ヒスカルセレクション考古1 旧石器时代 日本文化のはじまり
本書は、日本列島の旧石器时代研究の到達点について、最新の研究成果に基づいて議論した単著である。
日本の歴史は旧石器时代に始まる。日本列島 (以下「列島」と表記) の旧石器时代の遺跡数は14,500に上り、世界的にも突出した数と密度をもつことから、寒冷な氷期であったにもかかわらず、遺跡が少ない周辺大陸に比べて生活しやすかったことを強く示唆している。当時の列島は今日の温暖?湿潤で安定した気候環境とは対照的に異なり、大陸性の不安定な寒冷?乾燥気候が支配する氷河時代に相当していたため、針葉樹林が卓越する植生が広大な地域に広がっていた。そのため古琉球諸島を除いては、植物食糧を安定して得ることは困難であり、人々はもっぱら動物狩猟を生業の柱に選択し、獣を求めて広域を遊動する移動生活を行っていた。
最古の旧石器文化についてはなおも議論が行われている最中であるが、少なくとも現生人類が列島に出現した後期旧石器时代 (38,000~16,000年前) になると、列島全体に旧石器文化が展開したことには異論がない。
氷期の寒冷気候により海面が大きく低下 (140~120m) したため、列島は三つの地理的単位から構成されていた。大陸と陸でつながった古北海道半島、本州?四国?九州がひとつの陸塊となった古本州島、陸域は拡大していたが島から構成されていた古琉球諸島である。この三つの地理的単位ごとに異なる旧石器文化が形成され、それが後期旧石器时代の二万年間継続したので、今日まで続くのちの三つの日本文化 (「北の文化」「中の文化」「南の文化」) を生み出す元となった。
古北海道半島は、大陸からの文化的影響を強く受け、後期旧石器时代後半期になるとマンモス動物群とそれを狩猟するために特に発達した細石刃技术を持った集団が、共にシベリア等の大陸から南下してきた。古本州島は、世界最古の陥し穴猟や局部磨製石斧、環状集落といった世界的に例をみない列島独自の旧石器文化が発達した。古本州島ではマンモス動物群は見られず、かわりに中国北部に起源をもつナウマンゾウ?オオツノシカ動物群が分布していた。そのため各種の尖頭形石器と台形様石器からなる狩猟具を用いた狩猟が行われた。古本州島では26,000年前頃になるとゾウや大型のシカのような大型動物が絶滅したため、狩猟対象がイノシシやニホンジカといった中小型獣に移行し、人々の行動範囲が縮小して地域集団が生まれるようになった。この地域集団は、今日の地域社会の淵源となった。
一方古琉球诸岛は、大型动物がいない小型动物からなる动物相をもち、落叶広叶树や常緑広叶树からなる植生が卓越していたため、狩猟に加えて植物採集も生业の一つになっていた。南西诸岛からなる北琉球は本州的な文化圏の影响を强く受けていたが、冲縄岛周辺の中琉球や先岛诸岛の南琉球では狩猟具が発达しない石器组成をもつことに特徴がある。古琉球诸岛の旧石器文化は、东南アジア等の南方系文化の北端を形成していたと思われる。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 佐藤 宏之 / 2020)
本の目次
第一章 旧石器时代の自然環境と人びと
氷期の地理的环境と気候
食粮资源の开発
现生人类のアジア拡散と列岛への叁つの渡来ルート
第二章 日本列岛の文化の形成
日本列岛の叁つの文化圏
古北海道半岛の旧石器文化
古本州岛の旧石器文化
古琉球诸岛の旧石器文化
第叁章 列岛独自の旧石器文化
环状集落と局部磨製石斧
世界最古の陥し穴猟
第四章 社会と生活
人类史と狩猟
游动の生活
第五章 旧石器时代から縄文時代へ
更新世末期
土器の出现と縄文时代のはじまり
おわりに
関连情报
旧石器発掘捏造 発覚から20年 研究体制、国际的に 科学性も上昇 佐藤宏之?日本旧石器学会会长 (毎日新闻 2020年10月22日)
STORY: 旧石器人の「謎の穴」から見えるのは? (NHKサイカルjournal 2018年6月15日)
インタビュアー: 鍾 以江 (东洋文化研究所) 佐藤宏之教授 (文学部?人文社会系研究科) へのインタビュー (国際総合日本学ネットワーク 2015年6月16日)
模拟讲义:
佐藤宏之「日本列島の人類文化の起源」 - 高校生のための東京大学オープンキャンパス2017 模擬講義 (東大TV 2017年8月3日)