英国十八世纪文学丛书3 <全6巻> ペストの记忆
1665年、ロンドンを悪性の疫病が袭った。本书によれば、およそ10万もの人々の命を夺うことになるこの疫病、ペストは、はじめのころ流行するかと思えば镇静化し、市民をやきもきさせていたが、いつの间にかその势力を拡大し、ついに毎週1万人近くが絶命するに至る。贵族や金持ちは早々に见切りをつけてロンドンの外に出るが、庶民が慌てはじめたころには、市外への感染拡大を恐れる行政当局によって移动が厳しく管理され、さらには感染者を出した家は、健常者も含めて外出さえも禁じられてしまう。
こうした非常事态における、悲惨で、不気味で、ときに滑稽なできごとの数々を、本书は克明に描き出す。着者はあの『ロビンソン?クルーソー』の作者ダニエル?デフォーなのだから、描写が详しく、真に迫っているのは当然である。デフォーは1660年生まれで、ペスト流行时には5歳だった。しかもこのとき、ロンドンの裕福な商人の家に生まれた彼は、贤明な亲に连れられてロンドン市外に疎开していたことも、研究によって明らかになっている。つまり本书は、着者の実体験を记したものではなく、当时の资料を参照し、事実を尊重しつつも、作家デフォーがその豊かな想像力を駆使して作り上げた、ルポルタージュ风フィクションなのだ。
本書が刊行されたのは1722年、いまからおよそ300年前になる。だが、ここに描かれる人びとの姿は、現代にも通じるような、またイギリスと日本という国の違いも超えた、根源的な生々しさを放っている。冒頭近く、ロンドンを我先に脱出する上流階級、あやしいペスト治療薬を売り歩く藪医者、奇妙な健康法を実践する人びと。生々しいのは生きている者だけではない。あえて矛盾した言い回しをするならば、死者たちもまた生々しく、不気味に描き出されている。夜、戸外に出された大量の死者たちが、「死の車 (デッド?カート)」なる馬車に積み上げられ、急ごしらえの大穴に次々に投げ込まれる場面の壮絶さ。こんなものは、現代のミステリー小説やドラマでも、なかなか見られるものではない。
本书には过去に复数の訳が出ているが、拙訳では现代の読者の心に诉えるような言い回しを用いるよう努め、かつ18世纪イギリスの土地?文化に関するさまざまな情报を注や地図で补うことで、しっかり内容を理解していただけるよう工夫した。その成果がどれほどのものか、私自身には判断できないが、この文章を読んで兴味を持たれたならば、ぜひ一度手に取って読んでいただきたい。ページから立ち上がる光景は、意外に身近なものであるかもしれない。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 武田 将明 / 2020)
本の目次
本文 (原作にはないが、小見出しをつけて読みやすくしている。ただし、小見出しの数が多いので省略)(ダニエル?デフォー著、武田将明訳)
訳注 (武田将明)
訳者解題 (武田将明)
関连情报
武田 将明「コロナウイルス時代にデフォー『ペストの记忆』が教えてくれること – 「事実を求めるための感性」の磨き方」 (講談社ホームぺージ 2020年5月1日)
関连书籍:
100分de名著 デフォー『ペストの记忆』 (NHKテキスト 2020年9月)
着者出演:
NHK 100分de名著 デフォー『ペストの记忆』
パンデミックにどう向き合うか? (狈贬碍第1回 2020年9月7日放送)
生命か、生计か? 究极の选択 (狈贬碍第2回 2020年9月14日放送)
管理社会 VS 市民の自由 (NHK第3回 2020年9月21日放送)
记録すること、记忆すること (狈贬碍第4回 2020年9月28日放送)
动画讲义:
10mTV 武田 将明「コロナ禍で注目されているデフォーの『ペストの记忆』とは」
『ロビンソン?クルーソー』とは何か(7)『ペストの记忆』とデフォーの文学 (テンミニッツTV)
関连记事:
中島隆博 (東京大学东洋文化研究所教授) 「新しい社会的想像力のために」 (日本医師会COVID-19有識者会議 2020年6月11日)
书评:
鸿巣友季子「コロナ祸で100万部ベストセラーが诞生!2020年に読むべき23册」 (现代ビジネス 2020年12月28日)
鴻巣友季子 (翻訳家、エッセイスト)「ロビンソン?クルーソーの作者による「ペストの记忆」 晦渋と思しき原文を現代の実感に置き換えた訳文もみごと」 (BookBang 2017年12月27日)
林 直樹 (尾道市立大学准教授) 評「都市ロンドンの生存闘争を鋭く浮かび上がらせた作品」 (週刊読書人 2017年12月8日)