報 - 刊行物紹介
大日本古文书 家わけ第二十二 益田家文书之五 (『東京大学史料编纂所報』第56号 2021年10月31日)
関连记事:
中世史解明のための史料集を発刊=岛根県益田市 (时事ドットコムニュース 2016年11月30日)