精神论抜きの地球温暖化対策 パリ协定とその后
2015年のCOP21 (第21回気候変動枠組条約締約国会合) においてパリ協定が採択されました。1992年に署名された気候変動枠組条約から23年が経過し、その間、地球温暖化問題に対する国際的枠組みも進化を遂げてきました。1997年に採択された京都議定書は先進国のみが削減目標を義務付ける片務的なものであり、この結果米国の離脱を招く一方、中国等の新興国の排出量急増もあいまって地球温暖化防止にはほとんど効果がありませんでした。こうした反省に立って京都議定書第1約束期間 (2008年~2012年) 終了後、2020年までの枠組としてカンクン合意が2010年に成立しました。これは先進国、途上国が温室効果ガス削減?抑制目標を策定する全員参加型の枠組みであり、それまでの先進国?途上国二分法に基づく京都議定書からの歴史的転換となりました。しかしカンクン合意は2020年までの枠組であることから、2011年から2020年以降の枠組みの交渉が始まり、熾烈な国際交渉を経て2015年のパリ協定採択に到ります。カンクン合意と同様、パリ協定も先進国、途上国を問わず温室効果ガスの削減?抑制のための目標を設定するという全員参加型の枠組となりました。しかしパリ協定の採択をもって地球温暖化交渉が妥結したわけではありません。パリ協定を実際に動かすためには多くの具体的なルールや手続きを決めねばなりません。このためパリ協定採択後も詳細ルール交渉が続くことになります。
本书は2015年に出版した「地球温暖化交渉の真実 - 国益をかけた経済戦争」(中央公論新社) の続编ともいうべきものであり、パリ协定ができるまでの交渉経纬、パリ协定の逐条解説と今后の详细ルール交渉に関わる论点、パリ协定の评価と世界の脱炭素化に向けた见通しについて记述しました。
また京都議定書では日本、米国、EUの削減目標数値が法的義務になったのに対し、パリ協定交渉では各国の目標設定、報告、レビュー、改定というプロセスが法的義務焦点となりました。このため目標設定とそのための施策は国内政策上の課題となります。本書では2030年に2013年比26%減という日本の温室効果ガス削減目標の評価、削減目標の裏づけとなるエネルギーミックスにおける原子力の位置づけ、炭素税?排出量取引といった炭素価格に関する考え方、長期の革新的技术開発の役割等、パリ協定の下での国内対策についても論じています。
「地球温暖化交渉の真実」と併せ、地球温暖化问题に関心をもつ方にご一読いただきたいと思います。
(紹介文執筆者: 公共政策大学院 教授 有馬 純 / 2019)
本の目次
第1章 颁翱笔21への长い道のり
気候変动枠组条约の採択
京都议定书の採択
ポスト2013年交渉の开始
カンクン合意の成立
ポスト2020年交渉の开始
第2章 颁翱笔21に向けての争点
地球温暖化交渉の难しさ
多様な交渉グループの存在
争点1: 約束草案に法的拘束力を持たせるのか
争点2: 長期目標をどう書き込むか
争点3: 「共通だが差異のある責任」をどう反映させるか
争点4: 透明性フレームワークに差異化を持ち込むか
争点5: 市場メカニズムを盛り込むか
争点6: 資金援助の主体を先進国のみとするのか
争点7: 途上国への定量的資金援助目標を定めるか
争点8: ロス&ダメージを含めるか
第3章 颁翱笔21はどう进んだのか
颁翱笔21の会场はこんなところ
交渉テキストの状况
パリ委员会の设置と阁僚レベルファシリテーターの任命
议长テキストの主要な争点
议长最终案の提示とパリ协定の採択
第4章 颁翱笔21はなぜ成功したのか
米国、中国の前向き姿势
议长国フランスの不退転の决意
合意を欲した途上国
国连プロセスの信頼确保
京都议定书ファクターの不在
