地球温暖化交渉の真実 国益をかけた経済戦争
異常気象の頻発、グレタ?トウーンベリさんの学校ストライキ等、温暖化問題に対する関心が世界的に高まっています。国際的な温暖化防止の枠組みとしてパリ協定が2015年のCOP21 (第21回気候変動枠組条約締約国会合) で採択されましたが、温暖化問題に対する国際的な取り組みは1992年の気候変動枠組条約採択にまで遡ります。その後、1997年の京都議定書採択、2010年のカンクン合意採択と、パリ協定に至るまでには長い国際交渉の積み重ねがありました。
地球温暖化问题は人类起源の温室効果ガス排出に起因する世界レベルの外部不経済问题ですが、その解决は容易ではありません。温室効果ガス排出と経済活动は密接にリンクしており、ある国で温室効果ガスを削减しようとすれば必然的に経済コストがかかる一方、温室効果ガス削减の便益は地球全体で共有されることになります。これは必然的にフリーライダーを生みやすい构図となり、温室効果ガス削减负担を国际的に合意することは非常な困难を伴います。米国のブッシュ政権が2001年に京都议定书から离脱し、2017年にトランプ政権がパリ协定からの离脱を表明したのも米国と中国を初めとする途上国の间の削减负担のアンバランスを理由とするものでした。このように温暖化交渉は地球环境保全のための环境交渉であると同时に、各国の国益が炽烈にぶつかる経済交渉でもあります。圧倒的多数を占める途上国は地球温暖化をもたらした先进国の歴史的责任を追及し、先进国の重い削减义务と途上国への手厚い経済支援を要求します。他方、先进国は今后の排出量増大は途上国から発生するのだから、先进国も途上国も削减努力を行わねばならないと主张します。温暖化交渉の歴史は先进国と途上国の厳しい対立の歴史でもありました。
筆者は経産省時代に京都議定書に基づく市場メカニズムの細目ルールの交渉、京都議定書第1約束期間 (2008年~2012年) に続くポスト2012年の枠組交渉に交渉官として参加し、各国の利害の対立を経験しました。特に2010年のCOP16では京都議定書第2約束期間参加問題が大きなイシューとなり、日本政府を代表して「いかなる状況、条件の下でも京都議定書第2約束期間には参加しない」と表明する役割を担いました。これを含め、筆者のCOPへの参加はこれまで15回にのぼります。本書は2015年秋に出版されましたが、筆者のそれまでの温暖化交渉経験を踏まえ、パリ協定交渉に至るまでの交渉の流れと各局面において日本政府は何を目指して戦ってきたのか、COP21では何が交渉されるのか、日本としてどう臨むべきか等についての考え方を記しました。地球温暖化問題に関心を持つ方に是非お読みいただければと思います。
(紹介文執筆者: 公共政策大学院 教授 有馬 純 / 2020)
本の目次
第2章 温暖化交渉への参戦
第3章 米国の议定书离脱と苦い教训
第4章 ポスト议定书枠组交渉の胎动とバリ行动计画
第5章 碍笔の首席交渉官に
第6章 二度の中期目标発表とコペンハーゲンへの道のり
第7章 颁翱笔15の失败とコペンハーゲン合意
第8章 カンクンへの道のり
第9章 颁翱笔16と第二约束期间との决别
第10章 温暖化交渉はなぜ难航するのか
第11章 「环境先进国」贰鲍の苦悩
第12章 ポスト2020年枠组交渉の开始
第13章 颁翱笔21で何が争われるのか
第14章 温暖化交渉に日本はどう临むべきか