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书籍名

动物の声、他者の声 日本戦后文学の伦理

着者名

判型など

394ページ、四六判

言语

日本语

発行年月日

2017年9月25日

ISBN コード

9784788515376

出版社

新曜社

出版社鲍搁尝

学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)

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日本は、「大東亜戦争」と呼称した侵略戦争の帰結として、東アジアと太平洋地域に、かつてない規模の殺戮と破壊をもたらした。戦後を生きる人びとに、この事実は大きな思想課題となってのしかかった。欧米において、ナチスのホロコーストの衝撃が、学問や芸术に対して過去のままであることを許さなかったのと同様に、この戦争の記憶は、人びとに分有され、それぞれの領域で暴力への根底的な内省を促したのである。
 
その中には、文学の创作を通じて、暴力の本质を问い、かつそれを克服するための伦理を见出そうと努めた者たちもいた。日本の文学史では、彼らの达成を「戦后文学」と呼んでいる。
 
しかし、私たちは、戦后文学の伦理を正しく受け止められているだろうか。彼らの文学の固有性と正面から向き合う代わりに、なじみやすい伦理を外部から当てはめ、満足してしまっているということはないだろうか。
 
ここで言う「なじみやすい伦理」とは、本书でしばしば批判的に検讨する「人间性?主体性の回復」というスローガンのことである。确かに日本が遂行した戦争は、交戦国のみならず、自国の人びとからも、人间の尊厳や、自由な主体性を剥夺し、残酷な死へと追いやる性格のものだった。それゆえに、人间性や主体性の回復が戦后思想の重要な课题とみなされたことは事実である。しかし、実际に戦后文学を読むとき、それらが人间性や主体性の回復を志向していると断言するのには、ためらいを覚えずにはいられない。
 
なぜならば、多くの戦後文学で描き出されているのは、人間の尊厳の名のもとに、それを持たないとみなされる存在を排除し、殺害していくような暴力だからである。この排除と殺害の対象には、しばしば動物の表象が与えられる。実際、「あいつらは人間ではない (動物と同じだ)」という物言いが、どれほどの暴力を発揮するのかという例を、私たちは戦後文学の至るところに発見できる。
 
ここでは、人间と动物の概念のあいだで転倒が生じていることが分かる。つまり、「人间」の尊厳を声高に叫ぶ者こそが、正视することが耐え难いような獣性を発挥し、「动物」として蔑视される弱者たちを容赦なく杀害していくのである。そうだとすれば、私たちにとって、「人间」とは何であり、「动物」とは何であるのか。まずは、この不分明な地帯にあえて立ち止まり、よく考えてみなければならないだろう。
 
本书は、このように戦后文学が追究しつつも、十分に认知されずにいた、人间と动物の境界をめぐる伦理について考察しようとするものである。対象とするのは、武田泰淳、大江健叁郎、小岛信夫の诸作品である。
 
戦后文学には、私たちに呼びかける动物の声が响いている。そして、自分が、あるいは自分の大切な存在が、いつ动物とみなされ、抹杀することさえ望まれるかもしれないという恐怖が现実味を帯びてしまう社会、そのような恐怖を駆动力としつつ、破绽的な未来へと突き进むかのような社会では、戦后文学の动物が呼びかける声は、より强く、切迫して、耳に届いてくるだろう。
 
人间の人间に対する暴力の乗り越えを希求する者にとって、戦后文学はいまもなお汲み尽せない源泉として存在している。

 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 村上 克尚 / 2020)

本の目次

はじめに
 
序 章 なぜ动物なのか?
 1 本书の目的
 2 近年の动物に関する哲学的考察
 3 动物の表象に関する文学研究
 4 戦后という时代
 5 作家の选定
 6 本书の构成
 
第一部 武田泰淳――国家の戦争と动物
 
第一章 「审判」――「自覚」の特権性を问う
 1 『司马迁』と『世界史の哲学』
 2 复数の声のフォーラム
 3 记録者の特権性と动物の主题
 4 「罪の自覚」というレトリック
 结论
 
第二章 『风媒花』――抵抗の复数性を求めて
 1 竹内好の国民文学论
 2 外部への架桥
 3 「混血」としての主体
 4 全知の语りへの抵抗
 结论
 
第叁章 「ひかりごけ」――「限界状况」の仮构性
 1 人间としての倨傲
 2 人肉食をめぐって
 3 「ひかりごけ」の构造
 4 国家と法-外なもの
 结论
 
第二部 大江健叁郎――动物を杀害する人间
 
第四章 「奇妙な仕事」――动物とファシズム
 1 先行批评の整理
 2 同时代状况から
 3 犬杀しの强制収容所
 4 アレゴリーから変身へ
 结论
 
第五章 「饲育」――言叶を夺われた动物
 1 动物小説としての「饲育」
 2 江藤淳の近代主义批评
 3 叁岛由纪夫の反近代主义批评
 4 「饲育」の新たな読みへ
 结论
 
第六章 「セヴンティーン」――ファシズムに抵抗する语り
 1 「セヴンティーン」の位置
 2 自意识の语りとねじれ
 3 人间?动物?獣
 4 《人间》の问い直しへ
 结论
 
第叁部 小岛信夫――家庭を搅乱する动物
 
第七章 「马」――戦后家庭の失调
 1 初期小岛作品の方法
 2 戦后の家庭机械
 3 马と家庭の失调
 4 「马」の政治性
   結論
 
第八章 『墓碑铭』――军事化の道程
 1 日本人になること
 2 军队と动物
 3 军队と家庭
 4 军事化を搅乱する
 结论
 
第九章 『抱拥家族』――クィア?ファミリーの诱惑
 1 『成熟と丧失』の背景
 2 クィア?ファミリーの诱惑
 3 军事化とその亀裂
 4 歓待と动物的他者
 结论
 
第四部 动物との共生へ
 
第十章 『富士』――狂気と动物
 1 动物と精神障害者
 2 「治疗」というイデオロギー
 3 精神障害者のアイデンティティ闘争
 4 治疗から分有へ
 结论
 
第十一章 『万延元年のフットボール』――傍らに寄り添う动物
 1 主体の解体の先で出会うもの
 2 鹰とネズミの构造的対立
 3 伤つきやすさと赦し
 4 沉黙の叫びを翻訳する
 结论
 
第十二章 『别れる理由』――马になる小説
 1 代偿行為としての姦通
 2 トロヤ戦争を解体する
 3 「马」の再演
 结论
 
终 章 非対称的な伦理
 1 戦后文学と动物
 2 动物への暴力を乗り越えるために
 3 今后の展望
 

関连情报

受赏:
文化庁 平成29年度 (第68回) 芸术選奨評論等部門 文部科学大臣新人賞

 
着者インタビュー:
村上克尚(芸术選奨新人賞) 人間との境目を考察 『动物の声、他者の声 日本戦后文学の伦理』 (『毎日新聞』 2018年4月7日)

 
书评:
小嶋知善 評 (『昭和文学研究』77号 2018年9月)

 
團野光晴 評 (『社会文学』48号、2018年8月)

 
佐藤泉 評 (『日本文学』67巻7号 2018年7月)

 
山田宗史 評 (『文藝と批評』12巻7号、2018年5月)
 
吉田司雄 評 (『日本近代文学』98 集 2018年5月)

 
书籍绍介:
佐藤泉、石原千秋「2017年下半期アンケート」 (『図书新闻』 2017年12月)

 
尾崎真理子「読书委员が选ぶ 2017年の3册」 (『读卖新闻』 2017年12月)
 
石原千秋「文芸时评」 (『产経新闻』2017年12月)

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