史学会シンポジウム丛书 日本古代律令制と中国文明
律令制研究は、日本古代の国家のあり方を考えるうえで根本となる研究である。史学会では、1991年以来、过去に律令制をめぐって叁回の企画をたててきたが、この间、寧波天一阁で北宋天圣令が発见されたこともあり、日唐律令制の比较研究は新段阶を迎えることになった。2019年11月、第117回史学会大会古代史部会で12年ぶりのシンポジウム「日本律令制と中国文明」を企画したが、北宋天圣令を用いての律令比较研究に限定せず、中国あるいは隋唐文明の影响、文物の输入までふくめ、异なる学统の研究者にも参加を求め、広い视野で日本律令制の意义を考えることをめざした。市大树?古田一史?山下洋平?榎本淳一の四名が报告し、坂上康俊がコメントを、武井纪子が司会を担当した。本书は、そのシンポジウムの报告を中心に、さらに会场でシンポに参加した科研费研究会のメンバーに寄稿を求めて编んだもので、律令制研究の最新の成果といえる。
第1部「古代律令制の探究」は、日唐の律令条文の比较を通じて、律令制の特徴を论じた论考をおさめる。古代宫都の门での人?物の通行规制制度である门籍制?门牓制の比较検讨を通じて、日本の王宫が天皇の私的空间であることを明らかにしたほか、国家による造営を规定する営缮令、动物の管理を规定する厩牧令から日唐の违いを明らかにしている。また赋役令の规定をもとに、税目と税额を周知させる「牓示」について、唐宋と古代日本での机能の违いを论じている。
第2部「中国礼法と日本律令制」は、唐の诸制度や史料を分析し、日本の特色を考察する论考をおさめる。北朝から唐への皇帝への服丧のあり方と日本での天皇への葬礼の违いから官僚制のあり方を论じ、また唐宋间の道僧籍编造の制度の変迁をおって、天圣令にもとづく唐令復原の问题点を指摘している。さらに敦煌トルファンで発见された法典残巻の分析に基づき、唐と日本における格法典の特徴と相违を明らかにし、また日唐における文书処理を考え、延暦寺所蔵の最澄が交付された明州牒と台州公験の分析から、唐において文书が复合的な机能を持っていたことを论ずるなど、日本史?中国史の学问の枠组みを超え、大きな成果をあげている。
第3部「律令制の诸段阶と东アジア文明の受容」では、正仓院文书から百済や高句丽からの移民が奈良时代の写経所で多くの比率をしめていると指摘し、彼らの受け入れの具体像を解明し、わずかに逸文が残る『唐令私记』が大和长冈が唐に渡って永徽令に関する疑问を质した成果ではないかと推测するなど、东アジア文明の受容を考察する。また中国の学术の受容と法整备の関係から、浄御原律令?大宝律令?养老律令の诸段阶を位置づけ、さらに浄御原令の机能や体系性について基础的な研究を行ってその先进性を指摘するなど、古代律令制の形成过程の理解について大きな贡献を示している。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 大津 透 / 2021)
本の目次
I部 古代律令制の探究
1章 門籍制と門牓制をめぐる日唐比較試論……市 大樹
2章 日本営缮令と律令军制&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;古田一史
3章 日唐厩牧令の动物管理条文からみた地方行政&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;西本哲也
4章 唐日律令财政における牓示について――赋役令の税额周知规定を中心に&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;武井纪子
II部 中国礼法と日本律令制
5章 日中の臣下服丧?挙哀仪からみた律令官僚机构の一侧面&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;山下洋平
6章 唐令の復原と典拠史料――天聖雑令「造道士女冠僧尼籍」条を事例として……辻 正博
7章 日唐の格法典の编纂と体裁の特徴&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;坂上康俊
8章 日唐古文書学比較研究の一視点――文書処理を中心に……大津 透
III部 律令制の诸段阶と东アジア文明の受容
9章 古代の移民と奈良时代の文化――东大寺写経所の百済?高句丽移民&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;丸山裕美子
10章 『唐令私记』にみる唐文化受容の一様相&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;吉永匡史
11章 律令制における法と学术&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;榎本淳一
12章 飞鸟浄御原令の法的性格&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;叁谷芳幸
付章 〔雑記〕町代制と条里制……吉田 孝
関连情报
十川阳一 (『史学雑誌』130编第7号 2021年)
书评:
手嶋大侑 評 (『日本歴史』2022年4月号通巻887号 2022年4月1日)
兼田信一郎 評 (『唐代史研究』第24号 2021年8月)