フランスの会议运営の巧みさ
交渉官も人の子
第5章 パリ协定で何が决まったのか
パリ协定のエッセンス
パリ協定の目的 (第2条)
緩和 (第4条)
市場メカニズム等 (第6条)
ロス&ダメージ (第8条)
資金援助 (第9条)
技术開発?移転 (第10条)
透明性 (第13条)
グローバルストックテーク
発効要件
番外: 高効率石炭火力技术の輸出をめぐって
第6章 パリ协定をどう评価するか
すべての国が参加する枠组みの成立
现実的なボトムアップ型のプレッジ&补尘辫;レビュー
プレッジ&补尘辫;レビューの実効性は今后の设计次第
日本の優れた技术の海外普及を
长持ちする枠组み
全体としてはやや途上国寄り
野心的な温度目标は将来の火种に
大幅削減のカギは革新的技术開発
科学の不确実性を直视せよ
第7章 世界は脱炭素化に向かうのか
脱炭素化に向かうことは确実
脱炭素化に向けた投资家の动き
共有されなかった世界の排出削减目标
地球温暖化が唯一の政策课题ではない
米国大统领选の影响
英国の贰鲍离脱の影响
贰鲍の地球温暖化対策への影响
ナショナリズム、内向き志向と地球温暖化懐疑论
脱炭素化への道は単纯ではない
第8章 26%目标达成のカギは原子力
なぜ2013年が基準年として选ばれたのか
日本の约束草案は容易に达成できるのか
日本の约束草案の野心レベルは欧米に比して低いのか
原子力なしで、より野心的な目标が出せるのか
石炭火力を排除すべきなのか
26%目标をめぐる4つのシナリオ
26%目标は天から降ってきたものではない
2020年の目标通报时は要注意
第9章 长期戦略と长期削减目标
80%目标は世界全体の削减目标とパッケージ
2050年40~70%减の不确実性
见直すべきであった80%目标
80%削减のイメージと経済影响
地球温暖化対策を実施すれば経済成长につながるのか
80%目标は中期目标の议论にも影响
长期戦略イコール长期削减目标ではない
第10章 地球温暖化防止に取り组むならば原子力から目をそらすな
地球温暖化防止と原子力
地球温暖化交渉と原子力
地球温暖化防止に真剣ならば原子力の新増设が必要
原子力を取り巻くボトルネック
原子力発电所新増设に必要なのは政治的意思
原子力と世论
第11章 長期戦略の中核は革新的技术開発
エネルギー环境イノベーション戦略の策定
イノベーション环境の整备
选択と集中だけで十分か
既存技术への補助と革新的技术開発へのリソースバランス
国际连携の可能性
日本らしい长期戦略を
第12章 炭素価格论について考える
炭素価格とは何か
明示的炭素価格
暗示的炭素価格
炭素価格の导入状况
炭素価格に関する国际的议论
炭素価格に関するこれまでの国内议论
炭素価格议论は国际竞争力の问题と切り离せない
「日本には炭素価格がない」というのは误り
日本で排出量取引を导入すべきなのか
排出量取引は自主行动计画よりも优れているのか
电力排出量取引を导入すべきか
大型炭素税を导入すべきか
明示的炭素価格の経済効率性
现実的な政策パッケージを
结びにかえて
参考资料 パリ协定採択に関する颁翱笔决定及びパリ协定全文
関连情报
现実的なエネルギー政策の议论を (飞别产痴辞颈肠别 2020年6月4日)
地球温暖化問題に真剣に取り組むために ― 一人ひとりがリテラシーを高めることが必要 ― (『原子力文化』2019年11月号)
経産省官僚から、人を育てる大学人に。「プラグマティック」に地球の未来を考える。| UTOKYO VOICES 047 (東京大学ホームぺージ 2019年3月20日)
精神论抜きの地球温暖化対策――パリ协定とその后 (新電力ネット 2016年10月27日)
书评:
おすすめ書籍 精神论抜きの地球温暖化対策 パリ协定とその后 (日商Assist Biz 2016年12月1日)